お帰りなさいませ旦那様!


お客様ですか?


ああ…まあ…


奥様!奥様!旦那様が戻りました!


居間に通されたマンボ兄とムン・チフ。



マタニティドレスを来た

美しい女人にムン・チフは驚いた。


いらっしゃい!マンボさん!

それから、ムン・チフさんかしら?

顔が怖いわよ?


鋭いのはヨンだけではない。


寂しくなかったか?

とお腹を撫でるヨン。


超寂しかった!ずっと一緒に居るって

言ったくせに、村長が余計な役目を

押し付けてくれちゃって!

チュッとする二人に又々、

ムン・チフは驚いた。



それで?不出来な弟子の尻ぬぐいも

できないムン・チフさんが、

何のご用かしら?


申し訳ございません!

しゃがれた声で言い、土下座した。


メヒとベンを私の家に留め置く

べきでした。


そこじゃないわ!

赤月隊って、ただ技や内攻を

教えるだけの部隊だったんですか?


えっ?

正座したままのムン・チフ。

以外な返しにまたも驚く。



人として、やってはいけない事の

区別は教えなかったのですか?


そ、それは…厳しい鍛錬を積めば、

身に付くと思ってましたが、

メヒに群がる男達を見て、

間違いだと気付きました。


それを正そうとしなかったのですか?


いつか気が付くと…。

しかし、ヨンと婚姻の約束をしたのは

思いもよりませんでした。


それで、お詫びで刺されたの?

あの人は、言ったわ!

妾にしてくれないか?と。


は?妾に?


贅沢したいんですって。

だったら、助けず、忠恵王の妾に

なった方が、ずっと贅沢できたはずよ?


ウンスの言う事が最も過ぎて、

シュンとなるムン・チフ。



七年前に助かったのに、貴方は、

ヨンに全て丸投げしたのよ?

例えるなら私が、

まだ未熟な医師に手術を

任せた!と言う重大な過ちよ!



天女の言う事は、もっともだな…

刺され損じゃねぇか?


此処で、妾にしてくれと、言った

のですか?


(まずい…墓穴を掘ったか?何故だ?

ウンス殿の先が読めぬ)

正座したまま固まるムン・チフ。


そうよ?ベンって人がいるのに、

ヨンに言ったのよ?私の目の前で。

それって、人としてどうなの?


……


(メヒ…何という事を仕出かしたのだ。 

ウンス殿は、何も動ぜずに凜としていて、

赤月隊に欲しかった…)



俺は、婚儀ひと月前まで何も知らずに

いた。なにゆえ、教えてくれなかった

のでしょうか?

師匠は、ずっと知っていたのに…


ヨンは、女性に対しては、疎い男なの。

あの時、私が斬られなければ、

今頃は、婚儀をあげて、他の男の子を

自分の子だと思い込んでいたわ。

幸せになったかも知れないわ。

でも、それは、偽りの幸せでしょ?

ヨンも愚かだけど、師匠である貴方は

もっと愚かだわ!

皆んなは、貴方は絶対だと思って、

赤月隊に入ったのよ?

苦しい鍛錬にも耐え抜く事もできたのよ?

ただ貴方は、育て方を間違ったのよ。

その左腕も、大方、部下を庇って、

失くしたのでしょ?

その庇った隊員は?


元に行きました。


それで、親元派になったの?



(見ておったのか?しかし、愚かだと

言われたのは、初めてだ!そして、

ヨンも愚かだと言うウンス殿は何者だ?)


……


ウンス?ウンスは何故、そこまで

わかるんだ?


大体の察しはつくわ。この時代だもの。

逃げるなら元でしょ?

それに、私、副専攻は心理学だったの。

(しんりがくとは…何なのだ?

き、聞けない。かなりの怒りだ)



私は、部下を持つ教授でした。

部下が過ちをおかしたのなら、

教授の責任になります。

その過ちをおかさないように、

教え、駄目な事は駄目だ!と教え、

命を託される怖さも教え、

できなかった事ができたら、手を

たたいて一緒に喜びました。

ただ…私が心を凍らせてしまったのが

申し訳なく思います。



そ、それは?


両親が目の前で殺されました。

死にたくて、ヨンに斬られました。

貴方は、メヒさんの行いを知って

いながら、何故?メヒさんを庇った

のですか?負い目があるのでは?


そ、それは…


ああ、俺は同じ言葉しか言っておらぬ。



まさか?メヒと情を交わしたのか?


マンボ!とんでもない事を言うな!


いや…メヒは知らぬが、誤って、

メヒの両親を殺めてしもうた。


は?敵を間違えたのか?


任務で行った屋敷にいた使用人を

巻き添えにしてしもうた。

後から、メヒの両親だったと知った。

だから面倒をみた。


それで、申し訳なくて、ヨンを犠牲に

してまで守りたかったのね。


待て!ヨンは、知り合いの大事な

息子だと言ってなかったか?


今思えば、メヒを甘やかししすぎた。


そうね。両親が殺されても、

真っ直ぐに生きてるテマン君を

私は、尊敬してるわ!

他にもありそうだけど、私的な事は

聞かないわ。

ヨンはね…貴方の事を慕っていて、

メヒさんが来る前に、私を

貴方の所へ連れて行って会わせようと

したの。あんな事があったのに。


申し訳ありません。これから、

メヒを探して、言い聞かせます。


無理よ!

国境は、ヨンが破壊したし、山道も

通れないわ!


破壊?


ああ、ヨンは、凄い力を付けた。

あの雷攻の巻き添えを食ったかも

しれない!


なにゆえ?そのような力を?


天女は…ヨンの比翼天温攻だ!


なに?!やはり、本当に居たのか…

そうか…良かった…


ムン・チフさん?

