翌日は、街も大騒ぎだった。


不気味な真っ黒な船が近付いて来た時、

光りを放った姿は、黒騎士団の団長の

姿だった!やはりこの国の護り神だ!

美しく聡明な皇后を娶ってから、

更に力をつけた皇帝を崇めた。

どうやら、皇帝の姿しか目に入らなかった

ようだ。


ヨンとビンは相変わらず、

訓練をして、執務室に寄り、

ジークフリード公爵から変わった事が

なかったか、魔獣の森から出た、

金、銀、白金や宝石の採掘者や、

加工技術者を高い賃金で雇う事を

話し合い、細かい書類はジェイに

頼み、部屋に戻る毎日が続いた。


ウンスとエルナは、ミルクのあげ方、

紙オムツの仕方をメイド長のチェミに

教えた。驚いたメイド長には、

異国から手に入れた言った。


それは、保育器も同じだった。

いや、それ以上にマイヤー夫人は、

その仕組みに驚き、一番心配していた

低体重の赤ちゃんには必要な物だと、

喜んだ。


ウンスもエルナも順調だったが、

8ヶ月も半ばのお腹は、かなり大きく、

動くのも一苦労だった。

そんな時、朝議を開いてほしいと

ジェヨンユ男爵が言ってきた。


ジェヨンユが自分の領地の神官を

連れて来た。


「何かあったのか?」



「はい!皇帝陛下!突然、神託が

下ったのは、ご存知ですか?」


「それが?」


「実は、我が領地で、幼子が熱病に

かかり、小さな斑点が体中に出るという

流行り病が発症しました。痙攣をおこし、

命を失くす子もおりました。

しかし、我が家の末娘ノグルが、

その病を治したのです!それで、

神官の所へ行くと、数ヶ月前に、

このサンダー大帝国に聖女が

現れる!と神託が下ったと聞きました!

我が娘こそ、聖女でございます。」


「なるほど、その病状は?」



「はい!高熱が3、4日程出た後に、

赤いブツブツが出るのですが、

娘が願いを込めた聖水を飲ませると、

4日程でブツブツも消えて、元気に

なりました!正しく聖女でございます!

サンダー大帝国では、聖女が現れたら、

皇帝の伴侶にと置くと伝えられてます!

皇后陛下と縁を切り、娘をその座に

置くべきかと思います!しかし、

皇后陛下は身重なので、ぜひ、皇妃に

お迎え下さい!」


「神官!神託が降りたのは、いつだ?」


「はい!確か、皇帝陛下が魔獣討伐に

行く前に、神殿で…。大神官様も

知っております!」


「そうか。しかし、法で決まっておる!」


「しかし、聖女です!そこは、皇室なら

国民も認めるかと思います!」


「そうか。明日、この場に娘を連れて

来るが良い!」


「はい!皇帝陛下も気に入るかと

思います!」


朝議が終わると…


「あの男は、何がしたいのだ?」


「兄上!欲深い男です!これ位の事は

想定しております。その神託とは、

ウンスの事でしょう。勘違いにも

程がありますが、少し痛い目にあって

貰います!」


その日の夜、大公夫妻と公爵夫妻も

交えて麒麟の間で晩餐を行なった。


「ウンスや、明日、朝議に出れるか?」


「えっ?何?何かあったの?」


「実は、今日、ジェヨンユ男爵と言う

欲深い男の娘が聖女だと言い出した。」



「あっ、国の歴史を読んだけど、

聖女は、皇后か、皇妃に迎えなければ、

ならないってやつ?その聖女と言う人は、

何ができるの?」


「それが、大金を払ったのであろう。

神官が聖女が現れると言う神託が

下ったと言い出した。それは、魔獣討伐の

前あたりだから、ウンスの事だ!」


「そうですわ!ウンス様しかいません!」


「話しによると、男爵の領地で、

幼子が熱病にかかるのが、流行り、

それを願いを込めた聖水で治したと

言い出した。」


「ヨンは…それを信じたの?」


「まさか!俺は、ウンスの力を知ってる!

その不敬な親子を懲らしめたい!」



「どんな症状なの?」


「高熱が3日程続いたあとに、赤い

ブツブツが出る病らしい。ブツブツが

出た頃に聖水を飲ませたら、

4日程で治ったと言ってたな。」



「幼児、高熱、発疹…それって、

突発性発疹だわ!乳幼児が、初めて

かかるものよ。熱性痙攣さえ、

気を付ければ、自然に治るわ!」



「全く、知識のない男だねぇ。」


「それでだ!前にベトルの傷を

治しただろ?其れ位の力は、

大丈夫か?」



「うん。あれくらいならいつでも。」


「明日の朝議で見せてくれないか?」


「いいわよ!でも、その男爵って、

何が目的なの?」


「爵位だろうな。男爵では、物足りなく

思ったんだろう。皇妃に迎えろと

言って来た!そう言う奴は、

懲らしめないと。」


「皇室と婚戚になればってやつ?」


「身重で心を痛めさせるかと思うと

やりきれないが…」


「その程度は、想定内よ!夜のお世話

をしたい!とか、来るかもね?って、

エルナと話していたの。」


「えっ?」


「だって、いくら平和になっても、

欲深い人の本質は魔法で浄化しても、

断ち切れない人もいるわ。

まして、皇帝や大公の王室の血縁者と

何としても婚戚になりたいと思う

それなりの家系や憧れる女性だって、

出てくるはずだと、エルナと話して

いたの。」


「姫!私達は、決してエルナや姫を

裏切ったりしませんよ?」


「わかってます!だったら、ちょっとした

茶番も交えて、その男爵一族を

懲らしめるのも、いいかな?って。

それと、大神官を呼んで下さい!

まさかと思うけど、神殿が権力を握って

神聖帝国にしようと企ててる可能性も

あります!」


「いや〜、流石だな?おい!ビンもヨンも

そこまでは、思いつかなかっただろ?

神殿は、何かと高価な物を要求する!

最近は、平民が祈りに来るのも、

嫌がる神官がいるらしい!それを

大神官の耳に入っているかも疑問だ!」


「それならば、納得がいきます!

平和すぎるゆえの欲望は、必ず出てくる

と、懸念してました。大神官にも

罪を問う事にしましょう。

ユソーウルの大神官は、ウンスを

崇めていました。いっそ、首をすげ替える

のも、良いかと思います。」



綿密な計画を立て、

その夜は、充分に気を補い合い、

翌日の朝議に備えた。





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神託とは…神のお告げです。

西洋物は初めてなので、学ぶ事も多いです。

個人的に無宗教なので、皆様の中にも、

謎に思う事が多いでしょうが、

皇室と神殿は、結びつきが強いと

いう事です。