山形から東京に戻った私たちは、そのままきびすを返して空路北海道へ
なんと新幹線が1時間半も遅れ、羽田で乗るはずだった飛行機に間に合わず、ひと便遅れて搭乗・・・なんていうアクシデントもありましたが、なんとかその日のうちに札幌市内のホテルに到着しました
翌日からの北海道での行動は、札幌に住むソムリエの出蔵さんにすべてお任せ
レンタカーの手配からタイムスケジュールまでばっちり設定していただいたので、
初の北海道も大船に乗った気分です
とうわけで、翌朝も早くから車でお迎えに来ていただき、真っ先に向かったのは、もちろん余市。
残念ながらこの日は朝から小雨混じりの天気でしたが、
ここに来なくては北海道に来た意味がありません!
驚くほど山の中で、ポツンと姿を現すドメーヌ・タカヒコ
醸造所を増設中ということで、作業着姿の方や車も何台か停まっていましたが、
そうでなければ本当に静かで人気のない場所に違いない。
車から降りると、懐かしい貴彦さんが笑顔でお出迎えしてくれました
雨が止まなかったので、まずはシェの中でのテイスティングから。
小さな醸造所の片隅に並べられた樽。
施設は本当にシンプルでこじんまりとしています。
その奥でまだ出荷を待つピノ・ノワールを、貴彦さんが樽から取り出して注いでくれました。
ワインに顔に近づけた瞬間、「ああこれだ!」と目の前にハートが浮かんでしまう個性的な香り
悪天候に落ち込んだ気持ちも吹き飛んでしまう、魅惑の香りです。
この香りと味わいに酔いながら、貴彦さんの話をゆっくり伺うことができました。
メーカーズディナーの時も思ったけれど、貴彦さんの考えとか理想とか目指しているものとか、
どれもこれも本当にグラースのコンセプトに近いんですよね~。
シェフなんか、今にも貴彦さんの手を握り締めるんじゃないかと思うぐらいの共感ぶり。
「こんなに同じこと考えてる人に会ったことない!」と
毎回、雑誌の取材などで「どれか一本お料理に合うワインを…」といわれると、ついつい貴彦さんのワインを差し出してしまうのですが、その理由は味わいだけじゃないんだと改めて実感しました。
シェフの料理と貴彦さんのワインは、エスプリが近いんですね。ものすごく。
ほんの少しの晴れ間を見計らって、いよいよ噂の自社畑へ!
なだらかな丘に整然と並んだ葡萄の樹、適度に生い茂った下草。緑、緑、緑・・・。
まさに、息をのむような美しさです
なんなんでしょうか。なんというか、畑にオーラがあるんですよ。
自然でありながら、雑然とせず美しい。思わず吸いこまれていきそうな空間です。
ここで育てられたブドウでワインを作ったら、いったいどんなことになっちゃうの?!
ついさっき醸造所の中で嗅いだ香りを思い出しながら、期待で胸がいっぱいになりました。
「できれば、自分の子供にこの畑を継いでもらいたい。そのためには、若い人たちが働きたいと思うような畑を作っておかなくてはいけない。」
「今、自分は新しい農業をやって周りから変わり者扱いされているけど、自分が成功して仲間を広げて、もっと北海道の農業やワイン産業を活性化させていかなくてはいけない。」
「自分がこけたら、子供たちの世代は今よりもっと苦労をする。だから、自分は失敗するわけにいかない。」
畑を見渡す丘に椅子を並べながら貴彦さんが語る未来は、
子供への愛情と未来への責任感に満ちていました。
子供の誕生は、貴彦さんのワイン造りに計り知れない影響を及ぼしたに違いありません。
強く共感すると同時に、忘れかけていた大切なことも思い出させてくれた、本当に本当に貴重な時間でした。
雨が降り出してしまったので残念ながら早々にお開きとなりましたが、
もっともっと、できれば一日中でも、貴彦さんの話を聞いていたかったです。
そのあとは中井さんの畑を見せてもらいに行きましたが、
見晴らしがいいという高台の畑も、どんよりした雨雲で視界は悪く、本当に残念
絶対にもう一度、天気のいい日に再訪しなくては!
ここに来るためだけに、またすぐにでも北海道にやって来たい ―
本気でそう思える、唯一無二の存在感。
貴彦さん、お忙しいところ本当にどうもありがとうございました!!
♪♪その⑦に続く♪♪