ムン・チフがヨンの屋敷に滞在して

五日程経った頃、鳩が来た。

マンボ姐からだ。


キチョルが牢から出された。

国境が通れなくなる前に、

元の断事官と徳興君が王に謁見して

キチョルを出した。

天女を守れ!王妃を救った天の医術は

元にも知れ渡ったようだ。断事官が、

天女に会いたがってる!


元の断事官って、例の?ソン・ユ?


ああ、そのようだ。


天女は知ってるのか?


あっ、まあ、詳しく知ってるんです。

徳興君って、王の叔父で、毒使いで、

ずる賢い奴で、断事官の高祖父の日誌に

私の事と名前が書かれてるみたい。


はあ?そんな事を何処で?


恐らく奇皇后も知っての事であろう。


そうなの。ムン・チフさんも鋭いわね?


しかし、高祖父といえば、100年以上は、

前の事では?


話せば、長くなるけど、ウンスは、

100年前には、行っておらぬ!


どういう事だ?


それより師叔?海沿いの道から、

一気に王宮まで行くのに、行商を

止めてくれぬか?


あの広い道をか?


ああ。ちょっと必要なんだ。

ウンス?此処から、王宮まで

飛ばしてどれ位で着く?


う~~ん。王宮までの道のりは、

知らないけど、国境から王宮まで、

早馬でどれくらい?


そうだな…一日半といったところかな?


ここの早馬って、時速何キロ?


おおよそ、四~六十位かと。


100キロ位で飛ばせば、

一時間半位で着くんじゃない?


何の話だ?門を開けば、すぐだろ?


そうよ車ごと、王宮に行けば?


そうだな。


車って、なんだ?馬車か?


車か?驚くなよ?

家の屋敷の男達は、皆んな運転

できる!ギアン!近くまで、持ってきて

くれ!


はい!旦那様!


屋敷の隅に木で車庫まで作った男達。


ブロロローッ。


な、な、何だ?


この黒い塊は?


車です!この前、用があって、

天界まで行った時に、友人も

一緒に来て、置いて行ったんです。

テマン君なんて、車の中で寝るくらい、

気に入ってるんですよ?


く、くるま?


馬のない馬車?遥かに速い

乗り物です。

ヨン?ムン・チフさんに言って

なかったの?


あっ!師叔にも言ってなかった!

ウンスは、天界ではなく、

この地が650年程時を経た、

先の世から連れて来たんだ。

だから、この先、何が起こるか?

知っておる。


そう言えば、金髪の女人の言葉が

わかったとか?


あ~、リタの事?

天門は、世界中のあちこちにあって、

リタの国でも開いたみたい。

それで、此処に来てしまったの。

ヨンが役場に行ってる間に

計算したんだけど、今度、こちらの

あの天門が開くのは、三ヶ月後みたい。

次に開くのは67年後よ。



ウンス殿は、その天門を潜って、

帰るのですか?


いいえ。あの天門を潜ったら、

正直、何処に行くか?わからないの。

100年前に行くかも知れないわ。

私達は、別の門があるから、

いつでも、私の居た世界に行けます。


あっ、あの門か?


そうだ!俺とウンスが願えば、

好きな所へ行ける。


ま、待て!そのような事が可能なのか?

それに、100年前になにゆえ、ウンス殿

の事が?


その話は…頭の硬い師匠には、理解

できぬ!


は?
 
 
俺は鬼剣でウンスに酷い傷痕を

残してしまったが、今は無いだろ?

 
そう言えば…。


腕も動かぬ程だったんだ。

それを、三才の男の子が治した!


なんだってぇ!内攻持ちか?


まあ、その辺は、追々話すが、

俺とウンスは特別だと言う事だ!


比翼天温攻に関係してるのか?


そんな所だ。


ソン・ユは、難癖つけてくるはずだわ。

そして、私の処刑か?元との戦か?

を要求するはずよ!


