追悼、前田憲男さん | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

 前田憲男さんが亡くなられた。

 訃報に接して、これまで聴いた数々のコンサートの思い出が甦ってきた。

 あくまでジャズに軸足を置きつつも、歌謡曲からクラシックまで、実に幅広いジャンルで活躍した才人だった。たぶん、前田さんにとっては音楽のジャンルなど、どうでもいいことだったのだろう。

 渋谷にオーチャードホールが開館して間もない頃、前田さんは「TOPS」という名のコンサートを始めた。もちろん、ケーキ屋の名前ではない。「東急・東フィル・ポップス・コンサート」の略だった。東京フィルハーモニー交響楽団と前田さんの仲間たちをメインに、毎回異なるゲスト奏者を招いて開催された、シンフォニー・ポップスの公演だった。時には、入場者に簡単な楽器を配り、一緒に演奏することもあり、実に楽しいコンサートだった。

 毎年7月に2公演が開催されたTOPSは10年続いたが、欠かさず足を運んで皆勤賞だ。それどころか2公演聴いた年も多かったので、全20公演中、たぶん16回聴いている。今、このような企画が実現出来る音楽家がいないのが寂しい。作曲、編曲、演奏、そして指揮とマルチな才能をもった前田さんだから出来たコンサートだった。

 浜離宮朝日ホールで聴いた公演も数多い。なかでも思い出深いのが2009年8月の公演で、ゲストにジャズ・ピアニストの巨人、ハンク・ジョーンズを迎えた。当時、ジョーンズは何と90歳。共演のトークで「私もこの歳を超えられるように頑張らねば…」といったようなことを、あの独特の口調で話していたが、残念ながら叶わなかった。ちなみに、今年も来月にクリスマス公演が予定されていた。

 享年83歳。心よりご冥福をお祈り申し上げます。