ヤデル・ビニャミーニ指揮 読売日本交響楽団 | たっちゃんの活動写真&西洋古典音楽切り抜き帳

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「映画館で」「自分のカネを払って」観る映画と「コンサートホールで聴いた」クラシック音楽会の、独断と偏見によるコメントを公開。

 ずいぶんと久しぶりの読売日本交響楽団。と言っても、読響が目的ではなく、ソリストで出演するアルベナ・ダナイローヴァが聴きたかったのだ。

 5月15日、この季節にしては蒸し暑かった夜、サントリーホールへ向かった。読響にしては空席があったし、あい変わらず鑑賞マナーに欠ける客も目立ったので、観客動員のために新聞購読者に招待券をバラまいているのか…。

 指揮は、初聴となるヤデル・ビニャミーニ。プログラムは、ロッシーニの“「ウィリアム・テル」~序曲”、グラズノフの“ヴァイオリン協奏曲”、そしてチャイコフスキーの“交響曲第6番「悲愴」”というもの。

 このオケらしい、ぶ厚いチェロの合奏で始まった“ウィリアム・テル”。しかし、すぐにダメだこりゃ…と失望。イタリア出身の若手指揮者は、アンサンブルの乱れは無視して、ひたすら力技で押さえ込みながら驀進するタイプ。後で、プロフィールをみたら、リッカルド・シャイーに見い出されたと書かれていて納得。なるほど、好きになれないタイプの指揮者の系列に位置しているのだ。

 グラズノフを弾いたダナイローヴァ、ウィーン・フィルの看板を背負って早や10年。コンマス就任直後の室内楽公演を聴いて以来だが、だいぶ音のイメージが違った。攻めの姿勢はあい変わらずだが、以前の相当に尖がっていた印象に比べて、カドがとれて丸くなった感じ。名門オケを率いて弾いてきたことや、母親になったことが影響しているのか。いずれにせよ、貫録あるさすがの美音を堪能したが、終始オケのトーンと違い過ぎるのが気になった。

 後半は、それこそ悲壮感の欠けらもないチャイコフスキー。ただただ強引に押しまくるだけの猪突猛進にゲンナリ。全く趣味じゃない演奏だった。

 というわけで、目的だったダナイローヴァのヴァイオリンだけが収穫のコンサートだった。