最近、身体に異変はない?



あっ、右下腹が、たまに痛む

だけです。


ウンスはオデコを触った。

熱があるわ!

ちょっと、此処に寝てくれますか?


此処は?痛い?


いいえ。


此処は?


うっ。


盲腸ね。ギアンさん?離れに行って、

トギに麻酔の道具を持って来てと

伝えてくれる?


はい!奥様!


盲腸とは?


膿が溜まっているの。

放っておくと、命取りになるわ。

ヨン?手伝ってくれる?


ああ。しかし、ウンス?身体は?


大丈夫よ。盲腸なら、すぐ終わるわ。


天女に任せておけば、大丈夫さ!



それは?


お腹を切って、盲腸を切除します!


は?あの…このままでは、駄目なの

ですか?

(俺は死ぬのか?)


駄目だから、手術します!

凛とした医者の顔になった。


しかし、天女は凄いな?

俺は全くわからなかった。


何千という患者を診てきたんだもの。



トギが駆け付けて、盲腸の手術をした。


ムン・チフは、暫くヨンの屋敷に

居る事になった。




翌日、ヨンとウンスが客間に行った。



どうですか?痛みは?


はい。昨日の痛み止めが効いた

ようです。

しかし…なにゆえ?助けてくれたの

ですか?憎くないのですか?


私は、医者です!目の前に患者が

居たなら、助けます!

それが例え敵であろうと、助けるという

誓いを立てた医者です!

それに、ヨンの恩人です。

言いたい事は言ったし、今は

私の患者さんです。

おならが出たら、食べていいです。


なにゆえ?屁がでたら?


腸が正常に働いている証です。

一週間後に抜糸します。

ニコっと微笑んだ顔が美しかった。


消毒し終わると、ウンスは、

部屋を出た。



ヨンア…良き女房をもらったな?


俺には過ぎた妻です!

もしも、あの時、出会わなければ、

メヒを娶っていたら、師匠をもっと

恨んでいたでしょう。

ウンスが言った通り、何も気づかなかった

愚かな男です。


すまぬ…。

あのマンボが血相を変えて怒鳴り

込んで来た。
 
マンボは、全て知っておった。

俺が生温かったのだ。


師匠は、他にも何かあるのでは?


長年…恋い慕っておった女人がいた。

メヒがお前と婚儀を挙げると聞いて、

少し近付けると思うた。


叔母上ですか?


ああ、お前が赤月隊に入って、

心配したのだろう。何度か文のやり取り

をしたり、会ってお前の様子を話したり

しておった。


ならば、ただ恋い慕っておる!と

言えば良かったじゃないですか?

俺は…

武士の約束は命懸けだと師匠に

教えられました。七年間、会う時も

ない位、忙しかった。だけど、

婚儀はしなければと…。

そんな時、ウンスと出会いました。

メヒとは全く違う感情を隠す事が

できませんでした。

メヒは…妹のような存在だと気付き

ました。

ウンスは、聡明で間違った事は、

許しません!俺が強くなれたのは、

ウンスのおかげです!


お前には、早くに話すべきだった。

しかし、既に手遅れだと思った。


師匠が止めたじゃないですか?

七年あれば、その機会は、作れましたが

何故か?父上が夢に出て来て、

まだ、見つからぬか?と。止めたのです。

どういう事なのか?わからず、

考えてましたが、ウンスだったのです!


そうか…元直殿が…

俺も言われた。ヨンは、女人とは、

接する事がなかったから、

惑わされる事があっても、正してくれと。

忘れておったとは、俺も落ちぶれたな。


ウンスは笑顔の裏に何でも隠して

しまう。メヒの事で、かなりの

憂いを持たせてしまって、

自分を第二夫人にしてくれ!とまで

言わせてしまった。


なっ…。すまぬ…


俺はもうすぐ双子の父親に

なります!ウンスと子供達を守り、

のんびり暮らしたいと決めました!

ウンスに憂いを持たす者が居れば、

それが師匠であれ、メヒであれ、

容赦なく斬り捨てます!



その目だ!

お前とメヒが恋仲になった時、

お前は、浮ついておった!

今は、全く違う!

大人になったのだな。


ウンスと出会って変わりました。


本当に俺があともう少し若ければ、

嫁に欲しかったな。

お前を叱るなんて、凄い女人だ!


やりませんよ!絶対に!


何千と人を斬ってきた俺達とは、

違って、何千と人の命を救ってきた!

そんなウンス殿は、神々しささえ

感じた。

しかし、天界とは、本当にあるのか?


今にわかりますよ?此処に居たら、

珍しい物ばかり目にすると思います。


ヨン…もしもだ…また彼奴等が来たら、

迷わず斬れ!


そのつもりです!

迷い等、ありませぬ!

それと…まだ叔母上に惚れてますか?


いや、俺も熱に浮かされたようだ。

向こうに行った時、元直殿に叱られる!


師匠は、マンボ姐のように

叱ってくれる女人が良かったと…


マンボか…あれは、怖いぞ?


そう思える女人が丁度良いかと

思います。


ククッ。笑わせるな。傷に響く。


少しずつ歩くようにと、ウンスが

申してました。


昨日、腹を斬ったばかりだぞ?


厠も歩いて行くようにと。

その方が治りが早いそうです。


そうか。天女の言う事は、

聞かねばならぬな?

して、いつ産まれるのだ?


あと、三月ちょっとです。

よう動く元気な子です。

見た事がない優しい笑みを見せるヨン。


そうか。お前が父親になるのか…

ムン・チフの顔が穏やかになった。





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いや、惚れたでしょ?

完敗だし。

暫く留め置くのに盲腸にしてしまった

私です。