山をはり、好運に恵まれ、大学に合格すると、

大学の沿線である京王線の芦花公園に住んだ。

 

久しぶりに行って見た。

 

駅を降りると、甲州街道に向かって細く、短い商店街を進む。

変わっていない。45年前と。

林立するビル群に隠れて見えなくなってしまった北新宿とは大違いだ。

ただ駅前を過ぎると当時は無かった低層のマンション群が並んでいる。

そのマンション群を抜ける。

景色が変わっても、むかしの感覚で、どこを曲がればいいかわかる。

戸建ての脇、道とは言えない路地に自然と誘われる。

目前に畑が広がった。

45年前と同じだ。

違うのは野菜の自販機がおいてあるぐらい。

上には高圧電線が通る。

畑を抜けるとクルマが通る道に出る。

道路沿いに北へ歩く。

前面に二又に分かれる道、そこには地蔵一体、その向こうはまた畑。

左手奥には地主とおぼしき大きな農家。

むかしのまんまだ。

その大きな農家の前のアパート。それがきょうの目的地だ。

45年前から改築されている。

 

農地は簡単には売れない。

日本では、これ以上の食料自給率低下を防ぐため、

市街化区域でないと行政の許可が要る。

芦花公園のこのあたりは45年前と同じ農地が残っている。

❝売れない土地❞のひとつなのだろう。

 

それにしても、「直売所」と称してたくさんの野菜自販機が設置されているが、

価格は決して安くない。

自販機におさまっている野菜は、

みたところスーパーの鮮度感のある野菜より余りものの観が否めない。

まちの激安八百屋のほうがずっと安い。

誰が買うのだろうか?

土地にかかる税金の埋め合わせになっているのだろうか。