グスッグスッと泣いてるウンスを

抱き上げて、寝室へ向かう途中、


「どうされましたか?皇后陛下が?」


「ああ、チェミ!ちょっと行き違いが

あったようだ。」


「では、皇帝陛下が謝って下さい!

それと、パーティーでは、何も

召し上がってなかったようです!

お食事が用意できております。」


「ああ、わかってる。悪いのは俺だ!

すまないが、食事は寝室に運んでくれ!

明日も明後日もだ!」


「はい。しかし、皇帝陛下!

睡眠も忘れずに…」


寝室に入るとそっとベッドに

座らせ、目の前に座り、ウンスの

手を取った。


「そんなに泣いたら、腫れるぞ?」

「だって…」

「ウンス?俺はウンスを愛してる!

6年前からずっと。この想いは、

生涯変わらない!ウンスは、ただ、

俺の愛する人だ!迷惑なんて言葉が

出るとは思っていなかった。

俺は自分の愛する人を誰にも

とられたくないんだ!ウンスは、

違うのか?」


「やだ…ヨンが他の女の人…と…やだ…」


「俺は守ると決めたら守る!

信じられないか?ん?」


「うん…ごめんなさい…」


頬を包んで、チュッとキスした。


「皇帝陛下!お食事をお持ちしました!

皇后陛下には、沢山召し上がって

貰わないと駄目です!」


寝室のテーブルにチェミが、

沢山のご馳走を並べて下がった。


「ほら?ウンス?俺も腹が減った!

一緒に食べるぞ!」


ヨンは、ウンスの口に肉や魚を

運んで食べさせた。


「ヨンも食べて…」


2人は、パクパクと食べた。


「ワインは?」


「水でいい…」


一息ついてから、ドレスを脱がせ、

2人で風呂に入った。

綺麗にウンスの体を洗い、

髪を洗ったヨン。

タオルで、丁寧に拭いて、ベッドへ

抱いて運んだ。



一方、ビンは、離宮までエルナを

連れて行くと、まずは、離宮のメイドが

食事を運んで来た。


「エルナ?沢山食べなさい!

人間には、三つの欲があるらしい。」


「三つですか?」


「食欲と睡眠と性欲と聞いた。」


「ビン様にも性欲がお有りですか?」


「勿論だ!エルナを誰にも渡したくない

今すぐ、自分のモノにしたい!と

思っている。」


「えっ?」


「エルナが姫を大切に思っている事は

わかってる!私の事は、嫌いか?」


「いえ…そうじゃないんです…。

ウンス様と過ごした日々が長く、

どんなに辛くても、2人で笑って、

乗り越えてきたんです。絆?と

言うのでしょうか?」


「私の努力が足りなかったようだね?」


「ビン様は…30才です。女性との

関係もあったと思います。私なんかより

素晴らしい方がいらっしゃると思って…」


「どうしてだ?…私にはエルナしか興味が

なかったし、第一王子としての責務が多く、

遊ぶ暇はなかったんだよ。

縁談も沢山あったけど、昔から

夢に出てくる女性を探す事しか

考えてなかったよ。」


「私は大公様の妻に相応しいでしょうか?」


「やっと見つけたんだ!亡くなった両親

にも、私には心に決めた女性がいる!と

話していたから、喜んでいると思うよ?」


「でも…ウンス様は?」


「ヨンは、姫を必ず守るよ!私と

同じく長年の想いが叶ったのだから。

姫が聖女だと言う事は、

まだわからないし、例えそうでも、

ヨンが手放さないと思うよ。」


「ウンス様は、聖女じゃありません!

