吉池に魚のあらをみつくろったあとは、
湯島天神の横の「切通し坂」をのぼって我が家のある本郷に帰る。
ということで、ここで「坂の上の雲」シリーズ。
啄木も 夜中かよった 切通し
これは、
先日レポートしたばかりの、上野駅東北本線起点ホームにある
石川啄木の短歌、
「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」
の碑だ。
ふるさとを出て東京でがんばっている東北人の心情をみごとに表現している。
この上野駅から、湯島を経て、春日通りの切通し坂を本郷方面にのぼっていくと、
湯島天神の石垣にこんな記念碑に思わずたちどまってしまう。
「二晩おきに 夜の一時頃に 切り通しの 坂を上りしも 勤めなればかな」
石川啄木の短歌だ。
啄木は、この切通し坂を、夜中過ぎに通っていたのだ。
たしか、朝日新聞社の文字校正の仕事をしていたはずだ。
そして、この坂を上り切って、現在の本郷三丁目の交差点を越えて、すこし行ったところに、
現在も新井理髪店として営業している「喜之床」という床屋があるが、
啄木は、その二階に下宿していた。
これだ。
やはり「坂」には物語がある。
夜中の切通し坂を啄木はどんな思いでのぼっていたのだろう。




