本郷台地をおりて花街湯島に立ち寄ったが、今回は、そのまま東へすすんで、日本一外国人がいる街と思われる「アメ横」にたちどまる。アメ横は、JR上野駅の南、御徒町駅の北、の山手線沿いの商店街だ。みんな知っている。
この狭い地域に400店あるそうだ。うち1割の店は外国人の経営だそうだ。街で働く人たちをみても、街ゆく人たちをみても、コロナ禍のときでも、外国人がいっぱいだ。たぶん、日本一外国人がいる街なのではないだろうか。
だから、ここに来ると、たちどまることばかりだ。アメ横の醸し出す独特の様子、日本のほかのどの地でも感じることができない、国際色に溢れ、いかがわしさもプンプン匂う、そんな空気に圧倒されてしまう。
戦後、焼野原になったこの地に、戦地帰り人たちがたくさん露店を開いたそうだ。甘いものが貴重な時代、甘いアメやチョコなどの菓子を売る店や、アメリカ軍払下げの品々を売る店が多くあったこと、などで「アメ屋横丁」、「アメ横」の名前がついたと言われている。最初の頃は、戦地帰りの人たちや、大陸に生まれた異国の人たちが、たくさん集まったせいか、悪質業者、愚連隊、ヤクザもたくさんいて、トラブルが絶えなかったようで、警察の要請で、地元の有力者が、現在は新しくなっている「アメ横センター」をアメ横の中心部に開設し、そこには信用できる業者さんだけを入居させたことがキッカケで、街は浄化されていったようだ。
アメ横に来た人は、ぜひ、このアメ横センターの地階食品売場に足を踏み入れてほしい。アジアの「生々しい」食が揃っている。
内臓が主体の肉屋、アジアの調味料・スパイスの店、などがならび、嗅ぎなれていない臭いと、言語が、飛び交っている。
実際、アメ横で、たちどまるところを挙げていったらきりがない。
なので、わたしが、とくにたちどまるところをいくつか紹介しておこう。
まず、志村商店。チョコ、とくに大きな輸入チョコの、たたき売りの店だ。いつも人だかりになっている。
それから、二木の菓子。わたしのような60代には、ラジオでの林家こん平の「二木二木二木二木二木の菓子、アメ横、菓子、現金問屋、二木の菓子」の宣伝文句が頭にこびりついている。いまでも、二木の菓子は、アメ横の主のように、たくさんの人たちをたちどまらせている。この店、菓子の店といっても、品揃えの中心は、スーパーでは売っていない大袋商品、地方産商品、輸入菓子などだ。それがいい。二木の菓子に来ないと出会えない価値ばかりということだから。
それから、中田商店。ミリタリールック、軍装品の店だ。わたしは、1970年代、東京に出てきて最初のころ、よくここに通った。当時、流行っていたというこもあるが、何よりも金のない貧乏学生にとって、安くて、もちのよいミリタリーファッションはぴったりだった。アメ横の店は、1970年代の頃と変わっていない店ばかりなのだが、ここは、当時とまったく変わっていない。懐かしい。そういえば、近年も、ここで軍装セーターを一着購入し、ときどき着ている。
何度も言うが、アメ横は「たちどまる」の宝庫だ。
今回は、その紹介のはじまりにしかすぎない。これからも、ときどき、この街の「たちどまる」をレポートしていく。