どれだけ努力してきたか、私が良く

知ってます…」ポロポロと泣き出した。


ビンはソッと抱きしめた。

「困ったな…今日は、エルナを

帰せそうにないな…」


そのまま、抱き上げて寝室に運んだ。



ヨンとウンスは

それから、2日間は、寝室で過ごした。

チェミが運んでくる食事も沢山食べた。


そして、魔獣退治の出発の日を迎えた。


ズラーッと並ぶ騎士団。


「いいか?1週間で片付ける!」


「はいっ!!」


泣かないと決めていたが、

ハラハラと涙が溢れたウンスだ。


振り返るとヨンは側にきて、

ギュッと抱きしめた。


「直ぐに戻る!」

「うん…怪我しないでね…」

「ああ。」


「皇帝陛下!皇宮の護りは、

お任せ下さい!」


「頼んだぞ!」



隊列に戻ると愛馬のライズに乗って

先頭に立ち、皇宮の城門を出た。


エルナは、ウンスの手を握っていた。

「ウンス様!ビン様も私も居ます!」


「そうね。私もやらなければいけない

事があるわ!その前に聞かせてもらうわ!

エルナ?お義兄様と結ばれたでしょ?」


「えっ!あっ、えーっと…ウンス様に

隠し事は通用しませんね…」


「だって、何だか大人の女って感じが

して、艶っぽくなったわよ?

どうだった?痛かった?」


「はい…でも…ビン様が優しくしてくれて…」


それから、コソコソと2人で話した。


「キャーッ!マジ?お義兄様ったら、

真面目そうな顔をしてるの手が早かった

のね?兄弟は似るのね〜。」


「ウンス様!声が大きいです!」


幼い頃から2人で育ってきたのだ。

そんな2人の笑顔を皆んなは、

目を細めて見ていた。


ウンスはそれから、毎日、願った。

「ヨンが無事でありますように!

ソンゲール帝国が衰退しますように!」


その日からソンゲール帝国は、

大雨と強風と雷が続いた。

そして、9月だと言うのに、その雨が

猛吹雪に変ったり、又大雨に変ったり

有り得ない現象に国は、2週間で

ボロボロになって行った。

雷で城も破壊された。

神殿に逃げていた皇帝イジャンと

イシャル皇子は、大神官にブルブルと

震えながら聞いた。


「いったいどうなっておるのだ?」


「これは…200年前の大神官様の予言が

当たったのかと思います。200年後、

この国は、窮地に陥り…滅びると…」

これは、大神官の大嘘だった。

しかし、その時、ゴゴゴーッという

音と共に地底奥底に国が沈んだのだった。



ヨン達騎士団は、予定より早くに

魔獣を討伐した。

黒の騎士団の精鋭50人程であっという間

だった。


副団長のソクチュが何処から聞いた

のか?ヨンに提案した。


「団長!我々精鋭部隊なら、

ソンゲールまでは、1週間で行けます!

団長の雷攻は、凄まじかったです!

潰しに行きましょう!皇后陛下が

狙われる等、有ってはなりません!」


「わかった!ナマンテ!兄上に伝言を

頼む!」


「はい!団長!」


それから、黒の騎士団は、

ソンゲールへ行き、ボロボロになって

いる現状を目の当たりした。

「ウンスか…凄いな」とポツリと呟き、

ダメ押しの雷攻で、国を沈めた。

そうだ!地底奥底に沈めたのだった。


討伐に行ってから、5日程で、

ナマンテが皇宮に戻って、大公殿下に

伝言を伝えた。


「全く!無茶をしおって!わかった

皇后陛下には、何とか言っておく!」


2週間経っても戻って来ない騎士団。

ウンスは、願った。


エルナも毎日、一緒に願ってくれた。


「姫?いいかな?」


「お義兄様!」

「ビン様!」


「すまない、執務に追われて、

伝えるのが遅くなった!

ヨンは、無事だよ。ただ、魔獣が

思ったより広範囲に出没しているらしく

もう少しかかるようだ!」


「そうですか。無事だと聞いて

安心しました…」ウンスは倒れてしまった。


その頃、ヨンは帰路を急ぎ、

ライズを走らせていた。






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ビン大公とエルナのお話は、また今度💗

コメ返遅れてます。

すみませんm(_ _)m