本郷湯島の「顔」はまだあります。「文人の街」です。
本郷を歩くとすぐにわかると思いますが、ここには誰が住んでいた、といった碑文をたくさん見かけるはずです。そして、そこにたちどまって、読んでしまうはずです。そこには、夏目漱石、森鴎外、樋口一葉、石川啄木などなど、明治から昭和にかけて活躍したたくさんの文人たちの跡が記されています。東京で、これだけたくさんの物語を擁した街はちょっとないかもしれません。この膨大な数の「碑文価値メツセージ」が、「たちどまる本郷」をつくりあげています。
文人たちがいたところの多くは当時のままの木造家屋として残されていて、それも本郷の魅力なっています。
古い木造家屋といえば、本郷は旅館が多かったところで、いまではそのほとんどが壊されマンションなどに変わってしまいましたが、「鳳明館」という旅館は、そのむかしの本郷の様子をしのばせています。
文人ではありませんが、江戸時代末期に活躍し、西郷隆盛率いる官軍と交渉した勝海舟が愛した和菓子屋「壺屋」も古い木造家のまま残っています。徳川の治世がおわるとき、江戸の商工人たちの多くが、その店をたたんだそうですが、壺屋は、勝海舟の「閉めないでくれ」との願いを受け入れ、現在まで続いているようです。とくにそのきんつばは、東京でもっと古いきんつば商品と言われていておいしいです。