久々に綺麗な空✨
それから、ウンスは勉強もして、
ケープも仕上げた。
臨月に入っていたが、
体力をつける為と気分転換に
朝と夕方の庭の散歩はかかさなかった。
立ち止まっては、歩きの繰り返しだが
広い敷地内をゆっくりと歩いた。
歩くより、食べた方が体力が
つくだろ？
だって、悔しいけどあまり
食べれないんだもの。産んだら、
おうどん五杯は食べたいよ！
クスッウンスならすぐ戻るさ！
使用人達や工事に入ってる者も
二人のそんな姿を見るのも
楽しみになっていた。
夕飯が終わるとヨンが父親に
話した。
父さん？ウンスは昔、胸部外科の
凄腕だったんだけど…それは
ウンスが高麗へ行く前の話なんだ。
しかも、2012年にウンスを高麗へ
連れて行った時は33才だったんだ。
今、この国は2004年でウンスが
16才と言う事は、高麗の記憶を
持って、別の世界に生まれ変わった
と言う事なんだ。
それ以前の記憶があるなんて…
高麗でもウンスは色々な手術をした！
でも、連れて行かれる前の
手術を全て覚えてるって言うんだ。
心臓の血管とかも、今でもできそうだ
って…どう思う？
あら？パラレルワールドね？
聞いた事があるわ！
平行線で別の世界があるんでしょ？
パラレルワールドか…時空の歪みが
生じたと言う事だな？
それは、あり得る話だ。
小さな子供が突然ショパンの
曲を弾いた事もないピアノで
弾きだしたと聞いた事がある。
世の中には説明のつかない事が
起こりうる！
実際、お前の仲間だってそうだろ？
全員が高麗の記憶を持って、
この時代に生まれ変わった！
もし同じ世界なら違うウンスちゃん
が実在するはずだが、
胸部外科の優れた医者に
ウンスちゃんの名前はない！
それが…手術の記憶だけなんです。
それだけ手術に夢中だったと
言う事ではないかい？
記憶は鮮明だったり、曖昧だったり
色々だが、その記憶を持って
生まれ変わる事自体が珍しい事
だと思う。
此処には珍しい者達が
集まってるようだ！
明日は検診だったね？
心臓のすぐ側にある動脈瘤の手術が
あると聞いたが、
立ち会ってみるかい？VIP患者だ！
でも、父さん？ウンスはまだ
医師免許も持っていないぞ？
立ち会うだけなら、問題ない！
それだけじゃ済まない様な
気がするけど？
そうなった時は、私が何とかする！
翌日、検診前に手術室に行った。
綺麗に消毒して、術着に
着替えるとウンスの顔付きが
変わった！
中に入ると、胸は既に開かれて
いたが、最高のスタッフも
困り顔だった！
この大きさだと、血管も動脈瘤も
傷つけて、大出血を起こす！
上からみていたウォンジクに
助けの目線を送る！
ウンスちゃん？見てごらん？
どう思う？
えっ？この子が？
ウンスは大きなお腹なので、
ヨンに支えて貰い、状態をみる！
早くしないと直ぐに動脈瘤が
破裂します！
20分！人工心肺装置に繋いで、
その間に処置するのが
最善だと思います。
20分？馬鹿な…そんなに早く
できる訳がない！
それ以上かかると、死んじゃいます。
この方は大統領の側近であり
秘書室長だ！
死なせる訳にはいかないんだ！
と執刀医の教授が言う。
では、君がやりたまえ！
理事長！無理です！力を貸して
下さい！ガタガタと手が震えメスを
落とした。
20分か…厳しいな！
ウンスちゃん？できるかね？
これくらいなら簡単です！
えっ？しかし…医師免許もない
者が…罪になります！
失礼ですが、まだ未成年と
聞いてます。
では、テーブルデスで君が記者会見だ！
それは…大変な事になります。
医師免許がなくなります。
