JR水道橋駅の近く、本郷一丁目に、宝生流会館という能楽の施設がある。

よく近くを歩いているが、地味で、目立たない。

改装がはじまるようだが...。

元はすぐ近くの神田川のお堀を超えたところ猿楽町にあったらしい。

 

そもそも。日本人で、能楽を知っている人がどれほどいるか。

 

わたしの印象は、ちょっと怖い。

 

能楽とは、もとは猿楽と言い、能と狂言をあわせたものだ。

物真似芸や滑稽芸が組み合わされ物語になっている。

奈良時代、秦河勝という人がはじめて体系化し紹介している。

日本は多くがそうだが文化・文明は中国から伝わってきて、

それを応用・練磨して独特の日本固有のものに仕立ててきているが、

中国から伝わった散楽というものが原型のようだ。

そこには軽業、手品、物真似、曲芸、歌舞、音曲などのエンタテイメント全般が含まれていた。

つまり、いまや興隆を極めている「エンタメ」の世界のはじまりである。

民衆に密着したエンタメとして広まりつつも、

公家、寺社、武家が保護し、発展させたことで、格式張ったものへと変貌もしていった。

鎌倉時代から室町時代にかけて、とくに武家の庇護が厚く、武士のたしなみのひとつとされていく。

あの金閣寺を建てた室町幕府三代将軍足利義満が観阿弥・世阿弥の親子をとくに贔屓にし、

やがて大和猿楽四座ができてくる。観世座、宝生座、金剛座、金春座だ。

とくに世阿弥が1400年に著した「風姿花伝」は現代にも通じる演芸論として高く評価されている。

 

「能楽は世界で最も古い劇であり、舞踊と音楽と演劇が一体となった総合芸術」

欧米の人々は能楽をそう絶賛する。

とくに、あの、能面の使用、独特の動き、静止、に深い神秘性を感じるようだ。

 

まったくの私見だが、毎日のようにみている漫才、落語などの

あの、ぼけ、つっこみ、間、に能楽からのエッセンスはちゃんと息づいているように思う。

外国人のエンタメが届かない日本人の芸能の域として。