こんにちは。帰国子女受験コンサルタントのタバタです。

 

今回は、受験科目に国語を入れること国語学習の必要性についての質問と回答です。

 

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英語圏からの帰国生男子、小6です。

 

英検1級を持っており、中学受験では英語がメインになります。

 

英語系の塾の成績(授業の演習内容と模擬試験)も悪くなく、

チャレンジ校がダメであっても、

いい意味の「押さえ」の中学に通う気もあるので、

大きなストレスは感じていません。

 

別の塾(一般向け)で基礎的な算数と国語を受講しており、

算数はそこそこですが、

国語の得点力が伸びなくて困っています。

 

本人は第一志望に向けてエネルギーと時間を注いでいるので

変な横やりは入れたくありません。

 

しかし、中学に入学後は帰国生用のケアがあるものの、

今の国語力では6年後の大学入試も心配です。

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「国語の得点力がどうしても上がりません」

 

というご相談はもちろんですが、

 

「英語中心の受験なのでそもそも国語の勉強が必要なのか」

 

という質問も実は多いのです。

 

ケース・バイ・ケースなのですが、

この質問者のお子様のプロファイルをさらにいくつかのケースに分けて、

タバタなりの考えと経験をお伝えします。

 

ケース1:ご両親の、少なくともおひとりの母語が英語である

 

受験まで、英語中心でいいでしょう。

 

しかし、あくまでも「受かる目的」を達成するためと考えたほうがよいと思います。

 

もし、受験の準備としてネイティブスピーカーのお父様ORお母さまとのディスカッションや面接練習ができない場合、

以前のブログ記事

 

「英検1級でも合格できない(ことが多い)」渋幕の英語中学入試についての考察:その1 | 帰国子女の保護者を静かに応援する元塾講師タバタのブログ (ameblo.jp)

 

でも詳しく書きましたが、

英語力以外の部分で弱点があるのなら、

以下に述べる「国語」の学習を並行するべきだと思います。

 

また、ご相談内容に、

6年後の日本国内での大学受験を想定されているようですので、

当然国語学習は意識するべきでしょう。

 

 

ケース2:ご両親とも母語が日本語である

 

受験で国語を使うか使わないかにかかわらず、国語の学習は必要だと考えます。

 

ただ、保護者様が

「変な横やりは入れたくない」

とおっしゃっている通り、

慎重なアプローチが必要です。

 

受験が近づき、

英検1級ホルダーの受験生がチャレンジと考える渋谷系の中学では、

大体エッセイや面接の比重が大きくなっています。

 

前述のブログ記事とも重複しますが、ご確認ください。

 

エッセイや面接で問われる「人間力」には、

「思考力」「判断力」「表現力」という、

母語だからこそ発揮できる能力が含まれています。

 

経験上、英米語圏の現地校やインターナショナルスクールでの学習歴が長く、

 

「作文やプレゼンテーションは日本語よりも英語の方がベターだ」、

 

というお子様でも、

いざ、渋谷系の入試のエッセイや面接では太刀打ちできないことが多いです。

 

英検1級レベルの英語力に、「プラスα」が必要だということですね。

 

プラスαをどう鍛えるか

 

私は、それを鍛えるには「母語」で聞き、考え、話し、書く、

すなわち4技能が一番効果的だと考えます。

 

これまで指導してきた生徒で、

渋幕または渋渋の帰国生入試に「特待合格」された生徒が

5人ほどいらっしゃいますが、

全員「日本語で」考え、表現できた生徒でした。

 

塾時代の経験で恐縮ですが、

エッセイを書いたり面接で話すのは英語なのですが、

私のメソードとして、

その解説や説明は日本語を使うのです。

 

最初のうちは私の説明の意味が分からないこともありますが、

英語の説明も途中で挟んだりして、

「思考」を日本語に寄せていくやり方です。

 

そうすると、科学的なエビデンスがあるわけではないのですが、

「思考力」が飛躍的に伸びる生徒たちが多いのです。

 

わずか数週間~1か月くらいでその効果を見せる生徒もいました。

 

さらに、受験まであと数か月という時期になると、

エッセイの書き直しのためのディスカッションや面接練習に

お父様・お母様を巻き込んでいきます。

 

しかもそれは「単なる会話の相手」ではないレベルのやり取りが必要だと考えます。

 

エッセイで問われる「自己アピール」

「海外での経験値」

あるいは環境や貧困などの社会問題についてのディスカッション

親子でやっていただくのです。

 

お父様やお母様の知識、経験、教養をお子様と共有することで

初めて見えてくるものがあるようです。

 

(これは、帰国子女である私自身の経験値でもあります。)

 

 

もちろん、塾や家庭教師の先生からの指導でも足りる可能性はありますが、

タバタが見てきた限りでは、

親子の対話を通して「人間力」を付けてきた受験生が多かった、

という意味です。

 

だとすると、もしお父様かお母さまがネイティブ・スピーカーであれば、

英語でやり取りをすればいいし、

そうでなければ、日本語=国語で対話するとよいのです。

特に、男子生徒は、語弊を恐れず言うと

「おおざっぱな」思考回路だったものが

「論理的」に考えられるようになることが多いようです。

 

ここから、質問への回答につながってきますが、

私は「国語」の学習の大切さを強調したいです。

 

一般の塾での国語の得点力、と記されていますが、

ひょっとしたらレベルが高すぎるかもしれません。

(不要とは言いません。)

 

ここで伝えたい「必要な国語力」は、

いわゆる公立小学校6年生レベルの国語力で良いのです。

 

一般の塾の「受験国語」は、文章のレベルが高いにとどまらず、

「入試問題の解答力」まで養成しようというものです。

 

何度も言いますが、

それらをすべて否定するつもりはありません。

 

ただ、母語を使った思考力を親子で育てたいのです。

 

言い方を変えれば、

小学校で扱っている「国語の教科書」レベルの文章を理解し、

語れるレベルを目指してほしいのです。

 

友情、平和、コミュニケーション、公害問題、歴史・・・
 

学校教科書で扱われているテーマは、なかなかのものです。

 

「国語」の学習は、塾任せにせず、

ご家庭で「小学校レベルの国語」

親子でシェアするところから始めてはいかがでしょうか。

 

お子様の「人間力」アップだけでなく、

サポートしてくださるお父様・お母様の成長もはかれる

素晴らしい作業になると思います。

     ◆

 

英語重視の帰国生入試を行う中学校は、

国語(あるいは数学・理科・社会)が苦手な生徒にケアをしてくれるところは

確かに多いです。

 

しかし、手取り足取り勉強の仕方を教えてくれるわけではなく、

 

「周りにいる一般入試をクリアした優秀生に影響を受けながら

必死に自律的に取る組んでいる」

 

ところをサポートしてくれるわけです。

 

自分の英語力を過信して

 

「国語なんて嫌いだ!自分は英語で生きていくんだ!」

 

と意地を張っているとしたら、

残念ながらそういう生徒はお呼びではありません。

 

「思考力」と「表現力」を「母語」で鍛えることについては、

次回、詳しく説明させていただきます。

 

2024年8月29日

タバタヤスシ