12月にがんの告知を受けて、1月、3月と2回手術入院などをしました。

普段はノー天気な僕もさすがにいろいろ考えました。

「肝臓がん・ステージ2」。

先生が優秀で発見が早かったので大事に至りませんでした。

一応腫瘍は除去。

ひとまずは安心ですが、予断は許されない状況ではあります。

5年生存率40%。なかなか悩ましいデータ。

でも、感謝を忘れないで日々を楽しく、丁寧に生きるコトが一番大切かなぁ、

と思う今日この頃です。(随分真面目になりました・笑)

エッセイを書きました。

 

 

「川土手に小さな花が咲いてる」

 

よく近所の川土手に行く。

土手の上が散歩道になっていて、川に降りるコンクリートの小さな階段がある。

そこに座って流れる水面をぼーっと眺めるのが好きだ。

在宅ワークで広告制作の仕事をしているので、一日中パソコンと格闘する日もある。

誰とも話しをしない時もある。

煮詰るので、そんな時には川土手に行く。

 

「やっぱり、がんですね」

12月のある日R病院のM先生に告げられた。

深刻な顔とかで全然なく、ふつーに。

「えぅ、そうですか、やっぱり」

「はい、間違えなく肝臓がん」

「ですか…」

先日疑いがあるとのことで、MRIで精密検査をした結果だ。

 

よくがんの告知を受けると頭が真っ白になる、というが、僕は驚きはしたが

わりと平気だった。

肝硬変、僕の持病。

脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝臓がん。

これが黄金ルート。

絵にかいたようにそうなった。

いつかはがんになるのは覚悟してた。

でも、でも、わかっちゃいたけれど、キツイ。

頭でわかっているのと、実際なるのとは、女の子にふられるのと同じで、

ショックは大きい。

「ステージ2、幸い発見が早かったんで、どってことないよぉ」

先生は明るく言う。

藁にすがる思いで現状を尋ねる。

「腫瘍が2つ、1,5センチと1センチ、まだ子供」

「そうですか」

「うん、大丈夫」

「どんな風に大丈夫なのですか?」

「全部きれーに取れる」

「へー」

「おなか切る?」

「えっ」

「その方が確実だよ」

「ちょ、ちょと待ってください、切らなきゃ駄目ですか?」

「切りたくない?」

「そりゃ…」

「だよねぇ」

何だかこの先生やたら明るいのだ。

 

「切らなくてもいいんですか?」

「うん、それでも手術出来る」

「じゃ、ぜひ」

―早く言ってよ。

「わかった、じゃ説明しますね」

先生は詳細を教えてくれた。

抗がん剤も放射線も使わなくていいとのことで、ひとまずほっとして、

診察室を後にした。

何だか頭に霧がかかっているようで、ふわふわしてた。

 

家に帰って緊張感がとけて我に帰った時、悪寒がした。

ようやく事態の深刻さがわかってきはじめた。

先生が明るいので、ペースをもっていかれたが、ステージ2。

ネットで調べた。

なんと5年生存率40%。

えっ、40%の確率で死ぬ。

あせっていろいろなサイトを調べたが全部答えは一緒。

失神しそうになった。

―そうか、こうしてがんの告知を受けた患者は死ぬということに直面するのだな。

こりゃきつい。

 

 同じ日に事務所がつぶれかねない大きな仕事のトラブルに見舞われた。

おお、神よ。

この12年でスーパー最悪の一日だった。

 

 それから日を追うごとにブルーになりついにうつになる。

ある日、例の川土手に行った。

階段でひざをかかえて水面をながめる。

いつもと同じながれ。

もし僕が死んでも、この川は変わらずにこうして流れているんだろなぁ。

そう考えたら涙が出そうになった。

その時ふと土手の草むらに目をやった。

薄紫の小さな花たちが咲いて、風に揺れてる。

可愛い…。

素直にそう思った。

そう言えば去年来た時も同じ花が咲いていた。

前の花はもちろん枯れただろう。

でも、同じ花が咲いている。

いのちがつがってる…。

鼻の奥がツンとなった。

 

手術の入院。

先生が病室に来た。

「いらっしゃ~い」

さすがにそこまでのノリではなかったが、何だかニコニコしてる。

救われた。

まっ、大丈夫か、ひとまずは。

 

5年後はわからないけど…。

退院したらまたあの花を観に行こう。

 

 

 

PS:夏前にエッセイ集「がんになった、どう生きる?」を電子書籍で出版します。

目的は、がんになった方、そのそばにいる方、そのお話を知りたい方、に

喜んでいただける内容にしたいと思っています。

そしてもう一つの大きな目的は「がんの早期発見の促進」。

具体的には「がん検診の呼びかけ・PR」をこの一連の活動を通じて行います。

これは、年2回くらい出版して、ライフワークで僕が動けなくなるまで

ボランティアで続けるつもりです。

エッセイを書いて寄稿いただける方、ご関心がある方、などなど

お気軽にコンタクトをいただければ幸いです。

「エッセイ書いてみたい気持ちはあるけど、自信がない…」をいう方が

大勢いらっしゃいます。

文化教室で「詩の書き方講座」の講師を務めさせていただいていますので、

その応用で「初心者向けエッセイの書き方教室」を開講しています(無料)。

今は対面で行っていますが、ちかいうちにZOOMでも開講したいと思い

準備をしています。

またご案内しますね。

 

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