では、その医師免許を貸してやれ！
はあ？
お父さん！時間がないです！
始めてくれ！
人工心肺装置に20分繋いで下さい！
えっ？20分でいいんですか？
はい。
ウンスは鮮やかな手付きで、
血管に張り付いた動脈瘤を取り除き
出血した血管を次々と手早く
綺麗に縫い合わせていく！
此処は薄いわ！
ステントを下さい！
ステントを入れて縫い合わせる！
わずか18分で終った！
後はお任せします。と言うと
丁寧にお辞儀した。
これは、教授の手柄にしてやる！
とヨンが言う。
検診に行くぞ！と手術室を出て、
綺麗に手を洗い、着替えて、
検診に行った。
おい？あのお嫁さんは、何者だ？
見たか？あの早業！
いいか！この手術は教授が
怖くてできないのをアドバイスした！
それだけだ！死なせたら
全員困っただろ？
は、はい！わかりました。
ウォンジクは、大統領を呼び出した。
そして、映像を見せた！
わずか18分だ！この手術をできるのは
この国にはいませんよ？
それで、大統領に恩を返して貰います！
この医師は何者だ？
うちの嫁です！まだ16才で来月
大学受験ですが、特例を設けて
頂きたい！あの秘書が有能なのは
知っていますよ。居ないと
困ったのでは？
16？凄すぎる！
私にも出来ませんでしたね。
それで、今すぐ医師免許取得の
国家試験をやってもらいたい！
其れ位できるでしょ？
わ、わかった！直ぐに医師会に
連絡して用意する！法は特例を
付け加える！
検診を受けてたウンス。
チェ先生？既に半分は開いてます。
陣痛は？
いえ、ただ、腹が張るとだけです。
陣痛も始まります！
直ぐに入院して下さい！
ウンス？そう言う事だ！
あっ、うん！なんか緊張してきた！
特別室へと運ばれた。
ヨンはキエと叔母に電話した！
すると、ドヤドヤと人が入って来た！
父さん？何だ？
今から、ここで国家試験を行う。
監督官もいる正式な試験だ！
大統領が特例法として
つけ加えた！
いや、ウンスもそろそろ
陣痛がくるかもしれない！
ウンスちゃん？できるかい？
はい！お父さん！
机も用意され衝立で囲った。
椅子はウンスに合わせた物を用意した。
試験問題をサクサクと解いていく。
2時間もかからず、面談と試験も
やり終え、簡単な論文も書いた。
その場で採点もされた。
本当に16才ですか？
そうですが？
ヨンが答える。
ほとんど満点に近かった。
合格です！直ぐに医師免許を
用意します！
ええっ！ウンスさん？何を
やったの？シネが驚いた！
えっと、此処に来る前に心臓の
手術をちょっとだけ…。
大統領に恩を返してもらった！
流石父さん！やる事が速いな？
えっ？じゃあ、国家試験は
通ったって事か？
ああ！ウンスちゃんは、受験前に
医師免許を取った！
あの手術をできるのは、この国に
いないから、大統領も納得した！
医師会も動かして、今すぐ
試験をしてもらった！
その結果だよ！
私も驚いた！あんな手術を18分で
やりのける等、私にもできない！
あの秘書は大統領の影武者と
言っていいほど有能だ！
テーブルデスで困るのは大統領だ！
実際、命を落としただろう！
動脈瘤があれほど大きく、
血管にくっついていたとは、
誰も予想していなかった！
うちの嫁は凄いぞ！
ヨン？うかうかしてたら、抜かれるぞ？
マジか？そんなの有りか？
誰もできない事をやって、
命を救ったんだ！しかも大統領には
欠かせない人物だ！
脅したのか？
いや、助けた恩を今すぐ返せと
言っただけだ！
あの患者が大統領に進言してる
影武者的存在だったからな。
大統領が会見を行うそうだ！
あの臆病者の教授とな。
