朝議の日…



今か今かと待たされる者達。


男爵は、娘が聖女だと、侯爵や子爵達に

ふれ回った。


バターン!


扉が開き、いつもより大勢の騎士団が

入って来た。

それに続き公爵夫妻が入り、

大公殿下は、エルナを抱き上げて、

入ってきた。

そして、皇帝陛下も皇后を宝物を

抱えるように入って来た。


「輝く太陽光り輝く星、護り神の

皇帝陛下にご挨拶申しあげます!」


ヨンは目も合わせず聞いていない!

「ウンス?座れるか?」


「ええ。大丈夫ですわ。」


大公夫妻も皇帝夫妻もここぞとばかりに

仲の良さを見せつける。


「こ、皇帝陛下!!こちらが、聖女

である我が娘、ノグルでございます!」


「ウンス?この面倒が終わったら、

温室でブルーローズを眺めながら、

皆んなとティータイムだ!」


「うわっ!楽しそうね?」


「ウンスが楽しいのなら、何でも!」チュッ



「皇帝陛下!!」


「あん?なんだ?うるさい奴だな?

何か申したか?」


「え?あの…私の娘です!」


「ノグルでございます。」

気が強そうだが、美しい娘だ。

が、皇帝は、見ようともしない。


「皇帝陛下!お逃げになるのですか?」


ギロリと鋭い眼差しを向けると、

皆んなが後ずさった。


「ふむ。何故?逃げねばならない?

聖女だと?そなたに用はない!

それより、大神官よ!

そなたは、謀反を企てているのか?」


いきなり話を振られて狼狽える大神官。


「えっ?ま、まさか…滅相もございません」


「全員まっ黒ね!」


「聖女が現れるという神託は、

私は、聞いておらんが?どう言う事だ?」


「あっ、いえ、敢えて話さなかったので

ございます。皇帝陛下がご成婚された

ばかりでしたので…。」


「しかし、それを何故、ジェヨンユ男爵

が知っておるのだ?」


「さ、さあ?神官がもらしたかも

しれません。」


「なる程、神殿とは、そのように

大神官も把握できぬ程、腐りきって

いると言う事か?」


「陛下!それは、神への冒涜かと…。」


「では、聖女が現れたと申すのか?

そして、神への冒涜?大金に目が眩み、

平民の礼拝や洗礼、祝福もしないとは、

それこそ神への冒涜ではないのか?」


「そ、それは…陛下の勘違いかと…

確かにノグル様は、

流行り病を聖水で治しました。」


「そ、そうです!我が娘ノグルこそ、

聖女なのです!」


「高熱がでて、発疹。乳幼児にしか

かからない病とは、突発性発疹では、

ありませんか?生まれて初めてかかると

いう、ごく一般的な症状で発疹が出て

4日程で治ります!発疹が出たならば、

ただの水でも治ります!」


「皇后陛下は、医者ではありません!

勝手な憶測は、如何なものかと…」


「アレク?どうなのだ?」


「はい!皇后陛下は、医学にも精通して

おります!その通りでございます!

突発性発疹で間違いないです!」


「いいえ!娘は聖女でございます!」


「大神官?そうなのか?神殿も浄化

したはずだが、まだまだ腐ってる

ようだが?」


「聖女様だと思います!」


「だと?ならば、この傷を皆の前で

治してみろ!」


ヨンは、手の平に短剣で、

傷を付けた。

ダラダラと血が落ちた。


「キャッ」


「そこまでしなくても、いいのに。」


「さあ、そこの娘!聖女ならば

簡単であろう?」


「ワ、ワタクシは、病だけを治せ…」


「ふざけるなっ!!」


「ヒッ!」


「皇帝陛下!神殿の隠し部屋に、

大量の宝石と金貨が隠されておりました。」


黒の騎士団が大量の財宝を根こそぎ

持ってきた。


「ヨイッショ、流石にお腹が重いわね。

ヨン!手をみせて。」


ウンスが、手をかざすと、星型の刻印が

光り、パァーっと眩い光に

包まれたと思ったら傷が綺麗に消えた。


「聖女様だ!」

「皇后陛下は聖女様だ!」


他の者達が目の当たりにした光景で

ざわめく中、沢山の神官達が入ってきた。


「リシャール大神官?」


「ウンス様!やはりアリシア様の聖女と

言う血を受け継いでおられましたか。」



「今日より神殿を綺麗にする!

