日本初「荷物専用新幹線」が運行開始、
輸送力5倍の「新インフラ」の課題とは
ダイアモンド・オンライン
枝久保達也 によるストーリー

旧山形新幹線のE3系車両を改造した荷物専用新幹線(筆者撮影)
© ダイヤモンド・オンライン
JR東日本の列車荷物輸送サービス
「はこビュン」は3月23日、
旧山形新幹線のE3系車両を改造した
荷物専用新幹線の運行を開始した。
運行開始を翌週に控えた3月17日、
東京新幹線車両センター(車両基地)で
行われた報道公開から、オペレーションの
全容を紹介する。
(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
商用車を思わせる新鮮なデザイン
荷物専用新幹線は、
はこビュンの大口向け新サービスという
位置づけだが、本稿では両サービスを
区別する場合、従来型の小口向けサービスを
「はこビュン」、新しく始まった
大口向けサービスを「荷物新幹線」と
称することにしたい。
「荷物新幹線」は盛岡発東京行の
「やまびこ」(E5系車両)と連結し、
1~10号車は旅客車、11~17号車は
貨物車として運行される。
荷物新幹線の先頭車はサービスを
代表する医療関係品、農産物、水産物、
機械類・電子部品が、中間車の窓には
各エリアで輸送実績のある商材や、
地域を代表する産品がラッピング
されている。
白基調の車体であること、
窓がふさがれていることなど、
商用車を思わせるデザインが新鮮だ。

中間車の窓は地域を代表する
産品などがラッピングされている(筆者撮影)
© ダイヤモンド・オンライン
サービス開始時点では盛岡→東京間のみの
設定だが、12号車は北海道・東北新幹線エリア、
13号車は秋田新幹線エリア、14号車は
山形新幹線エリア、15号車は上越新幹線エリア、
16号車は北陸新幹線エリアと、
同社の5方面の新幹線全てを取り上げている。
「やまびこ」とともに主要駅で
停車することから広告効果の期待も
あるだろうが、E3系は同社の全路線に
入線した実績を持つ車両だけに
(https://diamond.jp/articles/-/375514 参照)、
各路線への進出に期待を抱かせるデザインだ。
荷物新幹線の積載量は
はこビュンの約5倍
実際のオペレーションを見ていこう。
通常のはこビュンは、新幹線の
業務用スペースに段ボール箱
(3辺合計120センチサイズ)を
最大40箱程度、毎週金曜日に臨時列車の
一部客室を荷物専用として最大200箱程度を
搭載し、始発終着駅、主要駅の停車中に
積み下ろしをしている。
しかし、荷物新幹線の積載量は
最大1000箱程度(最大17.4トン)に達し、
駅では対応できないため、積み込みは
盛岡、荷下ろしは東京の車両基地で行われ、
トラック輸送と直結する。
これまでのはこビュンがエキナカや
駅近くを目的地とする小口向けサービス
だったのに対し、荷物新幹線は市中へ
輸送する大口向けのサービスだ。
車内は台車を積載するために、
全ての座席を撤去し、滑り止め加工した
鉄板で床をフラット化した。
床面のガイドレールに沿って
並べられた台車は、荷物棚の支柱に
かけられたベルトで拘束し、
荷崩れを防ぐ。足元には旅客車時代の
コンセントがそのまま残されており、
業務用クーラーボックスなど
冷温管理機器の使用に対応しているという。

車内積載の様子(筆者撮影)
© ダイヤモンド・オンライン
東京駅到着後、荷物新幹線は
「やまびこ」と併結したまま車両基地に
入区する。
列車には20キロの段ボール箱を
6箱積載できる台車を1両あたり24台、
計7両で1000箱程度を積載し、
既存のドアから台車ごと積み降ろしする。
荷物は各車両に均等に積み込むのではなく、
荷主ごとにまとめて積載し、積み降ろしを
効率化する。

