暮らしの保健室 ~地域の居場所に必要なこと | 建築家 田口知子の日常をつづったブログ

暮らしの保健室 ~地域の居場所に必要なこと

先日、かねてから行きたかった新宿戸山ハイツの「暮らしの保健室」に行って来ました。


施設を創設し、運営を取り仕切っておられる秋山正子さんに直接お話を伺うことができました。秋山さんは訪問介護のパイオニアとして、長年在宅介護、看取りの仕事をされてきた経験をお持ちの素晴らし方です。

戸山ハイツは昭和43年~51年に建設された総戸数3000、住民数7000人の大団地です。そして、この時代の団地の例にもれず、高齢化率は45%。その戸山ハイツ1階商店街の一角に「暮らしの保健室」があります。



がん患者さんの相談やさまざまな病気への不安や暮らしの困りごとなど、だれでも、いつでも、予約なしでぶらっと立ち寄って相談できる、ホスピタリティーあふれる開かれた場所です。

資格を持った訪問看護婦さんも常駐されており医療との連携がスムースです。何もなくてもお茶を飲んで話を聞いてくれる、という地域住民の居場所として、木曜日には200円ランチも提供されたり。
秋山さんの運営される訪問介護ステーションとしても、地域包括ケアのステーションとしても、とても充実した役割を持っています。

玄関の引き戸はいつも少し開けています。木のガラス貼りの風除室があって、目の前を通った方が玄関先で躊躇しておられたら、ボランティアのスタッフや秋山さんがさっと外に出て、どうぞ、と声をかけています。敷居を低く、誰でも入ってこれる工夫や思いやりがあふれた活動のあり方を感じました。このようなスペースには、いつでも人がいて、ウェルカムされるということが本当に大切なのだと実感します。

この日はボランティアの女性が3人、お茶を出したりしてくださいました。

 相談室は、医療対象行為にはならなおので予算もかけず、小さなスペースになってしまうことが多いのに、秋山さんはしっかり費用をかけて空間を自然素材とデザインにこだわって作られたそうです。木の窓や間接照明、ホタテのしっくりや土佐和紙の天井、無垢材の床、ひのき貼りのトイレや台形に仕切られたパースペクティブな空間。空間の性格が人に及ぼす影響をとても大切に考えておられる話を聞き、建築を設計するものとして本当にうれしく、感動を覚えました。


使う側の目的、ソフトと建築というハード。両方が融合する建築として、イギリスのマギーズセンターを参考にされたそうです。一人暮らしが増え、孤独や貧困が社会に広がる日本の中に、このような場所はいくらあっても足りないくらいだと・・。

この事業は国の補助金、地方の助成金で運営されているようですが、一番の要は秋山さんのような「人」の存在と、支えてくれるボランティアさんたち。人が一番重要なんです。それに加えて、ハードとしての建築は、その事業の存在をアピールし、成功させ、次に続くため、人を説得するうえでとても大きな力になる、とおっしゃる秋山さん。この暮らしの保健室も改装にお金をかけて本当によかったと。人が心の鎧を脱ぎ、安らぐ空間は、外部、緑・庭と街なみとの連続性、キッチンがあること、居心地のよいテーブルコーナーがあること、といった「家」のような空間であることが大切だとおっしゃいます。このような活動のための場所をつくることは建築家の最高の夢だ、と感じます。

秋山さんとのツーショット。(*^_^*)

「人が自分の力を取り戻す場所」、地域にどんどん広がっていくことを願っています。