「どこから話せば良いのか…

ロマネメビウスの木の伝説を

知ってるか?」



「はい!離れ離れになった恋人を

待ち続け、再会できたと言う話ですよね?」


「ああ、それよりもかなり複雑だが

あの大樹の側で待っていたのが、

こちらのチェ・ヨン殿で、戻って来た

のが、こちらのユ・ウンスさんだ!」


「私から話しましょう!私は高麗武士の

チェ・ヨンと申しました。」


「申しました?武士?」


「もっと、偉かったでしょ?民は、

大将軍とか将軍とか呼んでました。」


「まあ、そうだったが、王命に嫌気が

さし、高麗を捨て、今は650年先の世で

暮らしてます。他のヨン殿に合わせて

久々に武人の格好をしました。」


「な、何故?650年も先の世なのですか?」


「それは、ウンスが住んでた世界

だからです。私は、瀕死の王妃を

救う為に王命で、あの大樹とそっくり

な所にある天門を潜り、神医を

連れて来いと、ウンスを攫うように

高麗へ連れてきました。必ず帰すと

約束をして。王妃の首の傷を治し

約束通り帰すつもりでしたが、

地固めの為に、また王命で、帰す事が

できず、ウンスは高麗に留まる事に

なりました。」


「う〜ん。私も刀さえ向けられ

なければ、ワンチャン駆け込んで

逃げれると思ったわ。」


それから、高麗で起こった辛い話を

した。


「天門が開く日に会いたい方が居る

のでは?と言ってしまいました。

天門で待ち受けていたのは、話に

出て来たキ・チョルでした。争いに

なり、勝てると思いましたが、最後の

氷攻は、凄まじく、体が凍りつき、

倒れ、動けませんでした。

ウンスは、何とか逃げて天門を潜りました」


「その悪人は、どうなったのですか?」

騎士団の皆んなは、のめり込む様に

話を聞いていた。


「天門が拒みました。何度も何度も

氷攻を放ち、閉じてしまった時に、

氷攻が逆流して、凍りつき死にました。

ここからです!ウンスが天門を潜り、

そこから、幾つもの枝ができたのです。

ウンスは、私を助けようと、病院で

必要な薬剤や色々な物をかき集め、

走って戻り、また天門を潜りました。

しかし、辿り着いた場所は、元いた高麗

より、100年以上も前だったのです!」


「えっ!どうしてですか?」


「あの時、太陽黒点の爆発が起きて

思った以上に時空が歪んだのか…

何かが足りなかったんだわ。」


「何かとは?」


「う〜ん。この人を信じる気持ち?

愛する気持ち?自分の世界を捨てる

覚悟?色々あったのかもしれません!」


「そう!私もウンスさんと同じく

100年前に飛ばされたわ!でも、全く

別の世界だったの。」


「天門までの記憶は、大体の俺達が

一緒ですが、その後の世界は、

それぞれが違うんです!」


「私はね、攫われる3日前に戻ったの。

だから、ヨンが来る事もわかっていたし、

高麗に、行ったら、それから起こる事も

全部知っていたの。でも、3日前と

知るまでは、天門も閉じていて、

詰んだかと思ったわ。」


「えっ?えっ?では?ヨン殿も?」


「いえ、一度経験した記憶が、天門で

全て消え、其処の枝は終わりました。」


「うん。何も憶えてなくても、

私が知ってるから、ウダルチの仲間や

チャン侍医を死なせない事もできると

思ったし、自分に起こった危険も

防ぐ事ができたわ。王様も聖君に

なられたわ!」


「しかし…憶えていないのに2人は?」


「ウンスが天門を潜る時、

時を戻してくれ!と願ったのです!

時が戻りましたが、前世と言うので

しょうか?その記憶が少しずつ

戻り、ある日、完全に思い出しました。」


「おおーーっ!」


「100年前に飛ばされた私は、其処で

身を潜めながら、次に天門が開く日まで

待ったの。1年後にやっと戻れた時、

ヨンの高麗は4年も経っていたの。」


「ええーーっ!」


「ただ戦に明け暮れ、暇を見つけては、

大樹の側で帰りを待っていました。」


「どうしてですか?戻ってくるという

確証はあったのですか?」


「何年、何十年経とうと待ってました!

しかし、私はまだマシな方です!

