エルナは順調に回復していった。


ビンは愛娘にアンナと名付けた。


ヨンとウンスが退院前日に来た。


「アンナちゃ〜ん、ウフッ、エルナの

子供の頃にソックリ!」


「それを言うなら、マリン様は、

ウンス様の幼い時に瓜二つですわ!」


「マリンでいいわよ!これから、子供達

は、4人で仲良く遊ぶのよ?

エルナにウンス様って呼ばれるのも

何だか変だわ?だって、お義姉様

なのに。それに…凄く申し訳ないの。

レンちゃんを呼ぶのに力を使い果たして

私の魔法が使えなかったから…」


「何を言ってるんですか?レンちゃん

とお姉様達が来て下さらなかったら、

私もアンナも死んでました!

マイヤー夫人も、あの医術を書いて毎日

繰り返し、読んで、帝王切開に前向きに

なってるんですよ。」


「うん!私も頭に叩き込んだわ!

医師の免許を取ろうと思ってるの!

医術にも限界があるように、魔法にも

限界があるもの。」


「ヨン?どうだ?アンナは可愛いだろ?」


「ああ、うちのマリンも可愛いぞ!」


「嫁には、やらない事に決めたぞ!」


「兄上!俺も同感です!」


「全く〜、親バカなんだから!」


「ウンス様?嬉しい事ですわ。私達は、

幼い頃は、冷遇され、虐待までされて

いたのに、子供達は、こんなに愛されて

いるんですもの。」


「そうよね。贅沢よね。私には、

虐待される以外何もなくて、

エルナと出会ってゼロだった生活が

スタートしたのよ。」


「ウンス様!私もです!」


「皇后陛下?診察します!」


「あっ、はーい!」


「皇子様達も皇女様も、異常はなく、

スクスクとお育ちになっております!」


ウンスの診察をした。


「出血もありませんし、大丈夫です!」


コソコソと耳元で

「夜の方も大丈夫です!」と言った。


ドキドキした。


ヨンとビンは、庭園に子供達の遊び場と

皇宮内にも、子供達4人が遊べる

部屋を造る相談をしていた。

勿論、皇室教育は受けなければならないが

まだまだ先の話だ。

ノビノビと育って欲しいと思った。


「ビン様と皇帝陛下は、兄弟喧嘩など

した事は、あるのですか?」


「ああ、しょっちゅうしたし、一度

取っ組み合いの喧嘩をした事があって、

擦り傷だらけになって、ヨンが足から

血を流し、泣きながら家出したんだ。

あれは、ヨンが5才で私が8才の時

だったな?」


「そうでした。」


「まあ、ビン様!8才にもなって、

弟に危害を加えたのですか?」


「兄弟喧嘩と言っただろ?

それでも、父上と母上は、子供らしくて

良い!と言ってたが、ヨンを探すのに

大変だったんだ。」


「えっ?原因は?」


「私は色々と努力していたんだが、

ヨンは、努力しなくても何でもこなして

しまうから、チェスをしてる時に、

ちょっと、私がズルをしたんだよ。

兄さんは、ズルイって、食って掛かる

ものだから、つい大喧嘩になって

しまってね。」


「まあ、大人気なかったのですね。」


「ハハッ、だろうな。その後が大変

だった!僕は兄さんの本当の弟じゃ

ないんだ!って飛び出して、夜に

なっても帰って来なくて、騎士団まで

捜索に出る事になったんだよ。」


「えーーっ!大迷惑ですよね?」


「いや、私も帰って来ないヨンが

心配で大泣きしてしまってね。

父上と母上は、私達兄弟を差別した

事はないと言うし、警備は万全だから

城外には出ていないはずだと。3人で

探しに出たんだよ。」


「何処にいたのですか?」


「ロマネメビウスの木の裏側で、

泣き疲れて寝ていたんだよ。」


「そうでした。父上に叱られました。

ビンもヨンもアリシアが命懸けで

産んだんだ!お前達は、私とアリシアの

大切な息子達だ!って。」


「そうだったな。母上は泣きながら、

俺達2人を抱きしめてくれたな。」



「素敵なご両親だったのですね。

私は両親の記憶がなくて、お母様は

肖像画で見ましたが、お父様の顔は

知らないの。確か、キリアン・ジホール

と言う名前だったわ。」


「神殿で聞いて、探してみる!

公爵だったと聞いてるけど、王家と

関係が?」


「うん…お祖母様の弟の息子だった

みたい。従兄妹同士だったけど、

叔父夫婦には、子供が居なくて、

養子だったとか?あのユソーウルの王は

王宮に莫大な支援をしていた商団の

息子だったの。前国王は仕方なく、

婿養子にしたみたい。でも、お母様は

一度も夫婦の義務を果たさなかったって、

聞いてるわ!お父様と愛し合っていたから。」


「お義母様もお義父様も素晴らしい方

だと思うぞ?」


「うん!だから、権力争いとか、嫌なの。

お金と時間の無駄でしょ?」


「ああ、ウンスの言う通りだ。

もしも、アンナが皇帝に相応しいなら、

迷わずアンナを皇帝にするさ。」


「うんうん!」



夜になると、ウンスはチェミに

今夜は、子供達の事を頼みます!と言った。

チェミは、直ぐに察した様でニコッと

笑った。


2人の寝室にドキドキしながら行くと、

ヨンは驚いた顔をしていた。


「ウンス?どうした?」


「うん…今日は、ヨンと一緒に

寝ようかな…って。」


「それは、いいけど…」


「少し話しましょう。」

とベッドに腰掛けた。

まるで初夜の様にドキドキだった。


「あ、ああ」


「ヨン?ありがとう!」


「えっ?急にどうした?」

 
「うん…私、凄く幸せなの。

ユソーウルから、何も知らずに

此処に来た時は、適当に破談にして

貰おうと思っていたの。ヨンの事を

何も知らずに結婚する事になったから。

でも、私が恋しちゃった。」


「は?俺の方がずっと前から恋して 

いたぞ?」


「でも、2人が恋し、愛し合うのは、

ゼロから始まったでしょ?」


「まあ、そう言われればそうだけど…」


「今はね、メビウスの輪みたいに

無限大にヨンの事が大好きよ!」


「俺の方が好きだと思うぞ?」


「あのね…随分我慢させちゃったけど、

もう大丈夫だって…」


「えっ?」


「私…ヨンに沢山愛して欲しい…」


「今日は、寝かせないぞ?」


「うん!」


2人は、長い口づけをして

ベッドに雪崩れ込み、朝まで

愛しあった。


目が覚めると、当たり前のよう

愛する人がいる。

それは、2人にとって極上の幸せだった。

この幸せが永遠に続き、そして、

幾世を経ても巡りあい、愛し合う

2人の魂は一つなのだと、

目覚めて見つめあって、思ったのだった。


season1    完





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いかがでしたか?

こういったファンタジー系に

初めて挑戦してみました。

season2に繋がります。