街を歩いていると神様によく出会う。

天神さまとお稲荷さんがその代表だ。

本郷の家からだと、東に湯島天神、西に牛天神、がある。

天神さまには必ず牛がいる。

みんなその牛を撫でる。

わたしもよく撫でる。

 

ことしの恵方の西南西に牛天神がある。

春日通りを、本郷台地をくだって、小石川台地をのぼったところ、

中央大学理工学部の隣、にある。

飾りがなく、質素、静か、こじんまりとしている。

参拝者にあまり出会わない。

ここの牛は年季の入った石蔵。

正面の左右に、向かい合って一体づつ、伏している。

小石川台地の南の縁にあり、

むかしは南西方向に富士山がよく見えただろう。

 

東に湯島天神がある。

こちらは本郷台地の東の縁で、

むかしは東京湾、隅田川から筑波山まで見渡せただろう。

いつ来ても参拝者がたくさんいる。

ここの牛は銅像。以前は石像だったらしく新旧二体がある。

数えきれないほど撫でている。

 

天神様、正式には天満宮、は全国に1万2000社もある。

菅原道真を祀っている。

道真が亡くなった後、平安京で雷、大火、疫病などの天変地異が相次いだため祀られた。

道真は優れた学者であったことから天神は「学問の神様」ともされ、

多くの受験生が合格祈願に詣でている。

京都の北野天満宮、福岡の太宰府天満宮、山口の防府天満宮、

三代天神と言われている。

東京では、江戸三大天神がとくに有名。

湯島天満宮、平河天満宮、亀戸天神だ。

亀戸は江戸には入らないので代わりに上野の五條天神を挙げる場合もある。

 

なぜ牛がいるのか。

菅原道真が牛が好きで、

生まれたのも亡くなったのも丑年だったためらしい。

 

実在した人間で、これほど広く深く親しまれている神様は、

ほかにはいないのではないか。