仕事を隠退して毎日東京のあちこちを徘徊しているのだが、

千鳥ヶ淵がとくに気に入っている。

いつも、九段の坂をのぼったところから入り、濠に沿って、半蔵門まで歩く。

桜の名所でもあり、その頃は大混雑するが、それ以外は、人通りが少ない。

落ち着く。安らぐ。煩わしい事々から解放される。

季節がよい時期は、ベンチに座って、本を読み、おにぎりをほうばる。

左手はずっと江戸城の濠だが、右手はインド大使館、戦没者墓地などがつづき、

やがて、大きな英国大使館を眺めることになる。

まさに「大英帝国」をあらわす宮殿のような古い建物に心を奪われる。

サムライの国に進化をせまった最初の「外圧」者として江戸城・皇居を睨んでいる。

 

大英帝国は、全世界の陸地と人口の4分の1を版図に収めた。

世界史上最大の領土面積を誇った帝国で、「太陽の沈まぬ帝国」と称された。

その帝国が極まったのは、第一次世界大戦のあと、1920年代だった。

その頃、その世界中のさまざまな植民地・民族の統治を研究する場所として、

ロンドンに王立国際問題研究所が設置され、

その建物名をとって別名「チャタムハウス(Chatham House)」と呼ばれた。

そこでの議論は、誰でも参加できて自由に発言できる。

ただし発言元を特定して記録に残さないことがルールとされた。

「チャタムハウスルール」という。

オープンに知を集め共有し、先入観・固定観念なく議論していかないと、

世界最大の版図を統治・維持することはできなかったからだ。

 

外圧と 異業種交流 でサバイバル

 

日本人は、「和」を最重視する世界一保守的な性質をもつため、

「革新」が苦手で、「カイゼン」を積み重ねていくことで変化・進化を実現していく。

しかし、身内、同業の者だけでやっているだけでは進化は起こせない。

なので時として大きな「外圧」が要る。

なので常に異業種が集まってワイガヤする場「チャタムハウス」環境に

敢えて自身を晒し続けておく必要がある。

生き残ってゆくためには。