🍳『TKGたあくん酒場』
ノベライズ 第97話
著:兎羽流葉(うぱるぱ)🪶
── 心と胃袋を満たす、小さな物語。


第97話
「席札のない特等席」


その日は、夜だった。
いつもの時間。
いつもの灯り。
でも──
どこか、静かだった。
いつも通り開いている。
でも、何かが“整いすぎている”。
ポン助が入る。
「……あれ?」
違和感に、すぐ気づく。
「なんか、スッキリしてません?」
亮介も入る。
店内を一目見て、言う。
「外したな」
菜摘が続く。
「はい、何もありませんね」
カウンターの上。
いつもあったものが、ない。
箸立ても、調味料も、メニューも。
最低限だけが、残っている。
たあくんは、奥にいる。
何も説明しない。
ただ、いつもの場所にいる。
ポン助が言う。
「席、自由っすよね?」
亮介が答える。
「もともとな」
でも今日は、少し違う。
“どこでもいい”が
少しだけ重い。
ポン助が、真ん中に座る。
理由はない。
でも
なんとなく、そこがいい気がした。
亮介は、少し間を空けて座る。
菜摘は、さらにその隣。
マサは、端。
距離がある。
でも
バラバラじゃない。
その時。
ドアの鈴が鳴る。
あの親子。
女の子が、少しだけ迷う。
席を見て。
何もないカウンターを見て。
「どこ、すわる?」
母親が聞く。
女の子は、少し歩く。
カウンターをなぞるように。
そして──
止まる。
ポン助の隣でも
亮介の前でも
菜摘の近くでもない
少しだけ、離れた場所。
「ここ」
何もない席。
でも
そこが選ばれた。
たあくんは、何も言わない。
ただ、その位置を見る。
少しだけ、うなずく。
誰にも気づかれないくらい。
ポン助が小声で言う。
「なんでそこっすかね」
亮介が答える。
「理由がないのが理由だ」
菜摘が言う。
「特等席ですね」
誰も否定しない。
何も置かれていない席。
でも
そこが一番、しっくりくる。
たあくんが、水を出す。
順番も、位置も関係なく。
ただ、そこにいる人へ。
料理は、出ない。
今日も。
でも
誰も困らない。
女の子が、カウンターに手を置く。
「ここ、いいね」
昨日と同じ言葉。
でも、意味が違う。
母親が、静かに座る。
「不思議ですね」
ポン助が言う。
「ほんとっすね」
亮介が言う。
「名前がないほうが、残る」
マサが言う。
「くだらねぇ」
でも、席を動かない。
たあくんは、奥で火を見ている。
今日は、ついている。
でも
何も焼かない。
その火は
ただ、そこにある。
時間が流れる。
誰も席を変えない。
誰も、指示しない。
でも
全部、決まっている。
女の子が立つ。
「またくるね」
迷いがない。
母親も立つ。
「ありがとうございました」
たあくんは、短く言う。
「はい」
ポン助が言う。
「次もその席っすか?」
女の子は、少し考える。
そして笑う。
「わかんない」
それが答え。
ドアが開く。
鈴が鳴る。
夜が戻る。
ポン助がぽつり。
「席札、いらないっすね」
亮介が言う。
「最初からなかっただろ」
菜摘が言う。
「でも、見えましたね」
マサが言う。
「……あるもんだな」
たあくんは、何も言わない。
ただ、カウンターを見る。
何もない席。
でも
誰かが選んだ場所。
その夜、店には
“見えない席札”が置かれていた。


あとがき(うぱるぱ🪶)
97話、かなり静かに核心です。
テーマ👇
👉 「選ばれる場所」
普通は
・席を用意する
・席を案内する
でも今回は逆👇
👉 「何もないから、選ばれる」
これです。
女の子の行動👇
👉 理由なし
👉 でも一番正しい
ここがポイント。
さらに👇
👉 料理がない
👉 でも席は成立する
つまり
👉 店=場所の意味
に完全移行しました。
ラスト3話
👉 感情、かなり来ます
98話いきます🔥

不思議な感じで続いておりますが、

しばらく我慢😅笑笑

それがたあくん酒場です。
普通、当たり前、いわずもがな、
こんなお店があったら行きたい、
行ってみたい、そんなイメージで
書いております。
行きつけに憧れた時期もありました
ここ行きつけにしよーみたいな場所や
候補もありました。ただ現実は忘れてしまう
ことが多々ある
一見さんの真逆、常連さんの真逆、
にもかかわらず、

居心地がよいラブ

そんな店がわたしは好きです。

次回01-03はスピンオフを書きます
今回は煉獄さんや夏目漱石はでません。
ラストのスピンオフは本編に近い話で、
補足なのか蛇足なのかわからないですが
本編に沿って書いております。

では、スピンオフ01-03たあくん酒BARを
お楽しみください。

ほな、またーくんラブラブラブ