<自分の対応をすべて明らかにされることへの抵抗> 
たびと 彼は無言の抵抗をしましたね。自分のダメな部分を含め,みんなの前で説明させられ,それが記録に残ることへの強い抵抗感からです。
保品 その抵抗感が半端じゃないこと(笑)は,僕にも容易に想像できそうですね。技術者は監視されることをすごく嫌います。監視されるということは,技術力を信頼されていない,ダメな技術者に対するレッテル貼りのように感じるメンバもわが社には結構いると思いますよ。
たびと 私は「最初がJさんですが,Jさんが終わったらみなさんの担当分にも同じことを順にしてもらいますから」といいました。
保品 他のメンバは内心ギョッとしたのではありませんか?
たびと 多分ね。私は「Jさんは説明しにくそうなので,インタビュー形式で,私から聞かれたことだけ答えてください。すぐ思い出せないときは無理に答えなくてよいですよ」といいました。
保品 インタビュー形式で?
 
<たびとはインタビュー形式で聞き始めた> 
たびと 簡単に答えやすいように,質問をできるたけ小分けにしました。「最初どこから連絡がきた?」「それはいつ?」「電話・メール・直接のどれ?」「顧客名はどこ?」「顧客の担当者は誰?」「こちらの担当営業者は?」「どんな機能について?」「どんな問合せ?」「連絡者が言った緊急度は?」「連絡者の対応希望日限は?」「今までの対応経緯で困ったことは?」といったことを一つずつ順番確認し,R君に問合せ管理システムにどんどん登録していってもらいました。
保品 Jさんは,全部テキパキと答えたのですか?
たびと 実は,「自分でやれます」と言っていた割には,記憶がかなり曖昧でした。辛抱強く待ちながら「大体でいいから」と順次聞き出しました。しばらくして,他のメンバからは「このJ君案件はもうその位にしませんか?」という発言が予想通りですが,現れましたね。
保品 自分がヒアリングされる時を考えて言いたくなったのですね。たびとさんはそれに対して何と?
たびと 「この案件はチーム全体で対応するつもりですから,できるだけ情報を入れておかないとね」といいました。
保品 でも,Jさんの担当案件じゃないですか?
 
<案件はチーム全体で担当?> 
たびと 突然「チーム全体対応案件」という聞いたことがない言葉に,当然メンバには狐につままれた感じをした者もいました。私は「当チームが対応中の案件は,私も含むどのメンバでも対応できるようにするのがこのチームの最終目標です」と宣言しました。
保品 その意味をよく理解できないメンバもいたのではないですか?
たびと その通りです。今まで,分担されたものを個人が責任をもってやり遂げるという動機づけをされ続けてきたメンバのみでしたから。
保品 わが社での担当者への動機づけの仕方も似たようなものです。
たびと 私は次のように付け加えました。「誰もが対応できるようにするためには,誰もが閲覧できる問合せ管理システムに対応経緯も含む情報を医者のカルテのように登録しておくことが一番良いのです」と。
保品 メンバの反応はどうでしたか?
(10話につづく)