こんにちは。
帰国子女受験コンサルタントのタバタです。
先日の「英検1級でも落ちる(ことが多い)」渋幕の帰国生入試を受験するお子様のお父様から、カウンセリング中にご質問いただいたことついて説明いたします。
(個人が特定されないように表現は大きく変えてあります)
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タバタ先生、うちの子が目指している渋幕が英検1級でも厳しいということは分かりました。
私、東京大学を出ているんですけれどもね、東大入試の英語って、今うちの子が取り組んでいるようなハイレベルなものではなかった気がするんですよ。
私は純ジャパで、高校の時に英検も2級までは取ったけど、準1級を取ったのは東大に入ってからやっとだったんです。
ということは、英検1級を持っているうちの子が渋幕に入学出来たら、さらに、仮に将来東大を目指そうとしたら、もう大学入試までは英語の学習に限ったら不要なんですかね。
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東京大学のご出身の保護者は、やはり「わが子も東大に」と意識されているケースが多いように感じます。
(実際に6年後に受験するかどうかは別として)
私は、大学受験の指導は私大コースのみで東大に合格させた経験はないのですが、問題研究は趣味の範囲で(笑)続けています。
いい機会ですので、東大を意識している、していない関係なく、「英検1級でも落ちる(ことが多い)」渋幕の帰国生入試の英語と、東大の英語について分析してみたいと思います。
長くなりそうなので、今日は「その1:渋幕の英語」ということにいたします。
★渋幕の帰国生入試問題(2024年度)分析★
【パート1~5:リスニング+筆記で50分:すべて記号解答】
パート1:リスニング(予想配点2点×10問)
オーストラリアの「エミュー戦争」についてのノンフィクションコンテンツ。
過去問集にテクストが載っていますが、内容的には英検準1級レベルの印象。
パート2:文法問題(予想配点2点×10問)
誤文訂正。10~20単語の英文中から1か所の文法ミスを見つける(3択)。
ミスを見つけるだけで訂正作業は必要なし。
「誤り無し」もあるのが渋幕スタイル。
前回の投稿の通り、英検には英文法が出ないので準備が必要。
私立大学入試レベルの印象。
パート3:語彙(予想配点2点×10問)
英文中の空欄補充。英検準1級を少し超えたくらいの印象。
パート4:長文読解1(予想配点2点×10問)
長文読解の一つ目。
Chris Colferの小説「An Author's Odyssey(ある作家の旅)」の一部。
ファンタジー要素が豊富で、友情や家族の絆、勇気と自己発見といったテーマが描かれています。
語彙レベルは準1級ですが英検では出題されないタイプの文章で、英語圏の小学生で読書習慣がある子供にとっては楽勝なイメージですが、いわゆる「英語が得意で英検1級も持っています」というだけではきついかもしれません。
パート5:長文読解(予想配点2点×10問)
長文読解の二つ目。
Kate Fehlhaberによって書かれた「What Know-It-Alls Don't Know — The Illusion of Competence」(知ったかぶりが知らないこと — 有能感の錯覚)からの引用。
自己評価と実際の能力の間のギャップを探る内容です。
「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる心理現象について説明されており、語彙は英検準1級ホルダーでも読めそうな印象ですが、内容は大学生の教養を試すようなレベルです。
ただの英語力ではなく、「英語で試される『国語力』」とも言えましょう。
【エッセイパート】(筆記試験とは別に30分)
英語での出題、B4用紙に手書き。
Imagine a society in which money is not used. Would life be better or worse?
「貨幣の使われていない社会を想像してください。生活(Life)はより良くなるか、より悪くなるか?」
英検で同様のトピックが出たら、「知識・情報」でサポートされた作文をすれば「良い」でも「悪い」でも合格点は取れます。
しかし、渋幕の入試ならば、「説明できる英語力」以上に
「なぜその意見なのか、経験値で根拠を説明できる人間力」
まで評価されるとみていいでしょう。
この観点で見ると、英検1級ホルダーでも取り組みづらいトピックです。
貨幣経済のおかげで人類の発展は成し遂げられたはずだし、しかし、貨幣経済のせいで人類は最大の窮地に立たされているともいえる。
ポリコレ的に完全な「良いか」「悪いか」を判断するのではなく、「自分とお金」についての考察を含んだ意見にすれば高得点が取れるのではないかと思います。
渋幕の帰国生入試英語の分析は以上です。
次回は、東京大学入試の英語についての分析を、渋幕の入試問題と照らし合わせてみます。
2024年8月5日
タバタヤスシ