この「たちどまるけーすけ」日記は、自分の住む本郷を起点として、まずは、東と南の街にゆき、たちどまってきた。

これからも、もうすこし南東を行き、どこかで転じて、隅田川に沿って北上していくつもりでいる。

ただ、今回は、逆の北西を歩く。

本郷からの北西は住宅地がつづくので、これまでの職域の神田、日本橋とは、観点が変わる。

たまにはいいだろう。

 

本郷台地を北西に降りて、千川通りをゆく。

 

千川で 赤ひげ印刷 よみがえる

 

千川通りをゆくと、そのすぐ北側、本郷台地の斜面に、こんもりした森が見える。小石川植物園だ。

山本周五郎の「赤ひげ診療譚」、黒澤明の「赤ひげ」の舞台だ。

わたしは、黒澤映画は、10代20代、つまり1970年代から80年代によくみたが、

当時みても、20年前の古い映画だったのに、そのリアルさ、迫力に圧倒されたおぼえがある。

「赤ひげ」の患者を診療するシーン、「椿三十郎」のあの鮮血が噴き出るラスト、などなどだ。

今現在、20年前の映画をみて圧倒されることはまったくないことを考えると、黒澤明のすごさがよくわかる。

 

千川通りと播磨坂の交差点に共同印刷の本社がある。

かつては、大日本印刷、凸版印刷とならぶ三大印刷会社だった。

この共同印刷本社のまわり、とくに千川通りから北側の小石川植物園に沿っては、小さな印刷加工会社がたくさん集まっている。

現在の市ヶ谷の大日本印刷、飯田橋の凸版印刷のまわりには、とくに印刷加工会社は多くはないのに。

大日本印刷や凸版印刷は、時代にあわせて、紙というより情報を扱う会社に変化し、共同印刷はまだ旧い紙媒体の比率が高いということだろうか。

わたしは、20代のころ、印刷会社で働いていた。

こういう、紙を切ったり、製本したりする小さな印刷加工所をみると、若いころ、毎日毎日夜遅くまでしゃにむに働いていたころ、の記憶が蘇ってくる。

 

この共同印刷本社の前には、よく桜の名所のひとつに数えられる「播磨坂」がある。

まわりは、高級住宅街としても知られている。