個性派ヴァイオリニスト、チョン・キョンファが、弟ミョンフンの指揮で東京フィルと共演。この公演のチラシを見た時、おっ!これは面白そう…とチケットを買ったのだが、同じことを考える人は多いとみえて、チケットはなかなかの争奪戦。何とか、同行者の分も合わせて2枚を確保した。
我が強く、マイペースで尖がった弾き方をしていたチョン・キョンファの芸風がガラリと変わったのが、出産後に復帰した時のこと。何だか、ずいぶんと丸くなった気がしたのがずいぶん前のことだが、さらに久しぶりとなる今回は如何に。
10月5日、サントリーホールでのプログラムは、ブラームスの“ヴァイオリン協奏曲”、そしてサン=サーンスの“交響曲第3番「オルガン付」”。
ブラームスは、割と小さめの編成。例によって、ミョンフンの指揮は、女王様に仕えるがごとく、サポートに徹したもの。しかし、キョンファのヴァイオリンは冴えない。かつての奔放さは影を潜めたが、それに代わる魅力がないのだ。終始、遅めのテンポなので、オケの木管奏者の精度も気になってくる。結局、最後までいいところなしの不完全燃焼に終わった。
代わって、サン=サーンスは、見違えるような快演だった。ミョンフンの指揮は、この人らしく颯爽としたもの。そう言えば、この人はフランスのオケとのキャリアもあり、フランス物は得意なことを思い出した。編成を大きくした東フィルも一体となって大健闘。
サントリーホールで聴くコンサートは、大抵バックステージ席に陣取るのだが、この日は安いランクがとれず、久しぶりの正面席。いつもは背後から襲ってくるパイプオルガンを正面側で聴いたのだが、空気振動が迫力不足で苦笑いしてしまった。
アンコールは、後半の勢いそのままに“カルメン~序曲”。