<たびとはPの弟子に?>
たびと Pさんに「全然正しくない」と返事が返ってきたら,自分のプログラム読解力が未熟なだけ。もっと,しっかり読むようにしましたね。
短善 分かるように教えてほしいと言わなかったのですか?
たびと Pさんは,その期待値に答えることが聞いた人のプログラム読解力向上の邪魔をすると分かっているのです。結局,分かるまで自分でよく読めという回答になるのです。
短善 Pさんをとっつきにくいと感じる人はプログラム読解力を高めようとしない人ということですね。こういう技術者今は多い気がします。
たびと 私は,Pさんの考えを理解できたので,自分のプログラム読解力を未熟さを知るうえで「違っている」というPさんからの回答だけでも本当にありがたかったのです。
短善 そのうちどうなったのですか?
たびと しばらくすると「それは惜しいなあ」と返事が返ってくるようになったのです。Pさんに私のプログラム読解力向上を少し認めてもらえる手ごたえを感じ始めました。
短善 そして?
<気が付いたらたびとはそのシステムの有識者に仲間入り?>
たびと さらに半年くらいするとPさんから「まあ,それでいいんじゃない」と回答される回数が増えていきましたね。そして,逆にPさんのほうから「この部分を読んでどうだった?」聞いてくることも出始めました。
短善 気が付いたら,その基盤システムについて,自分の力でどんどん調べられるようになったのですか。
たびと 自分の社会人としての人生の中で,一番楽しく,充実した時期だったかもしれません。そのころからIT系専門学校の非常勤講師をするようになって,講師の控え室で有名私立大学から来ている先生方とその基盤システムやその開発プログラム言語について,聞く一方ではなく,相手の話に合わせて,自分の考えを発信できたのも,自信になりましたね。
短善 それに比べて,Nさんは最初の仕事が孤立した状態になってしまったのですね。
<話がNのケースに戻る>
たびと そういった初物を新人に任せてしまうなんて一般論としてはありえない。しかし,新しいことをベテラン,まして管理者候補の多くは,一から初心者の勉強をしたくないという思いがあったと私は感じました。
短善 親会社さんのような大きな会社になってしまうと,人を動かすことがスキルとして重要視されますから。
たびと N君はさらに可哀そうすぎでしたね。完全な商用ソフトウェアですから,非公開であることが絶対条件で,厳密な秘密保持契約のもと隔離された部屋で一人で作業というのが,如何に精神的にきついかということです。
短善 それに耐えられる人は,まじめでないことを絵にかいたような遊び人で,休日に人生を謳歌するような趣味をもっていて,仕事はそのための収入源と割り切れる位に考えられる人のほうが適任ということですね。
たびと それって短善さんそのものですよね(笑)。
短善 えっ? 私は真面目そのものですよ(笑)。
たびと 自分で「真面目です」という人ほど,実は..ということでしょう。そういう人は「私はウソをつきません」というラッセル風のパラドックスに近い人と私の経験から結論が出いますよ(笑)。
短善 へへへっ~だ(笑)。でも,Nさんは技術的には非常によいものをもっていたが,メンタル的にはもっとも不適だったのですね。
たびと 私はその製品を使ったアプリ開発を担当していたこともあり,その部屋に入れる数人の登録者(といっても,システムの中を見る権限IDはなく,N君に質問し,N君が端末を見て答える形)の一人に入ることだけはできたので,ときどき状況を確認に部屋に入ったのですが,いつも彼一人でした。
短善 他の登録者や内容を見られる権限のある人はどうしていたのですか?
(7話につづく)