「ウンス様!」

「姫!」

「皇后陛下!!」


「大丈夫です!ウンス様は、毎日

強く願っておりました。恐らく力を

加減できずに疲れてしまったのです!

昔からこうなると、3日は眠って、

何事もなかったように、目覚めます。

今、皇后が倒れたと噂が広まれば、

ウンス様が心を痛めるでしょう。」


「侍医は?呼ばなくてもいいのか?」


「私が研究して作った薬湯があります!

倒れた時は、それを飲ませていました。

明日には目覚めると思います!

御身体を害する事はありません!

倒れて皆様にご迷惑をかけたと知ると

ウンス様が申し訳なく思うでしょう。」


「わかった。エルナ?直ぐに薬湯を。

もしも、明日になっても目覚めなければ

侍医を呼ぶ!」


「はい!」


エルナは薬湯を用意してくると、

ウンスの体を少し起こし、小さい

スプーンで少しずつ薬湯を飲ませた。

手慣れたものだった。


丸一日眠って、目覚めた。


「あっ!またやっちゃった?」


「ウンス様!あれ程願ったのです!

倒れてもおかしくないですよ?」


「はっ?何日寝てたの?」


「昨日お倒れになって、丸一日

グッスリ眠っておりました。」


「エルナの薬湯のおかげで、3日は

寝込まなくなったわね?

あっ、願わないと…」


「皇后陛下!今日一日は、ゆっくり

休んで下さい!」



「チェミメイド長?皇帝陛下が

戦っているのです!皇后である私が

何もせずには、いられません!」


「全く!2人共、頑固ですね?

皇帝陛下も、昔、部下を庇って、

お腹を刺された時は、翌日から、

魔獣討伐に出掛けました。」


「あの傷が?」


「そうでございます。侍医が止める

のも聞かず見事に討伐して来ました。

しかし、無理は禁物です!皇帝陛下が

お戻りになった時には、元気な姿で

お迎え下さい。」


「ええ、ありがとう。チェミさん!」


「チェミでございます!食事も

忘れずに!」


ウンスは、また願い始めた。



翌日、執務室にジークフリード公爵が

慌てて来た!


「おい!ソンゲール帝国が消えたそうだ!」


「叔父上?どういう事ですか?」


「あの国に密偵を送っていたのだが、

大雨やら暴風雪の繰り返しで、

国もボロボロになり、雷続きで、

城も領地も倒れ、船で逃げようと

した時に、有り得ない閃光が国を

直撃して地底に沈んだそうだ。

さっき、鷹が飛んで来たんだ!」


「ファルコンですか?」


「ああ。それより、ヨンは?何故

まだ帰って来ない?」


「流石、叔父上!既にスパイを

潜入させていたのですね。

最後の閃光は、たぶんヨンです!」


「なんだってぇ〜!姫は知ってるのか?」


「いえ、その有り得ない気象現象は、

姫の願いだと思います。ヨン達、

精鋭部隊は、あっという間に魔獣討伐

しました。騎士団がヨンと姫の事を

思って、ソンゲールまで行って

潰そうと提案したそうです。」


「姫は?大丈夫なのか?」


「実は、つい最近力を使い過ぎ、

倒れてしまいましたが、エルナの薬で、

目覚めました。

あのヨンです!あと3日とかからず、

戻ってくるでしょう。」


「エルナは?」


「姫と一緒に願ってます。」


「ソンゲールは、消えたから、

もう願わなくて良いと伝えないと。」


「そうですね。一緒に行きましょう。」


雷神殿の皇后陛下の部屋の前まで

来ると、チェミがお茶を持って来た。


「大公殿下様、ジークフリード公爵様、

お願いが御座います。」


「チェミ?どうしたのだ?」


「皇后陛下は、お元気になられましたが

あまり、食べないのです。願う事に夢中で

食べる事も忘れているのです。

どうか、少しでも、多く食べるように

言って下さいませんか?」


「ヨンの事が心配なんだろう。

大丈夫だ!もうすぐ帰って来る!」


「本当ですか?あれ程熱心に

願いを込めていたので、我々使用人も

願わずには、いられませんでした。

不思議な事に全員です。皇后陛下は、

とてもお優しい方でございます。」


コンコン

「姫?少しよろしいか?」


「あっ、はい!お義兄様!エルナを

迎えに?」


「いや、叔父上から話があるようだ!」


「叔父様!」

「お父様!」


「姫や。何を願っていたんだい?」


「はい。皇帝陛下の無事と、

ソンゲール帝国が衰退するように…。

なぜか?風景が氷河期のように見えました」


「そうかい。その通りになったようだよ?

ソンゲールは、ヨンのとどめの雷攻で 

地底奥底に沈んだと忍び込ませていた

密偵から鷹が手紙を持って来た!」


「えっ?どうしてヨンが?ソンゲールに?」


「姫、それは、私が伝えなかった。

ナマンテが魔獣討伐が思ったより早く

終わり、黒騎士団の精鋭達が、

ソンゲールを倒しに行こうと提案した

と伝えに来たんだよ。」


「でも…行くのに3週間は、かかると…」


「黒い騎士団の精鋭達だ!1週間で

着いたはずだ!そして、ヨンは、

あと3日とかからず戻ってくるだろうよ」


「本当ですか!!ヨンが?」


「ああ、だから、もう願わなくて

いいんだよ。姫の事を聖女だと言った

大神官と神官には、ユソーウルで

どれだけ苦労をして、魔法陣を

完成させたか、その魔法は長時間

続けると皇后陛下の命に関わると

誤解を解いておいたから、気に病む

事は、ないさ。」


「姫?食が細いと聞いたが、ちゃんと

食べて、眠って、ヨンの帰りを

待ちなさい!」


「はい!ありがとうございます!

お義兄様!叔父様!」

「お父様!ウンス様は、とても食べる

のですが、何かに夢中になると、

食べる事も忘れてしまうのです!

でも、今日から、沢山食べれます!」


エルナと手を取り合って、

子ウサギのようにぴょんぴょんと

喜ぶ2人だった。






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願いが叶いました。

ウンス!もうすぐヨンが帰ってくるよ!