着いた先には、あの天門によく

似ていた。ずぶ濡れで、

ムガクシの衣も墨で真っ黒に

なっていたイムジャが倒れていた。


イムジャ!イムジャ!

息はしているが、目を覚まさない。


自分の外套で包み、チュホンに乗せ、

抱き抱えるように、下の方へと

降りて行く途中、あの大樹が

あった。


ウンスを隠すように、町並みへと

行った。


此処は?国境付近か?

気がつくと、イムジャの身体が熱い。

宿屋を探した。

町並みがきれいに感じた。


やっと見つけた宿屋は、

飯屋にもなっているのか?

小綺麗だった。




イムジャを抱き抱え、

中に入ると、賑わっていた。



えっ?

まさか?

いや、違うだろう?

若いけど、そっくりだ!


そんな言葉が聞こえた。




イムジャの顔が見えないように、

床に置いた。





女将ですか?


は、はい!そうです!



すまぬが部屋は空いておりますか?



はい!ありがとうございます。




これで、足りますか?


チェ・ヨンは、小銭を鷲掴みして、

渡した。



あの…チェ・ヨン将軍の弟さん?

ですか?


は?将軍?違います。

それより、この方を湯殿に入れて、

きれいにして貰えますか?


えっ?生きておられるのですか?


熱がある!



奥に湯殿があります。


イムジャを抱き上げて、


湯殿まで連れて行った。



こ、これは?墨ですか?



ああ。ところで俺達、天竺から

帰ったばかりで、今の政権は?


天竺?国境は通れないはずですが、

舟で?


えっ?あっ、まあ…



は、はい。それより旦那様。

湯に入れるのを手伝って下さい。

奥様の熱が高いです。

きれいにしたら、薬湯をお持ちします。


衣を脱がすと晒しを巻いていた。



あら?晒しも黒くなってます。

新しい衣…娘のですが、用意します。

旦那様は、晒しをといて下さい。


えっ?あっ、いや…。

寒そうだ。そのまま、湯に入れた。



女将は晒しをといて、きれいに

洗ったようだ。



イムジャの裸は、見られないヨンだった。


旦那様!着替えもさせました。

なんと美しい奥様なんでしょう。




部屋は、二階の突き当りをお使い下さい。



きれいになったウンスを抱きあげ、

二階の部屋に行き、寝台に寝かせた。



イムジャ…なんて事だ…髪は、女人の  

命だと聞いた事があります。


薬湯を持って来た女将。




金は足りますか?


先程貰った物で充分です。

薬湯が聞いたら、明日には目覚めると

思うので、何か用意しておきます。


食材の仕入れは?


市井で仕入れてますので、

案ずる事はないです。


旦那!表に居た馬は繋いでおきました。


すまない。


二人が居なくなった時に、

ヨンは、イムジャを見つけられた事に

安堵した。


薬湯を口移しで飲ませた。

湯冷めしないように、柔らかい

イムジャを抱きしめて眠った。


翌朝、目覚めた時、イムジャの

呼吸が楽そうになっていた。



チェ…ヨンさん?

此処は天国なの?


イムジャ!イムジャ!

思わず抱きしめてた。


私…崖から…落ちて…

死んだのね…

愛しい人が抱きしめてくれてるなんて…




イムジャ!愛してます!

叔母上に話を聞き直ぐに後を追いかけ、

イムジャが落ちて行った時に、

あの天門の光が現れました。

俺も迷わず、飛び込みました。

助かったのですが…



此処、天界じゃないわね?


はい…それが…まだよくわからないのです。

高麗である事は、確かだと思います。


もしかして、100年前?

でも…天門が開くのは、ひと月後よ?

どうして?


それが、俺にもわからないんです。

落ちて行くイムジャが光に

吸い込まれ、急いで、飛び込み…。

すいません。まさか徳興君が

イムジャに婚姻を申し込むとは

思ってもいませんでした。

それと、100年前ではないようです。

まだよくわからないので、

イムジャと俺は、暫く夫婦の振りを

して下さい。


馬鹿ね…崖から飛び降りて、

死んだらどうするのよ?


イムジャが居なくなるならと

死ぬ覚悟でした。


愛してるわ…


俺も愛してます。


二人は口づけた。




朝餉の支度ができてます。

奥様は、目覚めましたか?


あっ、はい!今、行きます。



それと、ヨンと呼んで下さい。


テジャンでもいい?


まあ、それでもいいです。しかし、

なるべくヨンと呼んで下さい。


うん…でも…どうして天門が彼処で

開いたの?



わかりません。



私の計算に間違いはなかったはずよ?



なので、毎日、此処の天門を見に

行きます。



うん…


くぅ~とお腹がなった。


まずは、飯を食いましょう。


二人は、朝餉を食べに降りた。




やっぱり似てるよ!旦那さん!


はい?誰に?


チェ・ヨン将軍ですよ。

奥さんも髪が赤いなんて、医仙様

みたいだ。医仙様は、見た事が

ないけど、それは美しい方だと

聞いてます。

チェ・ヨン将軍は、六年程、

国境に居たから、何度か見た事が

ありますが、ほんとに似てます。


あの…此処は高麗ですよね?


まあ、前はそうだったけど、

今は違いますよ?

天竺に行っていたとか?

住む所は?届けを出した方が

良いと思いますよ。

お腹が空いたでしょう?

まずは、食べて下さい。



はい…


テジャン?どういう事?


俺にもわからないんだ。


出された物を黙々と食べた。


食べ終わると、女将が薬湯を

持ってきた。


苦手な薬湯だが、ウンスは、

ゴクゴクと飲んだ。


あの、届けとは?何処で?


統括省に行くのがいいんだけど…


チェ・ヨン将軍の所に

行ってみたらどうですか?

似ているので、親戚かもしれませんし、

医仙様が双子をお産みになられたので

将軍は、上のお子様と、医仙様に

付きっきりで、医仙様が戻られて

から、屋敷からほとんど出ないと

聞いてます。

それと、このお金は受け取れません。


えっ?


今は使われてないのです。

高麗では使われてますが、

此処、高麗大国では、違うお金に

変わりました。


あの高麗の王は?


あの駄目な王の名前は…

お前、知ってるか?


何だっけ?元から来た三十一代目の王。

悪い王と王妃ですよ。

将軍が国を二つに分けたんです。


此処は高麗大国になりました。


ヨンとウンスは、顔を見合わせた

のだった。





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助かりました。

愛してると伝えました。

さあ、今迄にない所に飛ばされた二人です。

お話を読んだら、わかりますよね?