台風7号があした紀伊半島に上陸する。

2023年8月14日の空は、厚い雲と、強い雨と、痛い陽が同居する、へんな空だ。

きょうは湯島の坂の上の雲を仰ぎ歩いた。ついでに神田まで。

日課の、参拝を兼ねて。

 

男坂 天神、明神 登り詰め

 

この脂 お化け階段 しぼりだす

 

湯島天神からだ。

これは夫婦坂。湯島天神の北側の春日通りからの登りだ。

以前も触れたが、くらしぶりとか色気を感じるいい名だ。

門の向こうの坂の上の雲は、浮かぶ、ではなく、垂れ込める、だ。仕方ない。

これは女坂。

ゆるやかな階段、途上に梅園の配置、ひらがなの石碑文字、

やさし気で、ゆったりとしいて、まさに女らしい坂と思う。

これは男坂。

わたしはここを何度のぼったことだろう。

30年前、湯島天神の真ん前に事務所を借りていたころのこと。

まえにも書いたか...。

正式には天神石坂というらしいが...。

坂じゃなく階段じゃないか。

そう思うかもしれないが、実際、本郷台地の坂の多くは坂ではなく階段なのだ。

 

本郷台地のいちばん東の縁である湯島天神と神田明神の間は坂がたくさんある。

そのなかの、実盛坂(さねもりざか)にたちどまる。

ちなみに、この「本郷の坂の上の雲」シリーズは、

大通りの坂、新とか中とかが冠された普通名詞の坂は省き、小さな固有名詞の坂をとりあげていく。

これが実盛坂。最近、新しくなった。

湯島に生まれたカミさんは「お化け階段」と呼んでいる。

以前は、ふるく、暗かったのだ。

湯島天神の男坂より急でのぼるときつい。

20年前、この坂の上にマンションを借りていて、

そこにカミさんのおかあさん(義母)が、何度も訪ねてきてくれた。

そのふくよかなからだをしぼりながら、この急階段をのぼって。

きっと、トレーニングのつもりだったんだろう。

いまでは、のぼったところにスーパーのサミットが出店していて、

ありがたいことに下からエレベーターで登れるようにしてくれた。

近年このあたりにすごく増えたマンション族の人たちは大助かりだろう。

なぜ「実盛坂」というのか...。

ネットで調べると、平安時代、源義仲とたたかって首をとられた斎藤実盛の住居が

この坂の下にあったためのようだ。

そこから派生したのか、この坂の下には首洗いの井戸という伝説もある。

それもあってか、地元の人は「お化け階段」と呼んだのかもしれない。

 

このまま南に移動し、蔵前通りを渡ると、湯島ではなく神田の領域になり、

神田明神の男坂が出てくる。これだ。急というより、長い。

この坂沿いに(写真の左側)、以前、「開化楼」という大きな料亭があり、

飲食だけでなく、イベント会場としても有名だったようだ。ちなみに、浅草の「開花楼」とは違う。

ついでに...。

この男坂をのぼって、神田明神の表参道に出ると、「天野屋」という甘酒屋がある。

ここも、知る人ぞ知る名店だ。いまでも「糀室」がある。

神田明神の参拝客の多くがここに立ち寄る。

 

曇天の合間に、肌を焼く強い陽が射し、と思ったら、ザッと大粒の雨...

きょうはここらあたりで切り上げて、帰ろう。