じゃあ、二日間は、一緒に過ごす

ようにして!

ムン・チフさんの使ってる客間は

広いから、衝立で仕切っておくわ。

ただし!手を出しちゃ駄目よ?



そ、そ、そんな事は致しませぬ!


ミルクと紙おむつを用意するので、

育児を手伝ってね。

女は、子供も産んで、育てるのが、

当たり前の用に思われてるけど、

その大変さを知る必要もあるわ。



二人っきり、いや子供もいるが

気まずい…。


ミル殿…その…ヤンジと言う奴とは、

幼馴染みだったとか?


ミルです!旦那様!

あの男とは、幼馴染みと言うか、

十二才頃から知っていました。

国境付近に居たので、

遊ぶ所は市井の外れから入る

山でした。

あの頃は五人程、同じ年の頃の

者がいました。

両親は、比較的、自由にして

くれていたので、よく山で

木の実を取ったり、隠れ家を

作ったりしてました。

家にも遊びに来た事がありましたが、

そう言えば、母に叱られているのを

見た事があります。

部屋を間違ったとか。

その時は、まだただの友達としか

思っていませんでした。

元が勢いを増して、本家が落ちぶれ、

うちも、段々と落ちぶれてしまいました。

それで、16才の時に輿入れの話が

出て、両親もその気でした。

もう一人の友達も西京の貴族の

後妻として、嫁ぐと聞き、

久しぶりに山に行ったら、

そのヒヨと仲の良かったカヌが
 
泣きながら、別れを惜しんでいて、

側にヤンジもいました。

その日でした。

元の者が暴れて、家を焼き払った

たり、罪もない者を斬り捨てました。


もう一人は?


殺されました。

騒ぎがおさまるまで、山で身を

潜め、その後、家に帰ると、

焼かれていました。両親も無惨な

姿でしたが、皆んなの手を借り、

埋めました。


惹かれ合っていたヒヨとカヌの所も

そうでした。

二人は、手を取り合って、

山道を通って、元に行きました。



ヤンジの家も賊に荒らされ、

両親は斬られ、息絶えていました。


あの頃は、ヤンジは殺された、

もう一人の友、ラリアに想いを寄せて

いるかと思ってました。


残された者同士、宿屋に住み込みで

下働きをしながら、過ごしてました。

ヤンジは、色々と気遣ってくれ、

そのうち、二人は支えあいながら、

其処で五年程働きましたが、

後は、転々として歩き…

男女の関係になったのは、親が

殺されてから、八年経った頃です。


は?八年?

その間、ヤンジは、誰か…


わかりませんが、よく出かけてました。


血気盛んな男が出かけるとは、

大体の予想はつきますが…


そうですね。私もまだ自分の気持ちが

良くわかりませんでした。


長年一緒にいて、なにゆえ?


仕事に真面目じゃなかったからです!

しかし、遠い所で漁師をやりながら、

二人で静かに暮らそう!と言われ、

そう言う仲になり、この村に

辿り着きました。

漁師として、真面目に働いて

いましたので、道具を買いに行くと

言っても、何の疑いもなかったです。

なかなか子宝に恵まれず、

やっと授かった時は、もっと

喜んでくれるかと思ってましたが、

まさか、他所に子がいるとは…

今となっては、怒りと情けなさしか

ありません!

此処に来てからは、別人の様に

働き、村の人の信用を得ました。が

少しずつ変わってきているのが、

何となくわかりました。

あの男は、みんなの注目を浴びる事が

望みだったのは、良くわかってます。

それに…夜の回数が減っていきました。

一ヶ月に一度とか、二ヶ月に一度とか…


はあ?しかし、八年も一緒に居て、

なにゆえ?


何度か…せまられましたが、

私には、兄妹のようにしか思えなくて、

それでも、この先の事を考えたら、

この人しかいないんだと思い、

段々とこの人と婚姻するんだ!と

思うようになりました。

此処に来て、なかなか子が授からず、

がっかりする私に、まあ、そのうち

授かるかもしれない!と他人事の

様に聞こえましたが、彼なりの

慰め方なのかとも思いました。


そのヤンジの両親は、何をしておった

のですか?


平民の父親は…行商の手伝いをしていて、

あっちこっちに行っていたようです。

母親は…良くない噂を耳にしました。


良くない噂?身を売って稼いでいたと 
 
言う事ですか?


