祈りの空間~イグナチオ教会にて | 建築家 田口知子の日常をつづったブログ

祈りの空間~イグナチオ教会にて

四ツ谷のイグナチオ教会で、先日、献堂20周年記念ということで、親しい友人でもあり、敬愛する建築家である村上晶子氏のシンポジウムが企画され、参加させていただいた。

 

村上晶子氏は、坂倉事務所にお勤めだった30代の時、この教会の設計チーフとして8年間を捧げたそうだ。教会の聖堂を作るというのは、建築家としての最高峰ともいえる仕事だと思う。ただ、美しいだけでなく、大勢の信徒の方の期待と批判を受けとめ、多くの困難を乗り越え続け、心血を注ぎ完成させたことが、スライドでのお話から伝わってきた。花形の天井のフレームは、風船の外形のような形で屋根構造として働いていること、主構造の12本の柱の意味など、設計者ならではのお話しをたくさん聞けて、とてもわくわくした、充実したひとときでした。

 

技術的なお話しが多かった中で、底に流れる精神性、信仰の意味について、建築家としての深い教養を感じ、教会が、光や空間など、空間として素晴らしいことに目を奪われるが、建築とは、ここまでの深い意味を必要とするのかと、感慨深くお話を聞いた。

 大聖堂も素晴らしいが、その横にある小さなザビエル聖堂が一番好きだ。藁スサの入った土壁が丸みを帯びて全体を覆っていて、低い窓の外には水盤。礼拝堂の中にも水盤があって、ひたひたと水が流れる音が響いている。和の空間を思わせるその小さな聖堂は、祈るための空間として、日本人にとても身近な空間を感じさせる。一人で過ごすことが心地よいと思える聖、祈りの空間とはなんと素晴らしものだろう。

 

自分もこの人生で、そのような建築を作る機会があるだろうか、と、憧れを感じるものがあることは幸せなことだ。

 このような設計を30代の若さで完成させた村上さんの力量に、あらためて深い尊敬を感じました。ありがとうございました。