こちらのヨン殿は、6年待ちました!」


「ろろろ、6年?」


「それぞれなんです!私とウンスは

天門へ行く前の日に結ばれました。

こちらのヨン殿達は、結ばれていません。

その為…100年前でウンスは、レンを

産みました。側に居てやれず、まさか

自分の大切な愛息子が居るとも知らず…

他の俺達の子供もそうですが、

内攻を持っていますが、レンは、

特別なんです!この来れる事も察知する

事も困難なサンダー大帝国は、全く

次元が違う場所なのですが、ある日

突然、レンが夢に見たと。レンの夢に

偽りはないのです!私達は、

ウンスと強く結ばれたおかげで、

門を開く事ができます!ヨン皇帝が

力を増したのも、ウンス皇后のおかげ

だと思います。」


「他にも居るのですか?」


「沢山の枝があり、行き来してます。

それぞれの世界は異なります。

中には、2人で100年前に行ってしまい

戻って来た2人。天門を潜らず、

一緒になった2人が何組か。

ただ、不思議な事に、動かぬ体なのに、

地面を這い、天門まで行った俺を

見たのです!その2人は、ウンスの

世界で暮らしています。逆のパターンも

あります!ウンスが俺と王と私兵の

テマンを叱りながら、ウンスの時代に

連れて行き、鍛え直したと言う強者

ウンスや、戻って来たら、王命で

婚姻させられましたが、夫婦として

暮らした事が一度もなかったヨン殿。

ただ、ひたすらウンスの帰りを

待っていたのに…戻ってきたウンスは

その事を受け入れずに命を絶ちました」


「マジですか?本当に夫婦の義務は

果たしていなかったのですか?」


「はい!その枝のヨン殿も直ぐに

後を追いましたが、生まれ変わって、

一緒になり、王命の婚儀を覆したのです!

そこの枝は、変わりました。

しかし、死を選んだ2人の枝は、終わり

生まれ変わって新しい枝になりました。」



「で、では…皇帝陛下と皇后陛下は、

結ばれる運命だったと?」


「異次元であろうと、そうなのだと

思います!ただ、レンが居るので、

この世界に来れました。

無数の枝とは違いますが、

無限大…メビウスの輪の中の世界に

なったのかと…」


「物凄く不思議ですが、実際に目の前に

居るのですから、疑う余地がありません!」


「うふふ、ほんと、チュンソクさんだわ!」


「は?我々と同じ者も?」


「そう!ウダルチにね。其処の6人が

いるわ!」


「あの…その刀とやらで、お手合わせ

お願いできますか?我々6人と皇帝陛下は

ソードマスターです!」


「俺達は、力は、同じなので、

手合わせくらいならいいですよ。この

部屋は広いので、あちらで!」


勝った!と思った騎士団の6人だ!


チュザレ、ソクチュ、トック、ナマンテ、

トック、チモルを一瞬で鬼剣で剣を

飛ばしたヨン達。


「す、凄い…団長も是非!」


「まさか!この方々に勝てるには、

また十年早い!生きて来た重みが

違う!わからないのか?訓練場へ行け!」



「は、はい!」


「あっ、血を抜いた人は、あまり

無理しないでね?それと、今日は

お肉を食べさせて下さい!」


「はい!わかりました。今日は姪っ子も

産まれた良き日です!ご馳走にします!」


「長居しちゃったわ。ウンスさんも、

問題なさそうね?エルナさんは、

今日は痛むと思うので、この点滴を

置いて行きます。抗生剤と強い痛み止め

が入ってます!それでも痛むようなら、

こちらを打って下さい!薬剤と器材は

少し多めに置いて行きます!

あっ!毎日、この液をこのガーゼに

つけて、消毒して下さい!抜糸は

十日後にして、退院は、2週間後です!」


「は、はい!」


「マイヤー先生?清潔が何よりも

大切です!落とした布は捨てるか、

お湯でグツグツと煮て下さい!医療

器具もです!」


「は、はい!」


マイヤー夫人は、頂いた物を綺麗に

しまい始めた。




「一つ伺ってもいいですか?何故?

こちらの言葉がわかるのですか?」


「それ!それなのよ!不思議とわかるし

話せるし、きっと神様が与えてくれたと

思いましょう!」


レンは、エルナのお腹に手をあてて、

ずっと内攻を送っていた。


「とおしゃま…レン…おねむ… 」


「そうか!頑張ったな!おいで!」


レンはヨンの懐に入った。


「それでは、またいつか。」


ゾロゾロと光りの中に消えたのだった。







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次回で「ゼロから始まった恋」season1は

終わりますm(_ _)m