やっと立ち上がった王は、

禁軍の方を向いた。



アン・ジェ護軍…崔瑩を探してくれぬか?


王様!以前申したのを覚えておりますか?


な、なんであろう?


ソン・ユが医仙様の処刑を盾に

した時です。

あの時、両界と安州は、チェ・ヨン

護軍の指揮ならば、皆従うと

言ったはずです。申しておりません

でしたが、某とヨンは幼馴染みです。

アイツは、二才の時から読み書きでき、

神童と呼ばれた男です。

イ・ジェヒョン殿は、ヨンの父上を

知っておられるでしょう?

代々文官の家系でしたが、

16の時に父親を亡くし、

アイツは孤独でした。

それを救ったのが赤月隊隊長の

ムン・チフ殿でした。

元々、剣術の才もありましたが、

内攻を得るのに血反吐が出る思いを

したそうです。

ムン・チフ殿を親のように思って

いたのに、宴の場で、王様の兄、

忠恵王に虫けらのように

殺されたのです。まるで宴の余興の

ように…。

某から見れば、王様も同じ様に

見えるのです。

国境までくる間に、誰一人、

この国の王と気付く者は、

いませんでした。

即位されて五年です!

何をなさっていたのでしょうか?

王様は王妃様が居なくなったら、

直ぐに他の妃を迎えるでしょう。

しかし、ヨンは違います!

四年も待って居るのです!

王様は、四年も待てますか?

某にも無理です。

挙句の果てに病になるとは、

俺の友を何だと思っておるのですか?



い、いや…余も友と思うて…


ふざけるな!何が友だ!

友ならば、四年間も戦に行かせた

ままにしておくのか?

戦というものは、仲間も亡くす。

その痛みも知らぬのか?

玄高村で王を守って散った

24名の命をヨンが今でも、

花をたむけていているのも

知らぬのか?

ガロンが言ったように、

美味い物を食って、我関せずで、

王妃の言いなりとは、見下げた

ものだ!病にしたのなら、

責任を取れ!

元から来る時に、斬られた王妃を

助けたのは医仙様だ!

拐われて見つけ出したのはヨンだ!

国を売ろうとした王の心を救ったのも

医仙様だ!忘れるな!



我々は帰ります。

この先、どうするかは、

チェ家へ降嫁すると言った

魏王の娘と話合って下さい!



王と重臣達は、重い重い足で

馬を引いて

禁軍の後ろをトボトボと付いて行った。


どうしたら…良いのだ?


王様…取り敢えず王宮へ帰りましょう。

今更、元に帰っても、殺される

だけです。元と戦ったのですから…


そうです!王様!

王妃様と話し合って下さい!

最近の王妃様の言動は、行き過ぎです。


そうしたのは、其方達が、

世継ぎ世継ぎと騒ぎ立てた

からではないか?


それは…あれ以来子宝に恵まれず、

王様が腫れ物に触るように

王妃様を大事にされていたのに、

子宝ができぬのは、王妃様に問題が

あるのかと…。


王様!この際養子を取ると言う手も

あります。


しかし、それなりの身分でなければ

ならぬ。その様な家柄で子を

手放す訳がなかろう。


イ・ジェヒョン殿のご息女が

養子を迎え、その子を王様の養子に

すると言うのは?


は?勝手な事を申すな!

末娘は、まだ嫁に行っておらぬ!


もう良い年では?


何度もチェ家に縁談を申し込んだが

見事に断られておる!


しかし、妙な噂を聞きました。

テホグンは、婚姻したと。

余生を嫁と過ごしておると聞きました。

本貫である鉄原の名家のご息女を

嫁に迎えたとか?


誰に聞いたのじゃ?


チェ尚宮殿が王妃様に話してるのを

女官が聞いたらしく…。


病になり、天界へ帰った医仙を

待つのを止めたのか?

しかし、何処に居るのじゃ?


それが…誰にもわからぬそうです。


テホグンの事は、そっとしておいて

やらねばならぬ!

憶測でそのような噂は、広めては

ならぬ!


は、はい…。


舌の根も乾かぬうちに

其方等は、戦より世継ぎなのか?



申し訳ございません。


乗りなれない馬でお尻の皮が

剥けた王達は、馬にやっと乗り、

禁軍の遥か後方を付いて行った。




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そりゃ、アンジェもキレるわ!

また長い道のりを帰って、

どうするの?