チュンソクは、言われた通りに

触れ書きを開京中に出した。


キチョルの私兵は、俄には信じられず

屋敷を訪れたりしたが、

禁軍兵が立っており、屋敷の扉は

開けられ、荷物を運び出していた。



おい!亡き骸はどうする?



ああ、どうせ国境は通れぬ!

山奥にでも埋めておけ!


キチョルが死んだとわかると、

散り散りになった。


イ・セクは、自分の師とも呼べる

イ・ジェヒョンを隠居させた。

新しい重臣は、信の置ける領主や、

禁軍と官軍からも選び、

チェ・ヨンを崇拝する貴族や

商人からも選んだ。

民の事を知らなければ、国を

良くする事はできない!と。



徳興君は、牢で急にぐるぐると

走りだしたり、怯えたり、感情が

不安定になったり、身体の痛みに

もがき苦しんでいた。

テンランが先か?飛虫の毒が先か?

どっちにしても、目前となっている

毒の恐怖と痛みに終始叫んでいた。


チョヌムジャとファスインは、

火傷の痛みで動けず、薬院で、

手当てを受けていたが、内攻は

使えなくなってしまった。

チョヌムジャは、耳の鼓膜も爆竹で

やられて、耳鳴りが止まなかった。



そして、チェ家の屋敷では、

穏やか日々が続いていた。

ヨンは、テハンと畑作りをしたり、

ウンスと散歩したり、ハングルや

計算も教わった。


ウンス?天界の父上と母上に

会いたいだろう?

今なら、いつでも行けるぞ?



うん…いつか…連れて行って!

今は、こっちの方がいいわ。


なにゆえだ?俺が罪を犯したからか?


そうじゃないわ。

天界に居る時は、本当に忙しくて、

こうやってのんびりする事もなくて、

何だかせわしなく動いていたの。

こっちに来てからは、逃げてばかりで

やっとのんびりできるようになったわ。

高麗という所をもっと知りたいの。

でもね、ひとつだけ、お願いがあるの。


何でも聞く!


海に行こう!

二人で釣りをしてみたいの。

私、釣りを教えて貰いたいの。



釣りは、大変だぞ?

忍耐力が試される!

じっと待ってられるか?


今ならできそうな気がするの。


そうか?


そんな時、チュンソクが来た。


テジャン!


久しいな?チュンソク!


なにゆえですか?生きていたなら、

教えてくれなかったのですか?

ウダルチは、懸命に探しました。

何処に居たのですか?


ああ、その事か?

確かに崖から落ちて行くウンスを

見つけて、飛び降りた!

死ぬなら一緒だとな。

だがな、ウンスは天人だ!

手を掴まえた時に、浮いたのだ。

チュホンと俺とウンスはそのまま、

鳥の様に空を飛んで、山奥へと

静かに降りた。それが、天人の持つ

力なのだ!


はい?


天人は、思わぬ事態で思わぬ力を

無意識に発する事があるらしい。


えっ?それと…夫婦になったと…


あのなぁ、チュンソク!

山奥の小屋に男と女が二人で

居たら、お前なら如何する?

それも、愛しい女人だ!


えっ?某なら…獲物を獲ってきます!


俺も獲って来たが、狭い小屋で

夜になったら、如何する?


某は…外で見張ります!


そうか!俺は、愛しい女人を

一人にできずに抱きしめて寝た!

ならば、男として我慢できるか?


で、できません!


お前にも妻子が居るであろう?

それが妻になる前だったら、

同じであろう?


は、はい。


ああ、それと、もう王を王宮に

戻しても良い頃だ!


は、はい!また、来ます!


チュンソクが帰るとウンスが

大笑いした。


ヨンも嘘をつけるのね?

でも、天人が空を飛べるなんて、

また、噂になるんじゃない?


仕方ないだろう?

説明のしようがない事だから、

あれが一番だと思うた。


でも…ウダルチが恋しくない?


全く恋しくないのだ。変か?

俺も働きすぎた。

適当に指示したりして、実際に

指揮をとっておったのは、

チュンソクだ!

まあ、戦だけは、長けておったが、

もう人を斬るのもうんざりだ。

大体、おかしいであろう?

妻は、人を治すのに、夫は、

人を斬るなんて。

それより、妻を愛でる方が、

何より幸せだ!


と、ウンスを抱き上げ、寝所へ

行った。



チュンソクは、頭を抱えていた。


空を飛んだ?まさか…そんな事が

有り得るのであろうか?

しかし、お二人は、怪我一つして

おらなかった。あの崖から落ちて、

例え、木の枝に引っ掛かり落ちたと

して、チュホンは?足を折ったで

あろう。お二人もかすり傷程度では、

済まなかったはず…

医仙は…宙を舞う事ができるのか?

取り敢えずマンボの店へ寄った。


あっ、ウダルチの?クッパ食うかい?



あっ…はい…



何しけた面をしてるんだ?

典医寺の皆んななら、さっき帰ったぞ?



えっ?



何だぁ?知らなかったのか?

典医寺も狙われていたから、

身の安全を確保する様、

ヨンに頼まれた!


そ、それは…やはり、天のお告げ

でしょうか?

テジャン達が助かったのも、

医仙のお力で空を飛んで、山奥に

降りたと今、聞いて参りました。


頭の硬そうなこの男には、

あの話を理解するには、難しく、

そう言う風になったと察したマンボ兄妹

実際、同じ顔を見なければ、自分達も

信じられなかったであろう。



あっ、ああ…天人は、生涯で
 
一度だけ、身の危険に晒され時に、

そう言う力が出るらしい。

だから、怪我もせずにぴんぴん

してただろう?

難しく考えるな!ヨンだって、内攻を

持っているんだ!

国境を潰したなんて、信じられない

だろ?


はい?テジャンがやったのですか?


全く!何年ウダルチに居るんだ!

医仙は、ヨンの比翼天温攻だ!

雷攻を高める!


ひ、ひ、ひよく、てん、おんこう?


忘れるな!医仙は、天界から来た

偉いお方だ!

お前達があのまま、王と王妃を連れて

王宮に戻ろうとしていたら、

間違いなく、ウダルチの半数は、

キチョルの私兵と笛男と火女に

殺されていた!

テマナが先回りして、あの二人を

退治したのは、医仙の策だ!

徳興君も今頃、テンランの毒と

飛虫の毒でもがき苦しんで、

長くないだろう。

彼奴が前に医仙に毒を盛ったのを

知ってるだろう?

あっ、お前達は、ヨンを罪人扱い

したんだったな。

今回は、先手を打った!

王宮でな、凝りもせず、医仙に

婚姻をせがんだ男に医仙は、

何と言ったと思う?


何と?


チェ家の嫁に庶子が愛人になりたい

って、言ってるのか?

庶子との子供を産めと言ってるの?

バカなの?

凄い女人だろ?

しかし、チェ家が本気になれば、

権力も財も王より上だ!


徳興君様に庶子と?


本当の事だろ?


チュンソクは、クッパをかき込むと

急いで玄高村へ向かったのだった。





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今日は、遅番でした。

しかも、ひな祭りと卒業式が重なり、

20時まで残業…疲れたぁ〜。

コメ返遅くなりますm(_ _)m

明日も遅番です。


天人は、空を飛べるのです😂