処刑…?


師叔?国境が壊滅した事は?


まだ、都では、知らないようだ。


だったら、マンボ姐に鳩を飛ばして

元に行く道は断たれたと、

噂を流してくれ!


もう、面倒だから、先に元を

潰しちゃおう!

どうせ、明になるんだもの。


どうやって?潰す等、できないであろう?


ムン・チフさんも雷攻の持主?



は、はい。まあ。


ヨンはね、元くらい、簡単に

吹き飛ばす力があるの。

 
えっと…ウンス殿?夢では?


もぉ〜っ!説明が長くなるわ!


ヨン!行くわよ!


ああ。


おいらも!

厶、ムンさんも、

みれば、わかる!




ヨンとウンスは門を開いた。


こ、これは?


いいから、い、行くよ!


光りの中に入ると、あっという間に

皇宮の上の林に着いた。


高麗の王宮より立派なのね。

でも、悪巧みは、こういう所から

始まるのよ?既に白蓮教徒を集めて

いるかも知れないわ。


なんだってぇ!


紅巾の乱よ。本来なら十万で、

高麗に押し寄せ、王宮を落としたわ!

でも、もう高麗に入る道は閉ざされた

から、来るなら海から?それは、

無理があるし、ヨンなら楽勝よ!


ひえ〜っ!天女はすげぇな?

史実を変えたって事か?


もっと、大事な事も変えるつもりよ。


テマナ?ウンスを頼む!


イエー、テジャン。



師匠も師叔も下がっていてくれ!


ヨンは、気を集め、空を見上げた。

よし!

鬼剣を空に向けると、雨雲が

バチバチと音を立てた。

空に向けた鬼剣から青白い筋が

集まると、一気に振り下ろした。

閃光があちこちを破壊する。

そして、更に二度、同じ事を繰り返し

鬼剣を右左十字に斬ると、

軽功を使って、

ウンスを抱き、光りの渦に入った。

爆音が何度か聞こえたが、

直ぐに屋敷に着いた。



なっ、なっ、何をした?ヨン?


貧しい者達が住む場所だけ避けて、

後は、ふっ飛ばしました。


凄かったね?めっちゃカッコよかったよ!

チュッ


そうか?

では、気を貰わねば。


もぉ〜、ヨンのエッチ!

ねえ?比翼天温攻って、なに?


さあ?知らぬ!師叔が勝手に

言ってる事だから気にするな。

さあ、早く気を分けてくれ!


唖然とするムン・チフをよそに

二人は寝所に籠もった。



あれが、ヨンが天女に出会ってからの

力さ。


凄いな…俺は要らなかったな。


あんたが教えたんだろ?


ただ、ヨンは王宮よりも、

自由が良かったのかもしれない。

あんたは、臣下に拘ったが、

今のヨンは、天女さえいれば、

幸せなんだ。


そうか…赤月隊は、身を隠して、

知られるべきではなかったのだな。

今度の王は、あの王の弟か?


そうだ!

天女が現れて、何もかも変わったんだ。

忠誠だの王命等、ヨンには利かない

だろうな。


山奥に籠もっても、その事だけに

執着しておった。


天女に王命は通じないさ。


そうだな。お前は弟弟子だったが、

今では、俺よりも遥かに優れておる。


逃げたからだ!あんたは、全てを

ヨンに任せて逃げた。

その重圧は、まだ、二十歳そこそこの

ヨンにとっては、石の下駄を履き、

沢山の石を背負って生きてきたような

ものだ。


すまなかった。


ムン・チフは、愚かな選択をした事を

今更ながら、気付いたのだった。





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車は驚きますよね?


さて、12月に入り、忙しくなりました。

年末年始の年始のシフトを見て、

既に力尽きる私です。

大晦日、朝5時から仕事って?

元旦も夜7時まで仕事って?何だろ?

夢?だよね?

遅番です。行ってきまーす💨