この作品は『台風のノルダ』の同時上映作品。
でも、別作品として書いておきたい。

ある男の子が、ある女の子に告白する物語。

「君のことが好きだ!」と言うのは、驚異とも言える勇気が必要だ。
難儀な話だ。
「私は、あなたのことが、好きです」
区切ってみても、たった3つのセンテンス。
この言葉だけで、場合によっては人生が左右される。

男の子は女の子に照れ、自分の気持ちに照れ、いつも彼女から逃げてしまう。
でも、その女の子が転校し遠くに行ってしまうとき、彼は逃げないを選択する。
自分だけの心にある鳥小屋の鍵を開く。

言葉にしなければ伝わらない。
伝えなければ、意味が無い。

彼は走る。心を鳥に乗せ、想いを胸に抱え。
転んでも、ぶつかっても、走る。
彼女に、自分の気持ちを伝えたい。全てがその一点に研ぎ澄まされた彼を何も止められない。



夕焼けの駅のホーム。
男の子は女の子に追いつく。
君が好きだ、と伝えられる最後の機会。

刹那の逡巡。

「元気で」

彼の胸中がどんなものだったのか。僕には分からない。
彼の精一杯が、元気で、だったということだ。


電車のドアが閉まる。
女の子は、「ありがとう」と答える。
たぶん、彼女の人生の中で一番の、ありがとう、だと思う。



女の子は素敵な女性へと成長していく。心にはずっと男の子がいる。
男の子の想いはちゃんと伝わっていた。



男の子は、どんな大人になったんだろう?
驚くほど素敵な男になっているだろうか。
絵描きになっているだろうか。
僕は、彼が普通の男になっているんだと思う。
普通の中で、一生懸命、自分の人生を生きる。
そんなカッコいい、素敵な大人になっていると思う。

いつかの彼女に、胸を張って会えるように。