はい…。


なる程、手本になるべき親…恐らく

父親も好き放題な事をやっていたの

でしょう。


父親が帰ってくると、必ず、喧嘩に

なっているという話も良く聞きました。

それで、母が亡くなる前に、

ヤンジとだけは距離を置きなさい!と

言われました。

腹違いの女の子を連れてきて、

面倒をみていたようですが、

母親が虐待していたとか。


その子は?


いつの間にか居なくなったと、

ヤンジが言ってました。


ミ、ミ、ミルは、ヤンジに暴力を

受けた事が?


一度あります。

西京へ行くと行った時

雨風が強く、止めたんです。

その時、うるさい!と、

突き飛ばされました。

西京から帰ってくると、

悪かったと謝り、いつも以上に

優しくなって…。


ヤンジがどういう男か、

わかりました。

もう遅いので、早く寝て下さい。


はい…。


寝る前にウンスに習った紙おむつを

つけ、眠った。


ミルは、疲れていたのか、

朝までグッスリ眠った。


えっ?子供達は?


起きたか?ミ、ミル!


はい。


疲れておるようだったから、

夜中におむつも替えて、ミルクも

やっておいた。俺を見て、笑ったんだぞ?


まあ!それは、私も見たかったです。

子供達は、旦那様の事が好きなのですね。


あっ!着物が濡れておるぞ?


ああ、お乳をあげなかったから、

漏れたのですね。


ふむ。女人の身体とは、誠に不思議だ。


子供達が泣き出したので、

お乳をあげた。


さすがに、其処は背を向けた。

もう一人を抱っこして、


待っておれ!母がもう少しでくれる。

みるくも良いが、母が恋しいであろう。


ルリが飲み終わると、ミリを渡し、

ムン・チフは、習った通りにルリを

トントンしてげっぷをさせた。


襖を少し開けて、見ていたヨンとウンス。


ねえ?本当の親子みたいじゃない?


言われてみれば、孫と言うより

親子に見えるな?師匠が気配に

気付かないほど、子供に夢中とは、

驚いた!


明日までに、もっと夫婦らしく

なってると思うわ。


そっと襖を閉めて、居間に行った。


少したってから、


師匠!飯だぞ!と叫んだヨン。


二人で居間にやってきた。


奥様!聞いて下さい!

昨日は一度も起きずに朝まで

グッスリ眠れたのです。

旦那様が、子供達のおしめを替えて、

みるくもやってくれたそうです。


い、いや、疲れておるようだったから…


そう!その調子よ!

男も子育てを手伝ってこそ、

本当の夫婦なのよ!


あっ、私も手伝いました。


私も…微力ながら。


テピョンとギアンが言う。


流石ね!合格よ!


プロポーズは?どうだった?


ぷろ?ぷろぽんず?


結婚する時、胸を打つ言葉を言った?


へっ?

はい?


あっ!一緒になるぞ!と言われました。


アイシャさんは?


この際、一緒に暮らすか?だったかと…


ブーッ!ダメダメじゃん!

女はね、婚姻の申し込みの時には、

花束を渡されたり、指輪を差出されて

感動的な言葉を言われるのが

天界では常識なのよ?


俺は言った!


言われてみたいです!


私も胸を打たれてみたいです!


テスとアイシャが目を輝かせて言う。


それでお二人は指輪を?

旦那様!なんと?


教えてやらぬ!自分で考えろ!

師匠もだ!


市井の彫金細工の店で指輪を

買ってくるがいい!

ヨンが男達にお金を渡した。


ウンスは指のサイズを糸で測って

輪っかにした。


それを持って、男達は走って行った。


旦那様!何だかワクワクします!


俺は自然と出たがな?


奥様?何と言われたのですか?


言われてないわ!


えっ?

はい?

そんな…


言っただろう?


愛してるって、言われたけど、

プロポーズは、されてないわ!

誰に言ったの?


い、いや、ウンスにしか言っておらぬ!


あの時は、自然とそうなって、

いつの間にか族譜に入って…

でも、感動的なプロポーズは、

受けてないわ!


泣きたい時は、俺の胸で泣いてくれと…

ずっと側にいるので…と言ったぞ?


でも、それって、プロポーズなの?

元カノには、婚姻しよう!と

言ったのでしょう?


グッ…そ、それは…。

自ら地雷を踏んだヨン。


旦那様もやり直しです!


こうして、男達全員やり直しが

決定したのだった。





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いつの間にか一緒に住むようになって

婚姻してましたが、プロポーズは?

オモイッキリ地雷を踏んだヨンです😂

ミルと師匠は、なかなか良い感じ?