午前10時。

前を妙齢のおばさま2人が歩いている。

「どこ行くの」

「シビックセンター※区役所 あなたは」

「ジム じっとしていちゃだめだからね」

2人の脇を同じくらいのおばさまが自転車で走り越す。

「あら いつもの」

「そう」

 

図書館に寄る。

じいさんが新聞を広げている。

何人も。

彼らは9時の開館とともにやってくる。毎日。

いつものホームレス風の人もいる。

臭いと汚れと中身不明の大きな荷物が彼ら共通の特徴。

いまは学生さんの利用が増える夏休み期間。

いつもよりは彼らの姿は少ない。

気を使っているのだろう。

 

コンビニのイートインを覗く。

じいさんばあさんで席はだいたい埋まっている。

 

わたしは喫茶店にいる。

20分くらい前までは空席がそこそこあったのだが、

いまはほぼ満席。

空いていたわたしの隣にはばあさんがきた。

よかった。

臭ったり、音を立てる確率が高いじいさんでなくて。

喫茶店も、半分以上はじいさんばあさんで埋まっている。

 

知人と一杯やった。

これからは雇用延長した人たちのモチベーションづくりの仕事に集中する。

そう言っていた。

報酬は半分になり、元部下に使われて、やる気が上がらない人たちだ。

どこの会社でも大きな課題になっているという。

そういう立場の熟年たちはこれからもっと増えてゆく。

 

働いていても働いていなくても、

女は居場所を見つけているが、

男は居場所を探している。

 

そう。熟年男が問題なのだ。

 

働いていない高齢者に向けて、

気軽に利用できる場がもっと要る。

公共施設、民間施設に。

区役所、公民館、図書館、ヘルスケア施設、コンビニ、スーパー、ショッピングセンタ…

リタイア後の選択肢をもっともっと増やす。

政治も補助しながら、

成功例、ビジネスモデルを作ってゆく必要がある。

 

わたしは一人っ子で鍵っ子の少年時代を過ごした。

まわりとのコミュニケーション不足が祟ったのか、

人と目を合わす、大きな音、高い声、たくさんの人とうちとけて話す、が苦手で、

こころの病のサイトでチェックすると「自閉症」の気があるようだ。

そのせいか、30歳で独立して仕事をしてきた。

組織にいることが苦痛だった。

そんないわば〝障害〟男が、

長いサラリーマン生活をリタイアして居場所を探している熟年男たちに、

何か言う資格はないだろう。

けど。一言だけ言う。

 

居場所になる場をつくる、リタイア後の選択肢を増やす、

それだけでは済まないだろう。

これからは、幼年時から、会社でも、

「得意」をつくってゆく学び体制をもっと充実させていく必要があるだろう。

外国語、職人技、演芸、音楽、絵、ダンス、演劇、スポーツ各種、何でもいい。

そうすれば、リタイアを、選択肢が豊富な状態で迎えられる。