寝室の壁に親父が描いた絵を飾っている。
アミロイドーシスと診断され、余命宣告を受けてから親父は絵を描いていた。
鉛筆や色鉛筆で風景や、可愛がっていた軍鶏や、草花や、子供の頃の想い出や、色々と。
繊細で柔らかなタッチでとても上手な絵。
特に習った訳でなく、もともと器用に何でもこなす親父だったから家族は驚きはしなかったけど、友人知人は皆驚き、感心していた。
親父は豪快なイメージの人だったから尚更のこと。
何枚かは友人から「欲しい」と言われてあげたみたい。
そんな親父の絵を寝床でボーッと眺めていたら無性に会いたくなった。
「どんな気持ちで描いてたの?」
病気確定してもまだ元気だった頃の絵と、身体が弱り入院中のベッドで描いた絵を見比べて、胸が苦しくなった。
親父なりの生きた証を残したのだろうか。
そんな大袈裟なものではなく暇潰しだったのかな。
暇潰しだったにせよ心を込めて軍鶏の羽を色鉛筆で丁寧に丁寧に描いてあるこの「絵」は自分が居なくなっても残り続ける事を祈ってたのだろうな。
生きた証としてならば「魂込めて」書いたのだろうな。
日に日に病に蝕まれ弱っていく身体、死に直面し恐怖と闘い「もしかしたら奇跡が起きて治るんじゃないのか」とかすかなかすかな希望を無理やり創り上げ、でも検査を受ける度に悪くなる数値を突きつけられ・・・。
ふと、そんな事を考え胸をえぐられる様な気持ちになり、親父に会いたいなぁと思った。
68歳で旅立って、もう20年近く経ったけど今でも会いたい。
いつも味方してくれた。
悪い事した時は半殺し位怒られたけど、愛が有ったんだろうな、恨んだことなんて無かったな。
もし会えたなら何を話すかなぁ。
キャッチボールしたいなぁ。
一緒にパチンコ行って勝った負けたと下らない話もしたいなぁ。
俺の胃癌発覚の時なぜかお医者さんに「気になるので診て下さい」と言わせたのも父ちゃんだよなぁ?
なんて布団の中で泣いてしまった。
俺も大分歳取ったよ、死んだらまた会えるのかなぁ?
「まだ早いよ、そんな事言うもんじゃないよ」って言いそうだな。
「俺はさ、父ちゃんがいつも見てると思って、父ちゃんに怒られない生き方してるつもりだよ。でもたまには見逃してくれな!」
なんて夢か現実か分からない世界で親父に話しかけてたら、朝になった。
イロイロ有るけど頑張らねーとな。
な、父ちゃん。