年輩者と若い人との能力の差は、

人やコンピュータから得られた情報量の差ではなく、

五感の体験によって得られた情報量の差だ。

五感の体感の情報は、時代環境を超えて通用する。

だから、老人は、敬われるべきだ。

 

しかし。

隠退して街を徘徊するようになって、いちばん目につくのは、

その敬われるべき年輩者の実態だ。

男性老人の生態だ。

 

臭う。ひとりでいる男性老人はたいがい臭う。

コンピニのイートイン、マックの隅っこ、業務スーパーのレジ待ち、図書館の閲覧席、

夏は外ですれ違うだけで...。

 

汚い。袖、襟、前面。へたすると黒光りしている。

 

音をたてる。声が大きい。独り言を吐きつづける。

くちゃくちゃと咀嚼音がする。ズルズルと呑む。

スマホをミュートをかけずに観ている。

 

落ち着きがない。貧乏ゆすりをする。頻繁にトイレに行く。

うろうろ歩き回る。

 

窓口を占拠する。店員に聞き続ける。長話をする。

クレームを吐く。

 

譲らない(譲れない)。道を譲らない(譲れない)。

人通りが多くても道の真ん中を左右に揺れながら進む。

 

距離がとれない。

席がたくさん空いていても隣とか真正面に座る。

 

生きていく感覚が鈍っている。

自分のことばかりに気がいき、

自分よし、相手よし、社会よしの「三方よし」ができなくなっている。

そのことを自覚できなくなっている。

 

厚労省の年齢別人口構成の予測をみると、

65歳以上人口はすくなくともあと20年は最大のシェアを占め続ける。

 

3月で65歳になった。

また臭う季節がくる。

ぜったいにそうはならないぞ。

そう誓うのであった。