名バイプレイヤー岸田森演じる坂田健の隠喩 | 趣味のブログ(空想特撮シリーズ,マラソン,トレーニング,中高年の健康管理など)

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趣味の特撮作品の特撮シーンを中心に思いつくまま気の向くままに書いています。サブ3.5を目標にマラソンのトレーニングを継続中。

昨年,テレビ東京系の「バイプレイヤーズ」というドラマがありました。6人の名脇役(主役級の方も結構いましたが)の俳優さんが実名そのままの役でドラマを演じるという一風変わったドラマであり,放映・撮影中,大杉漣さんが急逝されたことで話題にもなりました。

良いドラマというのは名脇役に支えられているとも言えますが,「帰ってきたウルトラマン」では坂田健役の岸田森氏の存在が大きいです。

 

岸田森氏の演じた坂田健は自動車修理工場の修理工であり元レーサー,レース中に事故に巻き込まれいつも杖をついて片足をひきづっています。

妹のアキ,弟の次郎とともに郷にとっては家族のような存在。

普段は冷静沈着ですが時に熱くなることもあり,MATに入って苦労を重ねる郷隊員に助言を与えたり,叱責したりする,まさに兄貴分。

一介の修理工にしては博学で知性に満ち,会話の端々から知的な臭いが漂います。

 

たとえば,第5話「二大怪獣 東京を襲撃」において,謹慎を命ぜられた郷隊員に対しては、子供の頃,学校の同級生の物を盗んだ疑いをかけられた時、誰がなんと言おうと真実がわかるまで我慢したという話をして励まします。

第19話「宇宙から来た透明大怪獣」でも,弱音を吐く郷隊員に対して,「レーサーがレース中に考えていることは「勝利」の一字だけ。もし「負け」の字を思い浮かべたら、その途端にハンドルは岩のように固くなり、コーナーでスピンしてしまう。だからレーサーはゴールまで勝利を信じて走り続けなければならない。」と言ってレーサー時代を思い起こし熱く語っていました。

このあたりは割合,直接的な言い方でしたが,間接的というか比喩的な表現が秀逸です。

 

第6話「決戦!怪獣対MAT」では,避難命令が発令される中,怪我を負った妹,アキとともに東京に残ると主張します。その時に持ち出したのが空襲の話。戦時中,自らは幼少であったが,疎開を嫌った母親が防空壕に飛び込み、この子だけは殺さないでくれ,と叫んだという。

 

坂田氏の言葉はどちらかというと直接的ではなく,このような形で比喩的な話を持ち出すことが多く,そこには感情的になっている者を諫める冷静さと説得力があります。

 

郷隊員と恋人関係にあった妹,アキとの仲をなんとか取り持とうとする場面もあります。

第3話「恐怖の怪獣魔境」では,郷に対して「お前は疲れてんだよ。こいつの顔はこんなチンチクリンだが、怪獣を見てるよりは気が休まるぞ。」と言ってアキに目を向けさせようとしていました。

 

また,二人の仲が結果的に深化したと言われる第16話「大怪鳥テロチルスの謎」にも名セリフがあります。

郷と仲違いをした妹,アキの髪に乗った雪をふり払いながら「東北あたりでは風花と言って,青空なのに雪がちらつくことがある。」と,あまりにも唐突に東北の風花(かざはな)の解説が始まります。

「・・・まるで花びらのようにひらひら舞う,その風花を見ると、もう冬が来たんだって思うんだ。・・・」

郷とけんかしたことをとやかくいったり逆に慰めたりするわけでもない。はっきり言って何を言いたいのか,何を主張したいのかわからないくらいのセリフですが(小学校低学年でこの意味が理解できるだろうか?),ただ妹を思う優しさは間違いなく伝わっている,

隠喩というのか,含蓄を含んだこの言葉こそが数ある坂田氏の名言の中でも最高の名セリフではないかと思います。

 

岸田森氏は,第35話「残酷!光怪獣プリズ魔」では脚本を担当し(ペンネーム:朱川審),ウルトラマンAではナレーションも担当していました。

 

ウルトラ以外でも怪奇大作戦の牧史郎役などインパクトの強い役を演じていましたがそのほとんどが脇役。

個性派俳優として映画やドラマで活躍されていきました。