ナタマメ(赤・白)
鉈豆はマメ亜科の蔓性の一年草。原産地は熱帯アジアまたはアフリカ。
刀豆(トウズ、タチマメ、ナタマメ)、帯刀(タテハキ)ともよばれる。日本へは江戸時代に渡来。約25センチメートルほどの豆果を結ぶ。
以前から漢方薬として知られており、近年では健康食品、健康茶としても一般的に知られるようになった。
歴史
アジアかアフリカの熱帯原産とされ、食用や薬用として栽培される。日本には江戸時代初頭に清から伝わった。
特に薩摩では江戸時代から栽培が盛んで、NHK大河ドラマ「篤姫」のワンシーンでも長旅の無事を祈る餞別として送られていた。福神漬けの材料にもなる。
生態 ナタマメの花
夏に白またはピンク色の蝶形の花を咲かせる。その後、結実するが、実の鞘は非常に大きく、大きなものでは30-50センチメートルで、幅が5cmほどになる。
葉は長い柄のある3出複葉で大型である。莢果は11月頃。別名の「タテワキ(帯刀)」は、この莢の形に由来する。
産地
日本国内でも栽培されるが、ラテンアメリカ、中華人民共和国からの輸入が多い。
熱帯アジアやアフリカで食用や薬用に用いられており、日本でも福神漬・健康茶・民間薬・メッセージ缶(種子にレーザーで文字を彫ったもの)などに利用される。
食用としては、若いさやを食べることが多く、炒め物、煮物、漬物にすることが一般的である。福神漬に用いられる。
薬効を目的にした場合は、豆を利用することが多い。完熟した豆は、主にお茶として用いられる。
豆の栄養素は、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが豊富である。ナタマメから作る茶の薬効としては、血行促進や免疫力の向上などのさまざまな効果があるほか、アレルギー性鼻炎、口臭の緩和によいといわれている。
昔から排膿(膿を出す)の妙薬といわれており、腎臓に良く、蓄膿症、歯周病や歯槽膿漏の改善、痔ろうなどにも効果がある。他の野菜の病害虫の防止用として周囲に植えられることもある。
コンカナバリンAはナタマメにしか存在しないレクチンであり、植物レクチンの代表例として知られる。生物工学の分野ではT細胞のマイトジェンなどとして広く使われている。
毒性
豆類全般にいえることだが、ナタマメにも毒がある。
とくにタカナタマメ・タチナタマメには毒が多い。
食用とするのはアカナタマメ(赤豆)・シロナタマメ(白豆)といわれる品種で、アカナタマメにはわずかな毒性があるが、焙煎加工されたものは副作用がない。
粗悪な健康茶などには注意が必要。また、メッセージ缶に用いられるものは食用に適さない品種が使われており、食べることはできない。
サポニン・青酸配糖体・有毒性アミノ酸のコンカナバリンAやカナバニンなどの毒素が含まれている。
カナバニンは、アルギニンに類似した構造を持ち、アルギニンの機能を阻害しアンモニアが蓄積する有害作用があり、多くの昆虫がナタマメを避けるので虫害が少ない。
ヘチマ(糸瓜、天糸瓜)
インド原産のウリ科の一年草。また、その果実のこと。日本には室町時代に中国から渡来した。別名、イトウリ、トウリ。
名前の由来
本来の名前は果実から繊維が得られることから付いた糸瓜(いとうり)で、漢名(中国植物名)で絲瓜(しか)と呼ぶ。
若い実を食用にする鹿児島では「いとうり」とよばれて親しまれている。
和名ヘチマの由来は、一説にはイトウリが後に縮まって「とうり(と瓜)」と転訛し、「と」は「いろは歌」で「へ」と「ち」の間にあることから「へち間」の意で「へちま」と呼ばれるようになったとされている。
今でも「糸瓜」と書いて「へちま」と訓じる。沖縄では「ナーベーラー」とよばれるが、これは果実の繊維を鍋洗い(なべあらい)に用いたことに由来するという。
なお、中国から渡来した黒胡麻、通称黒芝麻がヘチマと聞こえること、沖縄にはゆでた糸瓜に黒芝麻(ヘチマ)をかけたナーベーラー田楽という料理があることなどから、呼称違いではないかという説もある。
また、耐病性へちま品種に「浜名」、「天竜」、「浜北」、「あきは」など、静岡県西部の地名にちなんだ名称がつけられているのは、同県浜松出身の織田利三郎が明治時代に輸出振興のためヘチマの生産力を上げる改良に尽力したことによる。
食用
夏から秋にかけて、開花後10日前後の繊維のやわらかい若い果実が食用とされており、食材としての旬は6-8月とされる。
繊維が未発達の若い果実には独特の風味があり、固い皮を剥いて果肉を加熱するとナスのようなとろりとした食感がある。味は淡泊で、ウリ科特有の香りとほのかな甘味がある。
ヘチマに含まれる栄養素は、100グラムあたりの熱量が16キロカロリ― ほどで、ビタミンC、ビタミンK、β-カロテンやミネラルが豊富に含まれている。
約95パーセントは水分であるが、この水分の中にミネラルが含まれており、無駄なく摂取するためには煮汁ごと食べる料理が向いている。
なお、ヘチマの一部の株においてククルビタシンを非常に多く産生するものが混じって流通することがあり、自家栽培したものなどを苦味を我慢して食べたことによる食中毒事例(おう吐や下痢等)もある。そのため、ゴーヤーに比べて苦味の強いものには注意する必要がある。
日本では、南九州や南西諸島で汁物や煮物、炒め物、和え物、天ぷらなどに用いる。沖縄では味噌味の蒸し煮である「ナーベラー・ンブシー」として食べるのが代表的で、シチューやカレーなどの洋風料理にも用いられる。
南九州では、煮物や揚げ物などにしたり、味噌汁の具にすることが多い。台湾では小籠包の具としても使用する。
なお、天保年間に初版が刊行された「漬物塩嘉言」では粕漬(糸瓜粕漬)が紹介されている。