シネ先生？子宮口は？
はい！半分以上開いてます！
そろそろ始まるか…
ウンスちゃん！泣いても喚いても
いいからね！母さんは凄かったからな…
私が何？
キエと叔母が着いた。
い、いや、何でもない！
母さんがお産の時、凄かったって？
こらっ！ヨン！
ああ、叫んだ事？
何ていったのさ？
私は覚えている！
コラーッ！ウォンジクーっ！
初めての時より痛いわよーっ！
でしたね？お義姉さん？
そうだったかしら？
私が覚えてるのは、
ウォンジクーっ！早く出さないと離婚よ！
だったと思うわ。
プッと、吹き出すヨンとウンス！
色々叫んだんだな？
そうよ！陣痛の痛みは想像以上だったわ！
あっ！ごめんなさいね。ウンスちゃん。
これから産むのに怖い思いを
させたかしら？
いえ、お母さん！面白くて…クスクス
先生？もしも、困難になったら、
迷わずお腹を切って下さい！
ウ、ウンスの綺麗な身体に
傷がつくのか？
子供達を産んだ証だよ？傷なんて
どうって事ないよ？
そうね。それは最終手段に
しましょ？これでも腕はいいのよ？
無事に産ませてあげますよ！
夜になっても産まれる気配が
ないので、母と叔母は、
一旦帰る事にした。
父親はその頃、会見に同席していた！
教授が映像を見せながら、
説明した！
アン・ジンは私の大事な側近だ！
まさかこのように命を落としかねない
手術を成功させるとは、
開京病院に敬意を払いたい！
法改正については、議員と話し
合って決めた事。この手術を
できたのは、一人だけと聞いたからだ。
はい…私共最高のスタッフを
持ってもやり遂げなかった事です。
力なく教授が言う。
この女性は？
の質問に、ウォンジクは、
うちの嫁です！まだ16才ですが、
私にも無理だったでしょう！
えっ？
はっ？
なんと？
だから法改正をしたと言っただろ？
このように才能があるのだ！
あの…理事長？息子さんのお嫁さんは
まだ16才なんですか？是非、会見で
お伺いしたいのですが？
無理だな！今、嫁は、出産で、
入院している！
えっ？
なんと？
その若さでこの手術は？違法では？
既に法改正により、医師免許の取得は
しておる！
はい！ほぼ満点で合格してます。
医師会会長が言う。
留学してたのですか？
知らないのか？先日の裁判を？
嫁は幼き頃より天賦の才により
わずか18分でこの動脈瘤を切除し
血管も繋いだ！この凄腕を
超える者がいたら、連れて来い！
このように才能がある者は、
学歴問わずに医師免許を取らせる！
以上だ！と大統領が締めくくった。
テレビを観てたヨンとウンス。
ねえ？お父さん、テレビ映り
いいよね？
そこか？
ウンスは騒がれるぞ？
あーっ！もう！男共が寄ってくる！
まずは大学に合格しなきゃ！
もう、大学は行かなくても
いいんじゃないか？
駄目よ！お父さんとお母さんが
大学はちゃんと行きなさいって
言ってたもの。
はあーっ！そうか…
今日は疲れただろ？
もう、寝よう！
そうだね。
明け方…
うう…イタタと言う声で
ヨンは、はっ！と目覚めた。
ウンス？痛いのか？
うん…少し張りが強いかも…
ヨン？トイレに行きたい。
あっ、ああ！抱いて行くか？
お願い…
トイレに連れて行き
出てくると…
ヨン…シネ先生を呼んで…
破水したみたい！
えっ？マジか？わかった！
走って行こうとするヨン！
ナースコールでいいよ？
あっ、ああ！そうだった！
ナースコールを押すと
シネ先生は？は、破水がウンスです！
すぐ行きます！
ヨンでも慌てるのね？
破水がウンスって…うう…いたっ
ウンスのお産が始まった。
ーーーーーーーーー
いよいよです。