塊はまず第三者としての客観的な情報を得るべく、
新聞を読み漁った。

驚いた事にバス事故は、事故翌日の新聞に
大きな写真付きの一面で取り上げられていた。

その写真は崖の下のバスを映したものだったのだが
事故当事者である私ですら、良く分からなかった。
それ位、バスは大きな衝撃を受け見事に大破していた。

大きな見出しに続いて、記事はその時点で分かり得る
事故の速報を伝えていた。

『午後10時30分、大理市山岳部に於いてバスの落下事故が発生。
乗客は19名、全乗客の容態は不明。
数名の外国人旅行客が乗車していた模様。』

これが翌日の新聞で分かり得た事。


更にその翌日、二日後、三日後と読み進めていく内に
事故の詳細が明らかになる。

『西双版納行きのバスは大理市山岳部を時速70kmで走行中、
ドライバーがハンドル操作を誤って130m下に落下。
乗客19名の内13名が死亡。3名が意識不明の重体。
2名が重症。1名が軽症。』


心臓の鼓動が早く大きくなる。
バスは時速70kmであの細い山道を走行し、
130mも下の崖の中腹に落下したのだ。



『13名の死者』


手が震えている。

あの崖を登ったその手が震えている。



『心』


心が動かない。動けない。
どうして良いのか分からない。
ゴクリと唾を飲み込む音が体の隅々に響く。
口の中がカラカラに乾いていた。


塊が新聞を冷ややかな目で見つめながらこうつぶやく。


『ツライ?』

『カナシイ?』

『コワイ?』


分からない。

ただ、私はそれを認めたくなかった。


続く。