恵方の西南西に向かう。

神楽坂から大久保通りをゆく、

若松河田で南へ枝分かれする、

明治通りを超えると、そこは大久保コリアンタウン。

 

大久保コリアンタウンは、

新宿に稼ぎに来た韓国人が多く住んだことで、

大きな街を形成した。

 

外国人がいっぱい。

韓国人というより、南アジア、中南米出身と思われる人たち。

ほかの地域では目立つ中国系はそれほど多くない。

日本人もいるが、すくない。

 

バブルの頃からあった「韓国広場」というスーパーに立ち寄る。

大久保コリアンタウンの象徴のような店だ。

 

「韓国広場」にはいる。

まず、冷麺があり、真赤なパッケージのキムチ漬けが目立つ。

コチジャンなどの韓国みそが大きなスペースをとっている。

牛テール、鶏骨付きももなどの冷凍品の平ケースがドーンとある。

その前には、チャンジャなどのイカの塩辛が並び、

奥には、豚バラ肉の厚切りスライスがたくさん陳列されている。

最奥部には冷蔵大容量袋詰めのキムチコーナーがあり、

折り返してキンパやコチュジヤン漬け肉揚物などの惣菜の売場があり、

冷蔵のトッポギ売場が大きくとられている。

売場中央は加工食品や調味料で、

辛そうな袋めんとカップ麺が店内最大のスペースをとっている。

 

加工した肉と、加工食品で占められている。

生鮮品主体の日本のスーパーとは大きく違う。

どちらかというと業務スーパーが近い。

水あめと唐辛子で味付けされたものが多く、

「ファストフード」のスーパーともいえる。

南アジア、中南米の人たちに支持されそうだ。

事実、お客さんは、韓国系以外にそんな外国人が多い。

 

コチュジャンを買った、一番小さい210円のものを。

家に帰って、豚肉炒め、チャーハン、に入れた。

久々だ。旨かった。

 

韓国は豊かになった。

先進国になった、日本を追い越した、と彼らは言う。

日本は30年歩みを止めている。

でも、大久保のコリアンタウン、とくに「韓国広場」は、

発展途上のアジアの元気さ、いかがわしさを残している。

 

半世紀近く前。この近くの北新宿に3畳の部屋を借りていた。

ある日。銭湯の洗い場で、全身入れ墨のでっぷり太った男が絡んできた。

呂律がまわっていなかった。

さっさと体を洗い、湯につからず、脱衣場に退散した。

はやく逃げたほうがいい。番台のおじさんが言った。

見ると、全身入れ墨男も、ゆらゆらと揺れながらこちらへ来る。

逃げるように銭湯を出た。

ときどきこわい人たちに出会う地域だった。

このあたりに来ると思い出す。