ユソーウルの神殿は、この国より

優れておった!我が国の民となった

神官達を新しく任命する!

騎士団!戯言と欲に目が眩んだ、

この者達を牢に入れよ!」


「ワタクシは、ただお父様に言われた

通りにしただけで…」


「そなたは、皇后が身重と言う中、

心労をかけたのだ!」


「お父様が…夜はお困りのはずだと…」


「生憎、一日中困っておらぬ!

大公も私も妻だけを愛でておる!」


「全く、見下げた奴等だ!皇后陛下も

うちの娘のエルナも、毎夜離して

貰えず、見ろ?首元に赤い愛の刻印が

沢山だ!陛下と大公は皇后と大公夫人

以外は目に入らないのだ!

お前達は、平和呆けしてるのか?

ソンゲールの残党が攻めて来た時、

船を飛ばしたのは、皇后だ!そして、

粉々にしたのは、皇帝だ!」


「見ました!あの物凄い光りを!」



「皇帝と皇后に感謝しながら生きろ!

ジェヨンユの一族と神殿の者は、

皇帝と皇后を愚弄した罪を軽いと

思うな!流刑では済まさぬぞ!

海に首を流される覚悟をしろ!

他の者達も、邪な心が芽生えたら、

同じだ!いいか!!」


「は、はい!」会議に来ていた高位な

者達が平伏した。


そして、力なく崩れ落ちた大神官と

ジェヨンユ。


「我々は、サンダー大帝国の一民とし、

神に仕える事を皇帝陛下と皇后陛下に

お誓い申し上げます!」


「神殿の浄化は済みました。

リシャール大神官!宜しくお願いします」


「ウンス様…いえ、皇后陛下!

勿体無きお言葉を賜り光栄でございます!」



ジェヨンユ親子と神殿関係者全員が

騎士団に連れて行かれた。


「全く、神殿が悪の根源になるとは、

恥ずかしい限りだ!しかも、ウンスに

敵う聖女等、居ない!皆に言っておくが、

政務は滞っていない!今回の神殿に

加担した者は、騎士団が持ってきた

帳簿で明らかになる!」


「皇帝陛下!恥ずかしい限りですが、

息子が病にかかり、動く事も

困難なんです。すがる思いで神殿に

大金を払い、聖女と名乗る者の

聖水を飲ませましたが、一向に良く

なりません。」


「症状は?」


「それが、少し動いてもドキドキと

して、目がチカチカとし、

メマイもすると…。

ひと月程前にアカデミーで喧嘩になり、

腕に深い傷を負い、血が大量に出ましたが、

町医者に診て貰い、傷はすっかり

良くなったのですが…」


「出血は?どの程度?」


「はい…思いの他多く、気を失いました。」


「貧血ね!」

「皇后陛下!私もそう思います!

直ぐに伺います!」


「アレク侍医!コレを飲ませてあげて!

1日3回、3粒づつ!」


「しかし、これは、皇后陛下の貧血の

薬ではないですか!」


「大丈夫よ!沢山あるから!」


「かしこまりました。」


翌日の新聞は、前代未聞の神殿による

大失態がかかれ、聖女を仕立てあげた

事に国民の怒りもかった。


アレクが持って行った薬で、

難なく楽になった青年は、

皇后陛下こそが聖女様だと思った。


臣下達は、皇后陛下の身体を気遣い、

目の当たりした光景は、

言わなかったが、真の聖女様は、

皇后陛下であり、この国は、これから、

皇帝陛下と皇后陛下がいる限り、

どんな困難にも打ち勝てると思ったの

だった。


新しくなった神殿内は、貴族も平民も

関係なく、平等に礼拝ができるように

なったのだった。

しかし、修道女として生きると決めて

精進していたメヒルが姿を消したのだった。





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まだ懲りない女が一人…