ニューヨーク・フィルに続いては、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団を聴いた。
さほど知名度はないが、毎回期待以上の演奏を楽しめる大好きなオーケストラの一つで、来日の都度、欠かさず足を運んでいる。今回の東京公演は、サントリーホールで二回。まずは、3月15日の初日を。
プログラムは、グリンカの“ルスランとリュドミラ~序曲”、ハチャトゥリアンの“フルート協奏曲”、そしてチャイコフスキーの“白鳥の湖~組曲”という、オール・ロシア物。
“ルスラン…”が始まった途端、前日に聴いたばかりのニューヨーク・フィルとのあまりの違いに驚かされる。実に魅力的な音色だ。フランスのオケならではのカラフルな色彩感を持ちつつも、パリのオケとは違う、どこか郷愁を誘う音色に引き込まれる。妙なたとえで恐縮だが、料理で言えば、ハンバーガーとポテトのメガ盛りと、グルメなフランス料理との違いぐらいある感じ。
ハチャトゥリアンのソリストは、フルートの帝王、エマニュエル・パユ。ベルリン・フィルの来日公演や単独リサイタルではずいぶん聴いているが、フランスのオケとは初めて。これはもう、神業的な演奏に、ただただ聴き惚れてしまった。
後半のチャイコフスキーがまた絶品だった。歌心とか絵心に満ちていて、音で描いた絵画を思わせる。随所で感じる、フランスのオケならではの“個”の突出もいい。
この作曲家の魅力を最大限に引き出して聴かせる、ソヒエフの手腕はお見事。聴いているうちに、誰かの演奏と似ているなぁ…と考えていたら、フェドセーエフの指揮姿が浮かんできた。テンポ設定こそずいぶんと異なるが、旋律の歌わせ方など、よく似ていると思う。ソヒエフ指揮のチャイコフスキー響を聴いてみたいものだ。
アンコールは“カルメン~序曲”。実に楽しい時間を過ごせた、大満足のコンサートだったが、お客の入りがイマイチだったのが何とももったいなかった。