<簡潔で漏れのない形式の計画書に上長は弱い?>
たびと 私は上長に「チームのミッションはソフトウェア保守専門であり,このチームを作る適切な計画作成は自分しかできない。運営はソフトウェア保守については一番理解している私がメンバに教育する必要があり,その方法は私に任せてほしい」といいました。
保品 それで納得してもらえたのですか?
たびと 「計画書に書いた通り,変更時の影響分析やリグレッションテストなど,開発標準に詳しく規定されていないため,その手順や効率的対応方法をメンバに徹底させるまで,少なくとも数カ月は続けたい」と説明しました。
保品 ソフトウェア保守の作業改善についてこれまで効果的な対策を打てなかった上長に,なんだかんだ言わせないという強い意志ですね。
たびと まあね。他のチームで開発したソフトウェアの保守も引き受けることができるためには,対象の開発者でなくても保守できるスキルを身につけさせなければならないと説明しました。上長は「ほんとうにできるのか?」みたいな顔をしていましたが,チームメンバが他の開発チームから追い出されたメンバばかりでしたから「使える技術者にしてくれるなら」とOKを出してくれたと思いますね。
<本当の「緊急」だけを見抜く力>
保品 私の場合,「開発者ではないシステムを知らないメンバにどうやって保守させるのか?」について,自信をもって説明ではなかったかも知れません。結局,緊急時はチームミーティングよりも緊急対応を優先しますという条件付きで許してもらいました。
たびと 「緊急時は緊急対応優先」との条件を付けられてチームを統制するのは正直厳しいですね。私の場合は,「チームミーテイング中は,対外的な対応は基本何もしない」という条件が得られないなら,結局チームミーテイングをやっても0点だと思っていました。
保品 その理由は,「緊急だ!」「緊急だ!」の連発で無計画で動かされ,結局チームがやるべきことをコントロールできなくなり,チームとしての目標達成が見えなくなるに決まっているからということですね。
たびと 今おっしゃったできない理由は,保品さんがまさに苦しんでいること,そのものではないですか。
保品 その通りです。そうしてしまったのも,私のチームリーダとしての自覚の弱さから出たものでしょうね,でも,本当に緊急の場合,対応を放置したら責任問題になりますよね。それがどうしても心配です。
<緊急対応依頼の本質>
たびと 日本企業は従業員に連帯責任を感じさせて仕事を頑張らせる傾向がまだ根強いと私は思います。連帯責任感に頼る管理方式に負けないためには,他部門が困っているからという安易な依頼に負けず,本当に緊急か緊急でないかの判断は「私がするし,その責任は自分が追う」との覚悟があるかどうかです。
保品 状況から緊急事態かどうかの判断は,システムを保守している側の人間が一番知っているはずだし,そうでなければいけないということですね。患者の症状から患者が重篤かどうかを一番的確に判断できるは,周辺の人間ではなく,経験を積んだ主治医だということと同じですね。
たびと さまざまな患者を救った処置経験を積んだ主治医のような自信と責任感をもってこそ,ソフトウェア保守専任のチームリーダが務まるのだと私は思います。
保品 病院を設立し,難病であっても独自の統制されたプロセスで対応できる医院長であり,非専門家や経験の少ない若手医師の言うがままにしないことが必要だと思えば,ソフトウェア保守専任チームについて考えの浅い技術者にしっかり指導する時間が必要と言うことですね。
たびと ただ,残念ですがそれを理解しない抵抗勢力は,私の場合でもそう簡単には無くならなったのです。
(4話につづく)