毒々しい紫色の苔の花

幼かったわたしは綺麗だと想った 

素直に綺麗だと想った

 

それを片両手で摘んで父さんに見せた

ぼんやりだけど覚えてる

父さんは笑顔でわたしを迎えてくれた

綺麗だねと言ってくれた

それはとてもあたたかくて しあわせだった

 

いつからだろう

自分を変えたいとずっと思ってきた

人ごみに押されてタイムカードを押して

夕暮れのホームからひとりで帰る

電気がついていない部屋のドアの鍵をまわして

ごはんを食べる テレビを観る そしてまた同じ明日

眠れない 眠れなくて いやになって

ふと このまま死んでもいいかなと想った

 

突然に父さんの笑顔を思い出した

わたしは自由だった 素直だった 笑顔だった

明日もきっと変わらない でも何かを信じてみようか

 

父さん 今夜は 泣いてもいいかな