翌日は、皇室内で、大神官を連れて来て

ビンとエルナの結婚式を身内だけで

行なった。

エルナを捨てた両親は、エルナが王宮で

メイドをしている時に、弟の薬代まで

せびりに来た。

しかし、家が火事になり、全員

亡くなってしまった。

ウンスが本当の家族以上の支えになった

のだ。



エルナは、純白のウェディングドレスに

アクアマリンを散りばめた豪華な

ドレスに負けないくらい綺麗で、

ビンは釘付けになった。

誓約書にサインをして、指輪の交換を

して、誓いの口づけをした。


「エルナ!おめでとう!ヒック」

ポロポロと嬉し涙を流す皇后陛下と

抱き合って泣いた。


正式な夫婦となった2人だったが、

結婚の事も妊娠の事も安定期に

なるまで秘密にする事にした。


ヨンとウンスもだ。


2週間の休暇で新婚旅行に行こうと

計画していたが、ウンスの身体を

気遣って、皇宮で過ごす事にした。

護衛に付いていた騎士団も部屋に

籠もりっきりの両陛下は、新婚旅行に

行かないのか?と気になっていた。



ウンスから充分に気を分けて貰い

元気なヨンは、部屋で、ウンスに

魔法陣の事を聞いたり、ソンゲール帝国が

どの様な状態だったか、話は、

尽きなかった。

食事に行く時は、ウンスをお姫様抱っこ

して麒麟の間に行ったり、部屋に

運んで貰った。

ヨンは、トイレにまで付いてきた。

何かあっては、大変だ!と

ひと時もウンスの側から、

離れなかった。


ビンも同じだった!

妊娠初期のエルナを気遣い、

離れなかった。

エルナは、悪阻が少し始まった。

メイド達には、箝口令が出されていた。

ビンはスプーンやフォークも持たせず、

食べられる物を切り分けて、エルナに

食べさせた。

メイド達もそんな姿を微笑ましくも

羨ましくも思った。


2週間の休暇はあっという間だったが、

4ヶ月に入るとウンスのお腹が目立って

きた。厚着をして湖に散歩に行って、

大樹の木の元でピクニックしたりした。


「ウンス?この木には、不思議な力が

あると言う伝えがあるんだ。」



「うん。何だかとても居心地がいいし、

とても強い想いを感じるわ。」


「連理之枝と言って、元は2つの根が

大きくなるに連れて枝が一緒になり

離れられない1つの木になったんだ。

離れられない程、仲睦まじい夫婦の

事だそうだ。俺達みたいだな?

言い伝えでは、離れ離れになってしまった

2人が居て、男がこの木の元で、ずっと

待ち続け、数年後に再会できて、

幸せに暮らしたと言う話なんだ。」


「どうして?離れ離れになっちゃったの?」


「それが…悪人から逃げる為に、不思議

な光りに逃げ込んだと言う事だが?」


「恋人は?側に居なかったの?」


「魔法なのか?内攻なのか?凍らされ

動けなくしてしまったとか?」


「その悪人は?」


「その光りを潜れずに、魔法が

自分にはね返り、氷漬けになって

息絶えた。」


「えーーっ!恋人は、大丈夫だったの?」


「ああ、降り出した雨が助けたようだ。

それで、その光りは時空の歪みで

彼女を遠い世界に送ってしまい。光りは

消えてしまったんだ。」


「マジ?何だかわかる気がする!

その彼女は、また光りが現れるのを

待ってたのでしょう?」


「ああ、そうだ。それに彼は、

この木の元で彼女が戻って来ると

信じて、待っていたらしい。時空の

歪みなのか?彼女には、1年で、彼は

4年も待っていたそうだ。」


「うわぁ〜、凄いロマンスね!2人は

とても愛し合っていたのね?だから、

切ない想いも温かい想いにこの木が

変わったのね?でも、待って!それって、

前に言ってたヨンの夢にそっくりじゃない?」


「ああ。幼い頃、父上と母上と兄上と

こうやって、この木の下で、よく

ピクニックをしたんだが、その時に、

母上が話してくれたんだ。大切な人が

できたら、此処で話してあげるのよって。

ロマネメビウスの木と言うんだ。

その話を聞いたからなのか?

いつ頃かわからぬが、あの夢を見る

ようになったんだ。今思うとまるで

俺達の話みたいだなと…

この大樹は、

2人の愛は、永遠で生まれ変わっても

巡り合い、無限に続くと言う伝説の木

なんだ。」


「すっごいステキな物語ね?」


何気なく木に触れた。

「暖かいわ…えっ?」


「どうした?」


「うん…今ね、不思議な恰好をした

私とヨンが木の下で見つめ合ってる

風景が見えたの。」


「何処に居ても一緒になる運命なら、

遠い昔に俺達は出会っていたかもしれない!」


「遠い昔?そんな感じがしなかったけど、

ヨンだったわ!」


「そうか…俺達の木だったのか…

寒くなって来たようだ。戻ろう!」


「ええ。休暇もあっという間だったわね?」


「旅行に行けなくても、ウンスと沢山の

話ができた!それに暫くは、魔獣討伐も

外交にもいかない!明日は、兄上の結婚

報告だから、街中大騒ぎだな。」


「エルナに暫く会ってないわ…あっ、

結婚報告は、安定期に入ってからじゃ

なかった?」


「兄上が明日、仕事が終わるまで、

こちらに連れてくるであろう。朝から

貴族会と爵位会との会議だ!

安定期になれば、目立ってくるだろ?

明日は皇后陛下の懐妊と兄上の

結婚報告だ!」


「それって、毎日あるの?」


「いや、問題が起きた時くらいだが、

明日は会議の後は、執務室長に

2週間分の国の内政も聞かねば…

兄上も休んでいたからな。

ああーーっ!面倒だな?」


ウンスを抱き上げると、皇宮に

戻った。





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エルナとビンの結婚式も無事に

終わりました。


伝説の大樹…ロマネメビウスの木が

出て来ました。