昔に書いた作品ですが、ふときまぐれで再掲載したくなったので、

ちょこっとだけ加筆訂正をして掲載させていただきます。

 

海猫

 

鈍色の海の波間に海猫の群れ

 

飢えの悲しささえ分からないまま

 

灰色の群れとなる

 

遠くの海見つめる君の瞳

 

左手の薬指の指輪が

 

もう会えないことを無言で語る

 

瞳が向き合うことは

 

今はない

 

岬に落ちる最後の夕日

 

二人だけが染められる

 

幾度その瞳の輝きに心奪われたろうか

 

差し出す右手を

 

そっと握り締め

 

やわらかな刹那を二人過ごした

 

ここまできてしまった

 

戻らない覚悟は

 

遠くの海猫の声に凍らされ

 

繋ぐ掌はほどかれる

 

このまま落ちてしまいたいけれど

 

海猫の群れ遠ざかり

 

君の瞳 丘を見つめてる

 

今はそれだけ

 

そう それだけ