TESSEIの荷下ろし作業(筆者撮影)
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トラックヤードまでの運搬は
新開発した無人搬送車
はこビュンの提供主体はJR東日本グループの
「ジェイアール東日本物流」だが、
積み降ろし作業は同車両清掃会社の
「JR東日本テクノハートTESSEI」が担当する。
列車が往来する車両基地内の作業になるため、
車両清掃で実績のあるTESSEIに白羽の矢
が立った形だ。
車両から降ろした大量の荷物を
トラックヤードまで運ぶのが今回、
新たに開発したAGV(無人搬送車)だ。
手押し台車にタイヤとセンサー類を
付けたような無骨なデザインだが、
台車6台(最大40箱)、最大1トンの
荷物を牽引できるパワーがある。
そして名前の通りAGVはホームから
トラックヤードまで、周辺映像と走行ガイド
(画像足元の白線)や一時停止箇所の
サインをセンサーで認識しながら
完全自動で走行する。
制御装置は市販のスマホを
使用しており、安価に省力化を実現した。

ホーム上を走行するAGV(筆者撮影)
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走行経路には直角に曲がる箇所や
スロープもあるが、建物内は目算で
時速4キロ、構内道路は時速6キロ程度で
走行する。
走行は想像以上にスムーズで、
早歩きでなければ追い付けないほどだった。
AGVは東京新幹線車両センターに4台、
盛岡に3台導入され、1台のAGVが
1両分の荷物を3~4往復で運搬する。

構内道路を走行するAGV(筆者撮影)
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最初の顧客は生鮮と駅弁
新たなニーズの開拓が課題
ジェイアール東日本物流の資料によれば、
荷物新幹線は盛岡新幹線車両センターを
11時50分頃に出発し、「やまびこ」56号に
併結して盛岡駅を12時8分に発車。
東京駅に15時24分に到着し、
東京新幹線車両センターに
15時45分頃に入区する。
盛岡の荷物持ち込み時間は8時30分から
10時頃まで、東京での引き渡しは
16時30分頃以降となっており、
盛岡~東京間を7~8時間程度で輸送する。
JR東日本は、盛岡~東京間を4トン×4台の
トラックで輸送するのと比較して、
ドライバーの拘束時間を年間3万4310時間、
CO2排出量を593トン削減可能と試算しており、
社会的課題解決に貢献できると胸を張る。
同区間はトラックで8~10時間程度を
要するため、速達性で優位に立つ。
だが、「やまびこ」の所要時間
約3時間20分と比較すると、リードタイムが
やや長い印象だ。
積み降ろしのオペレーションを
もう少し短縮して競争力を高めたいところだ。
「荷物新幹線」の
最初の顧客は生鮮食品と駅弁だ。
はこビュンは高価格帯の果物など
振動や温度変化に弱く傷つきやすい物品、
輸血用血液製剤や精密機械部品など
高速・安定輸送が求められる物品を
主要顧客としているが、これらは
大量輸送する性質のものではないため、
荷物新幹線は新たなニーズを開拓する
必要があるだろう。
運行開始時点では盛岡から東京への
一方通行だが、今後は東京発の設定、
仙台エリアや新潟エリアの運行を
目指していく。
サービスが好調なら1編成では
回せなくなるため、車両の増備や
運行形態の変化なども視野に入ってくる。
まずは顧客の開拓と定着が優先だが、
そのあたりの展望も気になるところだ。
C 2024年問題でトラックによる
運送関連は大変だと思う。
最近報道されたニュースで知ったのが
新幹線車両で物流を行うという。
実は半世紀も前に、新幹線0系車両を
利用した物流輸送専用の新幹線構想が
ラフスケッチがあったことから
すでに構想はあったと思われる。
しかし、何かしろの理由で
実現されなかったと思われる。
計画では人員の輸送を優先し、
物流輸送は深夜の運行を計画していたらしい。