子どもの頃は毎年夏休みに東北にある父親の実家に行くのが恒例だった。

 イトコたちも含めて最大20人近くが集まり、毎日川で泳いだり、庭でバーベキューをしたり、畑で農作業の手伝いをしたり、お盆の迎え火に神秘的なものを感じたりといま思えば宝物のような日々をすごした。


(客を迎える父の兄夫婦は大変だったと思うが。気を使うウチの母も。)


 何年もそんな日々が続いたような気もするのだが、

よく考えてみるとイトコたちが揃って小学生だったほんの数年の出来事だったと思う。


 今ではイトコ達とも疎遠になってしまい、もう10年以上も会っていない。


 就職してからあの頃の夏の楽しさをもう一度体験したくて、夏には東北や北関東の「田舎」を訪ね歩いた。

 何もないローカル線の町を訪れて、汗だくになって集落の中を歩くのはそれなりに楽しかった。

 だが、子どものころのような体験とはやはり何かが足りなかった。




 月日が流れて私は職を失い、千葉の実家に逃げ帰り数年ニート生活を続けた。


 今年、ようやくパートとはいえ職につき、ようやく少し余裕を持って安定した生活ができるようになった今年の夏、近所をぶらついていて、ふと懐かしさを感じた。


 あの頃の夏の「感じ」が一瞬だけ強く意識した。

 

 近所の家の線香の匂いのせいか、蝉の声か、などと思ったりもしたのだが、よく分からない。

 汗だくになって家に戻った時、案外家族と過ごす時間が増えたのがその原因なのかな、と考えた。

 



 

 もう、子どもの頃のような夏が戻ってくることはないと思っているが、こういうちょっとした「感じ」は見落とさないように大事にしていこうと思う。