あのね…

あのね…


ん?何か?



トイ…あっ…厠へ行きたいの。


何だ、厠か?

恥ずる事はありません!


終わった点滴の針を抜き、

キャリーバッグのウンスが

持って来てくれた医療道具から、

消毒綿を出して、押さえテープで

止めた。


何度見ても、不思議だな?

そんな小さい針から身体を治す物が

どうやって入るのか?


不思議でしょ?

ヨン?同じ様に腕を見せて?


袖を捲り、腕を差し出した。


はぁーっ、いい血管してるわ!

惚れ惚れしちゃう。

職業病だ。


は?


腕をじっと見つめ頬など染める

我が妻に胸が跳ねた。


んっ!ほら?厠だろ?


と抱き上げて連れて行く。



離れててね!


なにゆえ?


だって、音とか…


あっ!


今、想像したでしょ?


い、いや…しかし、離れていては、

守れませぬ!


べ、別に用を足すのに、

守らなくていいわよ!


俺に守るなと?


違うわよ!恥ずかしいでしょ?


イムジャは前に俺に言いました!

屁が出たら、食べて良いと!

そのような事を女人に言われたのは

初めてでした。

したくもないのに勝手に出ました。

恥ずかしい事ですか?



ウ、ウダルチって体育会系の

男子の集まりでしょ?

男同士では、気にしないだろうけど、


私は理系女子なの!



は?言ってる意味が全くわからぬが?



体を使う男と頭を使う女の違いよ!



俺も頭を使ってます!



わ、わかったわよ!

だったら、お湯を沸かしてくれる?

お湯に浸かりたいし、髪も洗いたいの。


わかりましたが、

厠から出たら、俺の名を

呼んで下さい!


うん、わかったわ。


用をたして、出ると目の前に居た!


キャッ!聞いてたの?


いえ、湯を沸かす準備をして、

直ぐに戻っただけです!

イムジャは何をしても、俺の胸が

跳ねてしまう。


聞いてたんだぁー!


いや、それよりも、

ご両親への手紙を書かないと…



あっ、そうよね…


後悔してますか?


してないわ!あのままだったら、

私、明日には死んでたわ…

それに…もうヨンの妻なんでしょ?

逃げてばかりの高麗を楽しく

してくれるんでしょ?


それは、勿論です!

もう逃げる必要はないのです!

しかし、ご両親には、詫びなければ

なりません。

俺が手放せないと…。

一生幸せにすると…。


ありがとう。


部屋に戻ると二人でそれぞれ

手紙を書いた。


夕餉の時間になり、

ヨンは、魚を焼き、汁物も作り、

山菜を入れたお粥も作ってくれた。


その様子を嬉しそうに見ている、

ウンス。


ほんとに何でもできるのね?


戦に行けば、やらねばなりません。

しかし、こんなに豪華ではなく、

干し飯に一品くらいです。


どおして?一番体力を使う武人に

そんな質素なご飯なの?

それじゃあ、痩せ細って、本来の

力を発揮できないでしょう?


それが普通だと思っておったが、

言われてみれば、イムジャの

言う通りかもしれません。


差別だわ!王宮では、王も重臣達も、

のうのうと我関せずで、

美味しい物を食べてるんでしょ?

国を護る武人が一番質素なんて

見直すべきだわ!


まあ、そうだろうな。

だが、俺はもう、王宮はウンザリだ。

さあ、食べよう!


魚の骨をはずして、ウンスに

食べさせる。


美味しいと目を輝かせながら

食べる愛しい妻。


洗い物は、私がするからね?


駄目です!ウンスの綺麗な手が

荒れたら大変だ!


私ね、親が忙しかったから、

医大に入る前は、ご飯支度も

洗い物もしていたのよ?


いえ、ウンスは何もしなくていいです。

まずは、しっかりと食べて寝て、

身体を戻します!


ええーっ!もう大丈夫よ!

ほら?赤みもひいてきたでしょう?


あっ!お風呂!忘れてた!


ウンスが言うお風呂とは

湯殿の事だとわかった。


あのウンスさんがね、髪を洗う

シャンプーとリンスと身体を洗う

ボディソープも下着も持ってきて

くれたの。気持ちいいわよ?



一緒に入る?



は?


冗談よ。


しかし、ヨンは本気にしたのだった。



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いや、長くなって、

今回はアメ限になりませんでした。

次回こそ…